0011 デラックス盤の黄金期到来か?(2015.06.13.

最近はローリング・ストーンズ関連のリリースが活発でなかなか楽しんでいる。「From The Vault」という映像シリーズは、アナログ・レコード付きでもリリースしてくれたので、最近はアナログ盤しか買わない自分のような人間でも聴くことができるのである。リージョン1の原則的には観ることができないDVDがついてくるが、こちらが本体、アナログ盤はオマケと考えるべき商品である。それでも重量盤で溝も余裕があるプレスであり、高音質で楽しめるから有り難い。

 

ここしばらくで、最も有り難いリリースは「スティッキー・フィンガーズ」のデラックス盤である。アナログ盤も2枚組でレア音源満載になっている。特筆すべきは、「ブラウン・シュガー」のウィズ・エリック・クラプトン・ヴァージョンである。昔から存在は知られていた完成度の高いテイクだが、自分などはこちらが最終的に発売されていたとしてもおかしくないのではと考えるほどの代物である。実にエリック・クラプトンらしいギターのフレーズがあちこちに出てくるので、疑いようもない。しかもどういった事情かは知らないが、猛烈な緊張感に満ち満ちているテイクなのである。この一曲が正式にリリースされるだけでも「買い」なのである。5千円ちょっとという価格は、「ちょいとふっかけ過ぎでは」と思わなくもないが、有り難く購入した。

 

届いたブツには、正直なところ笑みがこぼれた。アンディ・ウォーホルがデザインした、リアルなジッパーがついたジャケットは、実に厄介な代物である。ジッパーが他の盤を傷つけてしまうため、中古盤店などでは段ボールがあててあるのが常であるが、今回の販売では、帯状のプラスティックがあててあったものの、自分のところに届いたものも既にズレていた。案の定、ジャケットの裏側にはくぼみができている。本来ならクレームでも申し立てたいところだが、「スティッキー・フィンガーズ」だからしょうがないと思ってしまう。ジッパーが印刷された再発ものは大丈夫だろうが、世の中のほとんどすべての「スティッキー・フィンガーズ」はキズモノに違いない。

 

ちなみに、旧盤のジッパーはいろいろなタイプのものが存在するようで、今回の再発はトレードマークのベロタイプのジッパーが付いていたが、自分の手元にある東芝EMIの旧盤はYKKの一般的なものがついている。各国盤を集めているコレクターもいるらしいが、自分はコレクターではない。状態のいいYKKが一枚あれば十分である。デラックス盤が発売されたからといって価値が下がるものでもないし、そもそも状態のいい旧盤にはめったにお目にかかれない盤なので、自分の中ではかなり大事にしている一枚ではあるのだ。

 

また、もう一枚、嬉しいデラックス盤が届いた。マイルス・デイヴィスの「TUTU」である。こちらも2枚組になっての再発だ。2枚目は未発表のライヴ音源だが、マイルスの場合、全てが有り難く拝聴すべき重要音源である。この盤の2枚目は1986年のニース・フェスティヴァルのライヴ録音だが、自分はこの時期のライヴ音源が非常に好きなのだ。奇跡の復活を遂げた後の80年代の録音はポップ過ぎると批判されることもあるが、自分はさすがの選曲だと思っているので、今回も非常に喜んでいる。

 

80年代マイルスのカヴァー曲で特筆すべきは、筆頭はシンディ・ローパーの名曲「タイム・アフター・タイム」だろうが、もう一つ忘れてはならない曲がある。ラーセン・フェイトン・バンドでヒット・アルバムを連発したニール・ラーセンの「カーニヴァル」だ。オリジナルからして緊張感溢れるフレーズがとても魅力的な曲だが、マイルスのカヴァーも全編にわたり緊張感みなぎるもので、聴き入ってしまうこと必至なのである。ニース・フェスティヴァルでもいい感じの演奏が繰り広げられている。今回のデラックス盤、この一曲だけでも買いである。

 

最近は70年代、80年代の名盤が40周年記念や30周年記念と謳ってデラックス盤が多くリリースされている。アナログ盤も枚数が増えて、レア音源を収録したものが多く、見逃せないのである。レッド・ツェッペリンの各アルバムは、ジミー・ペイジがリマスタリングも行っているということで期待したが、クリアでギターが前面に出た新盤の音質がどうにも好きになれず、残念な思いをした。各楽器のバランスが絶妙な旧盤は、聴き馴染んできたこともあり、やはりベスト・バランスと感じるのだろう。どうにも印象が違い過ぎてダメだった。

 

レッド・ツェッペリンのデラックス盤でめげることなく、ローリング・ストーンズやマイルス・デイヴィスは非常に楽しめている。レア・トラックスが魅力的だったことも加勢していると思われるが、今後もこういったデラックス盤の再発が期待できるのだろうか。著作権の保護期間切れとの絡みもあり、今後1960年代のヒット作に関する再発は続くと思われるが、ポピュラー・ミュージックにとってエポックメイキングな1969年からあと4年もすれば50年が経過する。いよいよデラックス盤の黄金期ともいうべき大変な時期に突入するのだろうか。40周年記念盤にうつつを抜かしている場合ではないのかもしれない。

 

 



         
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