0014 フレンチ・ポップスの現在形(2015.07.06.

ZAZというフランス人女性ヴォーカルが気になって、アルバムを一枚買ってみた。とりあえずアナログで手に入るのは、「PARIS」という最新盤のみだったので、深く考えずにオーダーしてしまった。手元に届いてからクレジットを見ると、何とクインシー・ジョーンズが3曲もプロデュースしているではないか。通して聴いてみたところ、「アイ・ラヴ・パリス」など実に素晴らしいテイクである。これはメッケモンだったかもしれないと思い、腰を据えて聴いてみた。その結果、今のところ、最低日に一回は聴かないではいられないほどにハマっている。

 

とにかく聴かずにいられなくなってしまったのが、「オー・シャンゼリゼ」なのである。「今さら…」と思われるかもしれないが、古き良き時代のパリを思い起こさせるにはうってつけの曲である。ジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリがホット・クラブなどといって熱い演奏を聴かせていた時代のパリ、ゲンズブールが男の色気を振りまいていた時代のパリ、スイングするパリをこの時代になって意識することになろうとは、思いもよらなかった。

 

1960年生まれの自分と同世代にとっては、フレンチ・ポッップスは結構身近なものだったと思う。1970年代当初、ミッシェル・ポルナレフの大ヒットが代表的なものだろうが、シルヴィー・ヴァルタンやフランス・ギャルなど日本のポップス・ベスト10には、英米と肩を並べてフランス人の曲が多く入ってきた。イエイエなどとも呼ばれていたが、フランソワーズ・アルディやダニエル・ビダルといったところも懐かしい。アラン・ドロンをフィーチャーしたダリダの「甘い囁き パローレ・パローレ」なども忘れられない一曲だ。実はフレンチ・ポップスは結構好きだったのである。ただJ-POPを日本人として括ることの乱暴さと比較するまでもなく、フランス人だからといって一括りにする気もない。

 

自分にとって、フランスの個性的な文化に直に接したのは、1987年にルノー・サンクという小型車を購入したことかもしれない。日本車の常識では捉えきれない、あまりに個性的なクルマだったので、その後の価値観を大きく変えられてしまったと思っている。その後もシトロエンやプジョーなどにも乗っているので、やはりフランス車は嫌いではない。理詰めのドイツ車よりも、色気があって魅力的だ。

 

1980年代後半、まだ日本では再評価の機運すら盛り上がっていなかったジャック・タチというフランスの映画監督が好きになって、片っ端から漁るようにして彼の映画を観たものだ。古いフランス車が出てくることもあって、ストーリー云々ではなく、映画に出てくる風景などを食い入るように見ていたことを記憶している。代表作「ぼくの伯父さん」も好きだが、1967年の「プレイタイム」というコメディ仕立ての作品が特に好きだった。そんな頃は、デビューしたてのクレモンティーヌに夢中だったり、常にフランスは憧れの国であり続けた。パリ ダカール・ラリーも必至で観たものだ。ただし、フランスなどという国は、遠くから憧れているのがイチバンと思わなくもない。ある意味、理解不能という気もするからである。

 

思い切り話が逸れたが、要は決してフランスという国は嫌いではないということだ。フランス語は、音的にどうも字余りで好きになれないと思っていたのだが、それでもZAZのアルバムなどを聴いていると、言葉の響きが好きなのかと思わされることも多い。とても好きな声ではないのだが、毎日夕方になると、彼女の歌声が聴きたくなってしまうのである。どうやら生理的に好きといったレベルの話のようだ。そこから引っ張られるかのように、ミッシェル・ポルナレフの「シェリーに口づけ」や「愛の休日」などを聴きたくなってしまうこともある。意味の分からないフランス語にハマって、疲れを癒している今日この頃なのである。

 



         
 Links : GINGER.TOKYO  saramawashi.com  Facebook  
 Mail to :  takayama@saramawashi.com     
 Sorry, it's Japanese Sight & All Rights Reserved.