0016 名ばかりのコレクション(2015.07.18.

自分が普段聴くアナログ盤は、1970年代から80年代前半のものが中心である。60年代のものは好きなものも多いが、やはり遡って聴いただけに同時代感覚は薄く、70年代のものには敵わない。70年代のものは、自分が小学、中学、高校と小遣いを貯めたりアルバイトをしたりして貯めた金で買ったものであり、思い入れは絶対的に強い。アルバム一枚を買うのに、国内盤だと2500円していたのである。今の2500円とはわけが違う。大卒初任給で見ると、1970年で4万円ちょい、1975年で9万円ちょい、1980年で11万8千円ほどである。今よりもはるかに価値のある2500円だったのである。

 

45年も同じ趣味を続けているおバカであると自分のことを紹介することがあるが、事実45年前からレコードを買うことに勤しんできた。小学生の小遣いが50円とか100円の時代である。どうやって買ったのかと訊かれるが、当然小遣い稼ぎをして買ったのである。自分の場合、母親が勤めていた印刷工場の簡単な作業を内職的に手伝わせてもらって稼いだ金が大きかった。1972年12月に、T.REXの「ザ・スライダー」を十条駅前の新星堂で買ったのが最初のアルバムである。それまではシングル盤しか買えなかった。そこから計画的に、数か月おきにアルバムを買い集めていったのである。その当時買ったアルバムの思い入れの強さがどれほどのものか、言葉で説明なんてできるものではない。

 

そんな頃、どのアルバムを買うかというのは非常に大きな悩みだった。当然取捨選択という行為が必要になるわけである。買ったものはそれこそ一日に何度も繰り返し聴き、枚数が増えるまでは毎日同じものを聴くわけである。問題は買えなかったもの、取捨選択で落選したほうのものである。後々、そのほとんどを買うことにはなるのだが、期待が数年分蓄積されてしまっているわけで、期待外れの内容の場合、落胆も大きかった。一方で買ったもの以上に思い入れが強くなってしまった盤も多数ある。ラジオやエアチェックしたカセットテープでは聴き取れなかった部分が、クリアに聴こえて驚いたり、思いこんでいた歌詞が全然違っていたり、まあ、いろいろ、感慨一入であった。インターネットで検索すればある程度の情報は得られてしまう現代、そんな驚きや苦労など笑い話にしかならないが、当時は本当に必死だったのである。

 

リック・ネルソン、パイロット、スティーヴィー・ワンダー、エルトン・ジョンの一部など、散々迷った挙句に落選したアルバムを後々買って、その内容の素晴らしさに悔しい思いをしたものである。忘れようもない。1980年5月にシーナ&ザ・ロケッツの「真空パック」を買ったのが自身100枚目にあたる。その頃は既に輸入盤を漁るのが趣味になっていたので、国内盤が随分高く感じたことをいまだに憶えている。YMOは思い切り気になっていたが、リアルタイムで買うことはしなかった。少し経ってから買い集めたが、当時は素晴らしいアルバムを作っている他の日本人ミュージシャンを優先した。渡辺香津美なども割とリアルタイムで買っていたし、プリズムなどのフュージョン系は日本人も高く評価していた。ザ・ポリスをはじめとしたニュー・ウェーヴ的なものは積極的に買うようにしていた時期だったので、結構大変だった。

 

結局そこからCDがメインのパッケージ・メディアになるまでの間はリアルタイムで購入し続けたが、ヒット・チャートを追いかけるのもその頃に止まってしまった。ただCDの音質に満足できなかったこともあって、たたき売りされていたアナログLPを、随分お安く買い集めたものである。リアルタイムではない分、思い入れは少し薄くなってきていたと思うが、想像していた中身との落差に驚愕の日々だった。そこで期待外れだったものも捨てるわけではなし、想像通りもしくはそれ以上と感じたアルバムはキチンと整理して保存していたわけである。

 

そう考えると、自分のコレクション、極一部は大金をそそぎ込んで買ったものになるが、多くはCDが出てきたおかげで安く売られていたものをマメに買い集めたものということになる。ディスクユニオンは、そんな時代でも600円といった程度の値札を付けていたが、フュージョンは100円などで売られていた。神保町のマーブルディスクはかなりいい盤を200円で購入できた。随分お世話になったものだ。それでも資金を投下したのは圧倒的にディスクユニオンだった。何百万円…1千万を超えているかもしれない。何せ40年間も通い続けているのだから…。こんなもの、抱え込んでいてもしょうがない。コレクションとは言っても名ばかりの、英米日混在のいい加減なものだ。音楽好きの皆さんとシェアして楽しめるほうがいいではないか。アナログ盤を聴いて楽しめるカフェというのは、案外悪くない選択肢だったかもしれない。

7月から「GINGER.TOKYO」としてリニューアルしたが、コーヒーの町、清澄白河の老舗を目指して、まったりやっている。お近くにお越しの際は、お立ち寄りください。

 



         
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