0017 電器メーカーに物申す(2015.07.25.

東芝の不正会計問題がニュースになっているが、あんな日本を代表するような大企業でもやらかすのかと、少々呆れて聞いている。音楽好きは東芝音工、東芝EMIには大変お世話になっているし、昔はオーレックスというオーディオ・ブランドにも随分お世話になったように思う。オーレックス・ジャズ・フェスティバルの抽選でもらったヘッドホンステレオ、ウォーキーは愛用していたんだけどな。家電から原発まで作っている大メーカーは、少々大きくなり過ぎたのだろうか。正しい競争は品質を向上させるが、過度の競争は品質を悪化させる。そういえば最近東芝の製品を買っていない。特に思い当たる節もないが、果たして魅力ある製品を送り出せていたのか。創業時は時代をリードする会社だったはずだが、いつの間にか巨大な追従者になっていたのかもしれない。

 

結局のところ、ソニーのヘッドホンステレオ、ウォークマンの大ヒットが音楽をパーソナルなものにしてしまったのだ。自宅のリビングルームに置いてあるオーディオセットで聴くホームオーディオも十分パーソナルなものなのだが、ウォークマンの場所をえらばずに音楽が聞けるという特性が、パーソナルな性格を一層強くしてしまったのではなかろうか。ソニーがフィリップスとCDを共同開発したことは、「可搬性」というキーワードで捉える限り、1979年発売のウォークマンの延長線上にあったと考えてもおかしくない。ただ残念なことに、音声のデジタル化は、利便性のみならず高音質化も視野に入れていたはずだが、ノイズがないというだけでは高音質化を求めるマニアを満足させるには至らなかったようだ。その後のソニーの努力は認めるが、他は何をしていたのやら。

 

自分が初めて耳にしたCDのデジタル音声は、おそらく秋葉原の石丸電気の店頭で聞いたものだったと思うが、松田聖子の「青い珊瑚礁」だった。ノイズがないので、いきなりイントロが出てきたように感じ、ずいぶん驚いたものだ。アナログと聴き比べができる状況は数年待たなければならなかったが、最初からクリア過ぎる音が好きになれなかった。1986年、ようやくCDデッキを購入したが、その頃でもまだ1枚3000円以上していたし、音楽は映像とともに楽しむ時代になっていた。ヴィデオデッキも、まだベータマックスかVHSかで競っていた時代だが、自分は最初ベータを買ったクチなので、痛い目にあった。ベータのテープは全て処分したが、ベストヒットUSAやMTVを録画したVHSのヴィデオテープは、いまだに押入れの中に眠っている。おそらく、すべてYouTubeで観ることができるものだろうが、なかなか捨てられるものではない。

 

デジタル音源が収録された器としてCDを所有することが廃れ、ダウンロード販売に移行したことはスペース効率などを考えれば理解もできる。しかし、所有という概念は変わらないように思う。最近は「持たない」という潔い暮らし方をする「ミニマリスト」といったライフスタイルが流行りらしいが、自分には絶対に出来そうにない。PCなどにデータを保存することも所有だとは思うが、何か違うのだろうか。YouTubeの充実ぶりもあって、音楽を所有するという概念がなくなったとも言われる時代、アナログ盤に拘って聴いているということは、どうも別のものさしで考えるしかなくなったようだ。時代遅れなどということでもなく、別の消費行動であることだけは確かではないか。

 

結局のところ、アップルはクラウド時代をリードするまでにPCやタブレットの活用法が提案できているのに、ソニーや東芝といったメーカーはライフスタイルの変化に伴った機器の活用法すら理解できていないのではなかろうか。ミニマリストは配信サービスを活用すればいいだけのことのようにも思うが、もっと音楽好きを納得させられるようなサービスが提供できないものだろうか。単にいつでもどこでも高音質を楽しめれば満足できるのであれば簡単なはなしなのだが、音楽の楽しみ方はそんなに単純なものではない。音楽を聴かせるカフェをやっていてイチバン苦労するのは、「あの時のあの曲って誰だっけ?何だっけ?」という部分だが、「ウィキでも調べろや」とでも言いたげなサービスの少なさが本当に腹立たしいし、単にデータベースの充実だけでは済まされない難しさは理解されないのだ。

 

正直なはなし、この期に及んで7インチのEP盤が結構な数売れているわけで、そういったタイプの音楽に関する消費行動などは、どうやっても説明ができないのである。オーディオ機器など持っていなくても、単に好きだったからというだけで、ビリー・ジョエルのEP盤を買っていかれるお客様はいらっしゃるのである。大好きなミュージシャンのEPを飾っているだけでもいいのである。パイオニアや松下電器はアナログ用の機器を製造し続けてくれているだけでも感謝している。さあ、その他のメーカーさんたち、何とか我々のようなアナログ好きが満足できるサービス等を提供できないものか。小さなマーケットでもないような気がするのは自分だけだろうか。

 



         
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