0019 日本人、いいね!(2015.08.08.

6月に0012号「日本人、頑張れ!」で最近のヒット・チャートに入ってくる日本人ミュージシャンのレベルが高いということを書いたが、その後、すっかり日本人の若いミュージシャンが気になっていけないのだ。開店準備の時間帯や閉店後のアフター・アワーズは、お客様のことを気にすることなく、カフェらしからぬ曲を中心に流したりするのだが、最近はJ-WAVEを流していることが多くなってしまった。次から次へと好きな曲が出てくるからだ。しかもいずれも日本人なのである。最近はアルバムを買ってちゃんと聴いてみたいと思わせるミュージシャンがほとんどいない状況だったが、若い日本人の曲を聴いている方がいいと思うようになるとは、俄かに信じられない状況でもある。相変わらずブルー・ノート・レーベルからは目が離せないが、それ以外のヒット・チャートに入ってくる洋楽はほとんど用がない状況なので、これも致し方ない。

 

今現在、気になっていけないのは、YKIKI BEAT、クラムボン、グリム・スパンキー、ゲスの極み乙女。といったところか。どれも全く違った音楽性を持った連中だが、ヒット・チャートを上ってくるのも当然と言える曲のクオリティとテクニックを持っている。また、いずれも、オーディオ趣味的な部分でも満足度が高い。他にも曲だけで言うなら、KANA-BOONやキュウソネコカミ、土岐麻子などもいいとは思うが、すべての要素での満足度となるとちょっと待てといったところである。また、ファンならルックスも重要な要素なのだろうが、オジサンにとって見た目は全く問題ではない。

 

とにかく、YKIKI BEATの「FOREVER」には驚かされた。日本人と聞き分けられなかった。しかも、エラく音がいいのである。YouTubePVを観ても、他と明らかに違ったレベルの鳴りである。ギターとヴォーカルの音のよさは群を抜いているし、またヴォーカルの発音もかなりいい線だし、言葉をリズムに乗せる技はもう十分にネイティヴのレベルであろう。こういった若いバンドがどんどん出てくるのだとしたら、日本も本当に捨てたものではない。最近は音楽で食っていくのは容易ではないと言われているが、是非とも長続きして欲しいバンドである。

 

グリム・スパンキーは、ヴォーカルの松尾レミの声質に尽きるかもしれないが、如何せんロック向きの声である。スズキのワゴンRスティングレーのCMに起用されたジャニス・ジョプリンのカヴァー「ムーヴ・オーヴァー」も秀逸なら、映画のイメージ・ソング?という「リアル鬼ごっこ」も秀逸だ。荒井由実の「ひこうき雲」もカヴァーしているが、こちらも妙に曲に合った発声をしており、上手い下手ではなく、自分の個性をよく理解しているようで頼もしい。

 

今回クラムボンとゲスの極み乙女。に関しては、リズムの面白さで注目している。もちろん印象的なメロディの曲で惹きつけられたのだが、ラジオでしっかり聞こえていたわけではないベースとドラムスが、実に面白いリズムを刻んでいるのである。まさに「なんじゃこりゃ!」状態で、何度か繰り返し聴き直してしまった。クラムボンの「YET」はいくつかヴァージョンがあるようだが、手数の多いドラムスがなかなか楽しませてくれるし、ベースも素晴らしいグルーヴだ。ゲスの極み乙女。は女性2人、つまりドラムスとキーボードがやたらと上手い。諸々のセンスも普通ではなさそうだ。実に今後が楽しみな連中である。

 

実を言うと、当初は東西のヴォーカリスト2人を比べて何か書こうと思い立ち、いろいろ資料にあたっていたのである。つまりディスクロージャーがフィーチャリングしているサム・スミスと平井堅である。ヒット・チャートに入っている中でも、この2人のヴォーカルの上手さはやはり際立っている。アップテンポのR&Bでも、スロー・バラードでも、実に素晴らしいヴォーカルを聴かせるこの2人は、いまさら自分があれこれ書いても仕方がないと思うのである。歌が上手いことは誰もが認めるであろうから、諦感が先だってしまう。褒め言葉を並べているだけの、面白くない文章にならざるを得ないのである。

 

その一方で、若手のバンドの台頭が著しい昨今、1990年代初頭のバンド・ブームの頃が笑い話になりそうではないか。とにかく、皆上手い。すべからくライヴを観ている訳ではないので本当のところは判らないが、シングル曲の演奏は文句なしのものばかりだ。R&Bがメイン・ストリームになって以来、品の無い低音と抜けの悪いヴォーカルの音質が気に入らないものばかりで、やや食傷気味だったのである。録音のクオリティなどは好みの問題もあるので何とも言えないが、TOKIO HOT100を聴いていて、ロック向きのいい音がしょっちゅう飛び出してくるのだから嬉しくなってしまう。何ともいい時代になったものだ。

 



         
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