0021 レイト・サマー・セレクション(2015.08.22.

何とも暑い夏である。昔は30度を超えると本当に暑いと思ったが、最近では30度が涼しいということになる。39度などという体温よりも高い気温というのは、明らかに熱帯化しているだろうし、路面温度は40度をはるかに超えているだろう。散歩させられる犬も気の毒な温度だ。夕立もスコールのように激しいではないか。それでも、お盆を過ぎると、朝晩は少し涼しい風が吹き始める。実はこの風が大好きなのだ。その年、最初に秋を感じさせる涼しい風を感じたときの心地よさ、嬉しさといったらない。まさに今日あたりが、そんな風を感じられる嬉しい時期なのだが、日中は残念ながら異様な暑さとなってしまった。33度はまだ大した気温ではなかったが、湿度が高く、非常に不快な空気だったのである。日中、街歩きをしている人の少なさに呆れたほどだった。

 

レイト・サマー・セレクションと題して、こんな季節に合う曲をかけまくるイベントをやってみたが、そんなわけで、お客様の入りは惨憺たるものだった。それでも御贔屓にしてくれている何人かのお客様にご来店いただき、自分としては楽しいひと時を過ごすことができた。久しぶりの土曜日の営業とあって、仕込み量は余裕を持って設定したため、多くを自宅に持ち帰ることになってしまったが、ランチは全品アフォガート付きにしてみた。コーヒーの町として注目されている清澄白河に相応しいスイーツと言えばこれだろうと思ったのだが、いかがだったろうか。バニラアイスにかけたエスプレッソの苦味が実に美味しかったので、今後はメニューに加えておくことにしようと思う。

 

さて、BGMだが、結局のところ、松岡直也とジャック・ジョンソンに頼り切りといった結果になってしまった。ビーチ・ボーイズの涼やかなコーラスも、渋いバーティ・ヒギンスのヴォーカルも、何だかしっくりこなかった。先週試しに流したときは、いいなと思えたのだが、曲の短さのせいか、気分的な理由もあろうが、どうもいけない、楽しめなかった。松岡直也は少し古く感じなくもなかったが、レトロなテイストを持ったカフェ、GINGER.TOKYOには案外マッチしていた。名盤「九月の風」からスタートしたのだが、渦巻くラテン・パーカッションに、海に行きたくなってしまった。少し間を置いて「ウォーターメロン・ダンディーズ」もかけたが、こちらも意外に古く感じられず、十分以上に楽しめた。

 

途中「サマー・オブ・ラヴ」と題して1967年のヒット曲を集めたコンピレーション盤をかけたのだが、スコット・マッケンジーの「花のサンフランシスコ」以外は、あまりレイト・サマーという雰囲気ではなく、これもイマイチとなってしまった。ラヴ・アンド・ピースといった時代ではないのかもしれないが、1960年代を語るとき、スウィンギン・ロンドンとサマー・オブ・ラヴはやはり欠かせない。音楽的には1969年があまりに突出した名盤量産年だけに60年代のイメージを歪めてしまうが、ビートルズもローリング・ストーンズもサイケな盤を出したりした67年あたりのポップ・カルチャーは、やはり楽しいし好きである。まだ音楽が産業化していなかったというべきか、個人の影響力が大きく、レコードもクレジットを眺めて、あれこれ語るのが楽しくていけない時期である。スタジオごとで随分違った音を生み出していたのもこの時代で、いかにアビー・ロード・スタジオの音響が優れていたかも語り出したらキリがない。アメリカ盤の音質は、イギリス盤と比べると、劣っていたと言わざるを得ない。好き嫌いのレベルではない。

 

最近はすっかりアコースティック・サウンド全般を代表するミュージシャンとしての地位を確立した感のあるジャック・ジョンソンだが、やはり元サーフィンの世界チャンピオンだけに、彼の音楽は潮風の香りがする。ハワイから発信される音楽も、時代をさかのぼればカラパナが代表選手だった頃もあれば、ジェイク・シマブクロのように良盤をリリースし続けているミュージシャンもいる。フラもあれば、ギャビー・パヒヌイ等のルーツ回帰もある。いずれもレイト・サマーにはベスト・マッチだと思い、少しずつはかけてみたが、やはりジャック・ジョンソンがベストだったと言うべきだろう。一日中ジャック・ジョンソンでもよかったのかもしれない。

 

さて、少し涼しくなってきて、朝晩の時間は快適な季節になってきた。音楽の聴き方も、あまりに暑いとテキトーになっていけない。これからの季節は、下町音楽夜話ももう少し身を入れて書くことができそうだ。ライヴはすっかりご無沙汰だが、以前と比べれば比較にならないほど音楽を聴く時間はある。どのみち死ぬまでに、コレクションの全てを聴くことはかなわないだろうが、聴きたい盤も溜まっている。音楽を聴くにはいい季節になってきたということで、少し頑張ってみたいと思う今日この頃である。

 



         
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