0025 TOTOのシングル・カットは面白い (2015.09.19.

TOTOというバンドはいつまでたっても楽しめるものだ。最大のヒットアルバム「TOTO IV」が1982年のリリースであることから、1980年代前半のイメージが強いことが当然のように思われるが、あのアルバムだけでイメージが確立したようなバンドではない。1978年にデビュー・アルバムをリリースし、「ホールド・ザ・ライン」の大ヒットも持っていることから、必ずしも80年代のバンドというイメージで括られるべきものではないが、やはりスタジオ・ミュージシャンの集合体であることから、その時代に多くのミュージシャンのアルバムに各メンバーが参加し、TOTO的な音が世の中に溢れていたということにも原因があるようだ。

 

中心メンバーはキーボードのデヴィッド・ペイチとギターのスティーヴ・ルカサーであることは間違いないが、当初はドラムスのジェフ・ポーカロがサウンドの要とも言われていた。彼が叩き出す複雑かつ精緻なリズムは、他に真似できる者が少ないことからも、そう受け取られても仕方がなかろう。それでも、彼の死後、その穴を埋めたサイモン・フィリップスも誰もが認める技巧派で十分に役目を果たしていたから、一概にはそうも言い切れない気がする。サウンド面は煌びやかなスティーヴ・ポーカロのキーボードも大きく貢献しているから、結成当初のメンバーは皆主要メンバーとなってしまう。ベーシストのスティーヴ・ハンゲイトも、ずっしりと重い正確なリズムが、当時もそして今も主流と思われるR&B的な跳ねるベースとは全く違った印象を与えるため、TOTOは決してダンス・ミュージックと捉えられることはない。そういった意味ではサウンドの決め手となる重要な要素である。

 

そう考えると、ディスコ・ブーム真っ只中にデビューしてきたわりに、1980年代の多くのアルバムに参加しているTOTOの初期メンバーの個性が、ダンス・ミュージック一辺倒ではない80年代以降の音楽世界を構築していったことに大きく関わっていることは紛れもない事実だろう。一方で80年代を代表するブラック・ミュージックのアイコン、マイケル・ジャクソンのアルバムにスティーヴ・ルカサーが参加していたりすることが面白くもある。見方を変えれば、マイケル・ジャクソンがR&Bの枠に収まっていなかったミュージシャンとも言えるわけで、大ヒット曲「ビート・イット」なども、エディ・ヴァン・ヘイレンによるハードなギター音が印象的であることは説明を要しないだろう。面白いものだ。

 

TOTOに関して面白いと思うのが、シングル・カット曲である。ファースト・アルバムからは「ホールド・ザ・ライン」「アイル・サプライ・ザ・ラヴ」「ジョージー・ポージー」の3曲、オランダでは「ロックメイカー」もシングル・カットされたということだ。この辺はポップ・ロック中心でなるほどと思わされる。アルバムでは重要な位置を占める「チャイルズ・アンセム」も名曲だろうが、シングル向きではないから納得がいく。面白いのはこの後だ。セカンド・アルバム「ハイドラ」からは、「99」「St.ジョージ&ザ・ドラゴン」「オール・アス・ボーイズ」の3曲、サード・アルバム「ターン・バック」からは「グッバイ・エリノア」「イフ・イッツ・ザ・ラスト・ナイト」「リヴ・フォー・トゥデイ」となる。

 

セカンドのタイトル曲「ハイドラ」はポップな名曲だが7分超の長尺でシングル向きでないのは理解できるが、何故「オール・アス・ボーイズ」がカットされるか。サードは「グッバイ・エリノア」以外は何を考えているのかと言いたくなる選曲だ。「リヴ・フォー・トゥデイ」は大好きな曲だが、思い切りハードロック・チューンではないか。売れるわけがないし、当然ながらチャートインすらしなかった。

 

その後、どう反省したのか、4枚目「TOTO IV」からはポップ・チューン「ロザーナ」が第1弾で全米2位となる大ヒットとなる。しかし、どういうわけか第2弾が実に地味な「メイク・ビリーヴ」とくる。当然低迷する。そして第3弾が全米ナンバー・ワンの大ヒットとなる「アフリカ」だ。どうしてこうも紆余曲折するのか、シングル・ヒットの方向性も定まらないのか、笑ってしまうほど迷走するのである。その後このアルバムからは4曲をシングル・カットするので合計7曲となる。当然ながら無茶である。それでも「アイ・ウォント・ホールド・ユー・バック」もベスト・テンに届くほどヒットするのだから、勢いがあるということだったのだろうか。

 

斯様にロック・バンドのシングル・カットを調べていくと面白いこととなる。「どうしてこの曲が…」と言いたくなるものが殊の外多いのである。それでも時々大ヒットするから、また面白い。1980年代のある程度の時期までは、シングル・カットされたからには7インチ盤が存在するわけで、こういったものを収集するのも案外面白い。LPのジャケットは見慣れているが、シングルのスリーヴは時代を反映させた謳い文句が面白い上にLPのジャケットのままではないデザインのものも多く、意外に楽しめるのである。ただし、書いてきたような事情から、本当に存在するのかと思いたくなるほどレアものも多い世界なのである。

 



         
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