0027 嬉しいお客様(2015.10.03.

カフェをやっていて何が楽しいかと問われると、当然ながらお客様との語らいと答える。当初は自分が店にいるつもりがなく始めたカフェだったが、結局のところ経営難で自分自身がやらざるを得なくなってしまったので、実のところそういった語らいの場をつくるためにやっているという意識は薄かった。それでも、差異化・差別化項目は多い方が望ましいとなれば、既にある資産で何とかしようということになる。元々アナログ・レコードも持ち込む気はなかったが、BGMがウリの一つになるのであればといった程度だった。元々がイベント・スペースとして活用できる地域貢献のためのカフェを目指していたので、40坪程度の大きな物件を探していたが、結局手に入ったのは20坪のかなり不整形なものだった。しかもビルの2階である。数少ない魅力的だったポイントは、江東区平野1丁目、清澄白河駅から徒歩4分という場所と、賃料の安さである。

 

安かろう悪かろうという気もないが、結果的にはかなりのイニシャル・コストに加え、普通では考えられない出費が嵩んでしまった。4か月で余裕がなくなり、また自分の体調不良というどうしようもない理由で一旦閉めることになった。しかも予想外の事態で店の名前も変えざるを得なくなってしまったのだ。フィジカルな不調はメンタルの不調にも繋がり兼ねない。しばらく猛烈にシンドイ日々を過ごしたが、ホンの2週間ほどでリニューアル・オープンできたのは、周囲の知人・友人や家族の支えのおかげである。その後は楽しく仕事ができるスタッフも集まってきて、何とか順調に推移している。せっかく29年間勤めて得た退職金を全て突っ込んで作ったカフェなので、もう少し続けてみたいとは思う。

 

結果的に、子どもさんウェルカムのカフェという要素とともに、アナログ・レコードがいっぱいあるお店ということで徐々に広まっているようで、お客様はお子さん連れのママ友さんたちか音楽好きということになってしまった。もちろんランチタイムは、ご近所のサラリーマンやOLさんたちの胃袋を満たすというかたちで地域貢献できているようで、納得はしている。飲食店をやるからには、付加価値以前に、まず美味しいという評価をいただかなければ意味がない。この点でも、一応納得はできている。嬉しいことだ。

 

さて、そんな中、実に嬉しいお客様のご来店である。お客様を選り好みする気は毛頭ないが、何せ愛知県豊川市からわざわざお越しいただけたというだけで、もう感謝感激である。しかもこのYさん、何と下町音楽夜話を全て読んでいただいているという。恐れ入りましたでは済まされない、大変なお時間をシェアさせていただいているようなことになる。何せ下町探偵団のウェブサイトで666本、13年近くかかって書いてきた音楽エッセイである。しかも途中の何本かは2面構成にせざるを得ない長編である。紙の本にしたら30冊ではきかないような量の文章になる。読んでいただけただけでも感謝しないわけにはいかない。ちなみに、全部読んでいるという方はお二人目である。ウチのカミサンなんぞ、文章が長すぎということで、ほとんど読んでくれない。下町探偵団の元さんも、時々厳しいチェックが入ったりしたが、話がかみ合わないことが多かったので、多分ロクに読んでいないのだろう…。

 

Yさんは、ロンドンに出張された際に、デヴィッド・ボウイの「ジギー・スターダスト」のジャケットに写っている場所や、アビーロード・スタジオ等を訪れたということで、お写真を見せていただいたりもした。たまたまお隣りのテーブルに、カフェのリニューアル・オープンにご協力いただいたOさんのダンナさんがいらしており、一緒に話に加わり、とても楽しいひと時となった。Oさんはバリー・ゾゴン・バンドとして演奏活動もされている方で、とても幅広くいろいろな音楽に精通されていらっしゃる。音楽好きは知り合いだのということではなく、音楽の話題で直ぐに盛り上がれることが楽しい。

 

悪天候のためか、ランチタイム過ぎの午後にしては珍しく混んでおり、あまりゆっくりお話しすることができなかったことが心残りではあるが、きっと再会できることを期待するしかない。これがまた頑張ってお店を続けていこうというモチベーションにも繋がるではないか。ちなみに、その時のBGMはデヴィッド・ギルモアの「ラトル・ザット・ロック」だった。アタマの1曲目が妙にピンク・フロイドっぽいギターのインストで、ファン・サービスかと言いたくなるものだが、やはりアナログで聴くと艶があっていい音だ。アナログの復権著しい昨今ではあるが、まだアナログ盤が1~2カ月遅れて発売になることは多い。珍しくCDと同時リリースされた本盤、久々にじっくり聴き込む価値のある一枚である。Oさんも意外にいいということだった。やはり、音楽について語っているときがイチバン楽しいかもしれない。お二人とも、ぜひまたお会いしましょう。そのためにも、何とか頑張ってお店を続けていきたいものである。

 



         
 Links : GINGER.TOKYO  saramawashi.com  Facebook  
 Mail to :  takayama@saramawashi.com     
 Sorry, it's Japanese Sight & All Rights Reserved.