0028 7インチは面白い(2015.10.10.

LP盤に比べ、遅々として進まない7インチの整理は、アフターアワーズの楽しみの一つでもある。疲れ切ったところでやるので効率がいいわけはないが、「そういうことでもしてないとやってられない」という気分の日も多いので、疲れていても15分、30分といった時間を捻出してやっている。できたとしても、その日にお客様から要望があってかけた盤を元の位置に戻すのが精一杯ということもある。それでも、何がそこにあるかが確認できるので、やる価値はある。やらないと大変なことになる。スタッフがキッチリ清掃をしてくれているカフェで、レコードだけがどうも雑に散らかっているようで、一応は気にしているのである。

 

LP盤はまだ整理ができている。自宅のLPラックはファミリー・ネームのABC順に並んでいるし、カフェのレコードはその他を含むロックとジャズにわけてABC順に並んでいるので、少々出しっ放しの盤はあるにせよ、ある程度は探せるのである。以前はファイルメーカーを使ってデータベースも作ってあったので、並びが頭にも入っているのである。その一方で、7インチはラックがあるわけではなく、小さな木製の収納ボックスや段ボール箱にいれてあちこちに置いてあるだけなので、探すのに結構苦労するのである。例えば年代順に大別するとか、女性ヴォーカルを集めておくとか、少し工夫すればいいものを、何も考えずに散在している。アーティスト別にまとめることすら、満足にできていない。いつまで整理中なんだと言われそうな「整理中ボックス」は、実は中身は入れ替わっているのだが、整理中の盤がちいとも減らないだけなのである。

 

相変わらず7インチ盤に魅力を感じている。ターンテーブルに載せ換えることも面倒なはずだが、以前にも増して7インチを載せることが多くなっている。自分なりに理由を考えてみたが、やはりLPで聴くべきものと7インチで聴くべきものがあって、自分は7インチで聴くべきものが好きなんだろうと思い至ったのである。DJさんたちはターンテーブルを2台使うのでLPも7インチも同じ条件らしく、最近7インチでプレイするDJさんが増えていることには納得がいく。45回転である分、音圧が高いし、針は落としやすい。しかし、自分は普通のオーディオセットで、つまりターンテーブルは1台で聴いているわけで、DJさんたちとは条件が違う。盤を取り換えるのは、正直言って面倒である。それでも、音が出てきた瞬間にそんなことは忘れているのだからしょうがない。

 

思うに、ロックの多くはアルバムを通して聴くことを前提に作られている。コンセプト・アルバムと呼ばれるものもあるが、そうでなくとも、アルバム単位で聴くことを意識して作られているものは多いはずである。ミュージシャンもアルバムの流れなどを意識して、曲順を考えに考え抜いている。ピンク・フロイドなどを例に考えてみれば分かり易い。デビュー直後の1967年68年には5枚ものシングルをリリースしているが、1970年代は「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール(パート2)」一曲のみである。自分の手元には「おせっかい(Meddle)」からカットされた「吹けよ風、呼べよ嵐」の7インチ盤があるが、これはプロレスラーのアブドーラ・ザ・ブッチャーの入場テーマ曲として使用され、日本でのみリリースされた珍品とも言うべきものである。

 

高校生になってバンド活動なども一応経験した頃でも、自分はヒット・チャートに上がってくる曲が好きだったので、やはりシングル向けのポップ・ミュージックが好きだったということになろう。パンク~ニュー・ウェーヴのムーヴメントで一気に前時代的なものとして扱われ始めたプログレッシヴ・ロックやブリティッシュ・ハードロックは、特にアルバム単位で聴くべきものだった。好きなバンドも多かったが、全く違う聴き方をしていたように思う。たまにヒット・チャートの上位にロック・バンドの曲などが入ってくると嬉しかった。

 

その後産業ロックと揶揄されたものは、シングル・カット向けの短い曲が多かったこともあるし、ニュー・ウェーヴも曲が短かったので、この辺りからシングル盤は多く市場に出まわるようになってくる。また、1980年代に入って、音楽がミュージック・クリップとして映像と一体化して売られ始めたころからは、また曲単位での売り方になってくるので、7インチ盤も市場に出まわる量が増えてくる。その一方でCDが登場し、1980年代終盤にはほとんど7インチ・シングルの生産は止まってしまうので、その後の7インチ盤の中古市場に出まわっているものは、ひどく時代的に偏りがあるのである。そんな中、数少ないロック・バンドの7インチ盤などを集めたりすることがまた面白かったりする。結果的に、ザ・ポリスの7インチはいっぱいあるし、TOTOやヴァン・ヘイレンも少しはある。その一方でフリートウッド・マックやエリック・クラプトンなどはほとんど入手不可なのである。アリス・クーパー、ドゥービーズ、イーグルス、…、ないぞ。サザンロックの雄、レーナード・スキナード…超プレミアものだ。デヴィッド・ボウイもちゃんと集めてみたいが、困難を極めることになりそうだ。

 






         
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