0031 愛しい小粒なヒット曲(2015.11.01.

1970年代後半から80年代前半は大ヒット曲が量産された。例えば1976年にはロッド・スチュワートの「今夜きめよう(トゥナイツ・ザ・ナイト)」が8週ナンバー・ワンに居座った。1977年にはデビー・ブーンの「恋するデビー(ユー・ライト・アップ・マイ・ライフ)」が10週、1978年にはビー・ジーズの「ナト・フィーヴァー」が8週、アンディ・ギブの「シャドー・ダンシング」が7週、1979年にはシックの「おしゃれフリーク」とナックの「マイ・シャローナ」が各6週といったところである。

 

1980年代に入り、その傾向は加速する。まだ70年代のテイストを色濃く残していた80年にはブロンディーの「コール・ミー」とケニー・ロジャースの「レイディー」が各6週ナンバー・ワンになっている。12月に悲劇に見舞われたジョン・レノンの「スターティング・オーヴァー」が翌年にかけて5週ナンバー・ワンになったが、これは特殊事情と考えるべきか。81年は凄い。キム・カーンズの「ベティ・デイビスの瞳」が、途中スターズ・オンの「ショッキング・ビートルズ45」に1週阻まれたものの9週、ライオネル・リッチーとダイアナ・ロスの「エンドレス・ラブ」が9週、オリヴィア・ニュートン・ジョンの「フィジカル」に至っては翌年にかけて10週ナンバー・ワンである。各曲とも2月以上居座ったのだから凄い。

 

82年はやや小粒だが、J.ガイルズ・バンドの「堕ちた天使」が6週、続いてジョーン・ジェットの「アイ・ラヴ・ロックン・ロール」が7週ナンバー・ワンになり、ロックがヒット・チャートの上位にくることが普通になっていったのである。その後、ポール・マッカートニー&スティーヴィー・ワンダーの「エボニー・アンド・アイボリー」が7週、サバイバーの「アイ・オブ・ザ・タイガー」も6週ナンバー・ワンになっている。ロック好きには楽しい時代だった。この時期、年間のナンバー・ワン・ソングは本当に少ない。80年が17曲、81年が18曲、82年は16曲である。

 

1983年にはマイケル・ジャクソンの「ビリー・ジーン」が7週、アイリーン・キャラの「フラッシュダンス~ホワット・ア・フィーリング」が6週、ザ・ポリスの「見つめていたい(エヴリー・ブレス・ユー・テイク)」が8週、ポール・マッカートニー&マイケル・ジャクソンの「セイ・セイ・セイ」が6週などという特大ヒットが続き、年間では17曲のナンバー・ワン・ソングが生まれた。1984年はヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」が5週、プリンスの「ビートに抱かれて(ホエン・ドーヴズ・クライ)」が5週、マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」が6週といったところで、19曲のナンバー・ワン・ヒットが生まれている。

 

その後はビルボードのナンバー・ワンが目まぐるしく変わり、特大ヒットが無いという印象があった。結果的に1985年は26曲、86年は30曲、87年は29曲、88年と89年は各32曲となっていく。どんどん小粒になっていったように感じたのである。1985年は自分が25歳で大学を卒業し、就職した年なので印象深いのである。つくばの科学万博の年であり、また8月に日航ジャンボ機が御巣鷹山に墜落し、坂本九が帰らぬ人となったことは忘れられない。バブル絶頂期、おかしな時代だった。

 

1985年のヒット曲は、小粒と言いながら愛しい曲が多い。まずはUSA・フォー・アフリカの「ウィ・アー・ザ・ワールド」と、バック・トゥ・ザ・フューチャーで使われたヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「パワー・オブ・ラヴ」が忘れられない。映画のサントラではジョン・パーの「セント・エルモス・ファイヤー」もヒットした。他には、ティアーズ・フォー・フィアーズの2曲、「ルール・ザ・ワールド」と「シャウト」もこの年だ。ホイットニー・ヒューストンの「セイヴィング・オール・マイ・ラヴ・フォー・ユー」やスティーヴィー・ワンダーの「パートタイム・ラヴァー」も好きだったし、ヴィデオが印象的なア・ハーの「テイク・オン・ミー」も好きだった。ワムも「ケアレス・ウィスパー」をヒットさせて絶頂期にあったし、フォリナーやREOスピードワゴン、スターシップといったロック組も頑張っていた。ブライアン・アダムスの「ヘヴン」も名曲中の名曲だ。いやはや、数え上げたらキリがない。

 

翌年にはCDに主要メディアの座を明け渡すアナログ・レコードは、ペラペラに薄くなっていたが、音質的には絶頂期とも言うべき素晴らしいものが多かった。そして音楽は映像と一体化し、ミュージック・クリップで評価されるような感覚があった。バブリーな大量消費が音楽にも影響を与えたような気がしてならないが、アメリカは景気が冷え込んでいた時期だし、偶然の一致と考えるべきなのか。その後1991年上期まで、5週以上居座ったナンバーワン・ヒット・ソングは一曲も無い。

 



         
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