0031 青山レコード祭り(2015.11.29.

今年の7月に我がカフェ・ジンジャー・ドット・トーキョーで、「モノラルシステムでアナログを楽しむ」というイベントを開催してくれたキヨトマモル氏が、アーカイ・パックの磯部さんと2人で、同じモノラルシステムを鳴らすイベントがあるというので行ってきた。青山レコード祭りと銘打って、池袋の名店、だるまやが協力しているらしいということは分かっていたが、青山一丁目の駅上にあるワーナー・ミュージック・ジャパンのリスニングルームでやると言う部分が面白そうだと思ったものである。

 

時期的に11月の最終土日ということもあって、ひょっとしたら毎年我が家の年中行事として見に行っている神宮外苑の銀杏並木が見ごろかもと思い、これは好都合だと考えたが、そこは残念なことに銀杏並木は見ごろでないどころか随分酷い状態で、少し枯れ始めているのではないかと心配になってしまう有り様だった。例年と違い、上の方の葉っぱは落ちてしまい、下の方も幹が見える程度しか葉がない。色味も黄色というには茶色がかっており、ここ20年ほど続けて見ているが、最低と言わざるを得ないものだった。駐車場の入口近くにできたSHAKE SHACKという日本初上陸のハンバーガー屋さんの大行列の方が強く印象に残ってしまった。

 

気を取り直して青山一丁目の駅方面に戻り、北青山一丁目の青山ビルの3階に向った。エレベーターをおりると、エントランスホールでレコードフェア的なスペースができており、意外なほど多くの人々がレコ漁りの最中であった。「奥で間もなくイベントが始まりま~す」という声がかかり、リスニングルームに案内された。入口付近で宮治淳一さんとお会いして、7月にご来店いただいたお礼を述べ、部屋に入るとキヨトさんと磯部さんが既にスタンバイ完了といった様子で立っており、会釈のみのご挨拶となってしまった。さほど間をおかずに始まったモノラルシステムの試聴イベントは、何と宮治さんがお二人を紹介するカタチでスタートした。集まった参加者を見渡したところ、7月のイベントにきてくれた方が何人もいらっしゃる。アナログ・レコード復権と言いつつも、モノラルシステムのイベントとなると、コアなオーディオ趣味人の世界となってしまうのだろうか、皆さんお互い知り合いなのかといった様子で、意外なほど狭い社会かもといった印象である。

 

何度も書くが、自分はあまりオーディオに詳しくない。もちろん少しでもいい音で聴きたいという欲求はあるが、一方で一枚でも多くレコードを聴きたいと考えてしまうタイプなので、オーディオはそこそこにとどめておいて、レコードの方におカネを使ってしまうクチである。従ってオーディオ・イベントなどは避けて通ってきたのである。もちろんいいシステムが欲しいとは思うが、さほど潤沢ではない資金を高級オーディオに投ずる勇気はない。試聴すれば欲しくなるに決まっているので、避けることになる。実はこういうイベントは苦手だったりする。そもそも聴いたことがない曲でオーディオ・システムのよさを判断できるほど耳が肥えていない。困った音楽好きなのである。

 

イベントはヨーロッパの女性ヴォーカルあたりからスタートしたが、ほとんど知らない。ジェーン・バーキンのお色気たっぷりの曲は聴けば分かるが、吐息でシステムのよさを判断できる耳は持ち合わせていない。フランソワーズ・アルディはたまたま好きな曲をかけてくれたので、ここらあたりから嬉しくなってきた。ザ・フーの「マイ・ジェネレーション」はどのみちベースとドラムスしか聞こえないが、散々レコードで繰り返し聴いているので、どんな音質の盤かはある程度分かっている。意外に広がりのある、抜けのいい録音である。数曲聴いたあたりで、清澄白河で鳴らしたときと比べて、随分大人しい鳴りであると思い、連れのカミサンにその旨を伝えたところ、どうやら同感だったようだ。さすがにワーナーのリスニングルームはリザウンドがゼロに近いのか、本来のシステムの鳴りが味わえているのだろう。

 

結局自分が常日頃から言い続けていることなのだが、音楽は昔の記憶とリンクしているものである。特に自分の場合はその傾向が強いのだが、初めて聴く曲だと思考が停止してしまうのである。青山レコード祭りのイベントでは、残念ながらほとんどが知らない曲だったので、どうもそれがいい音で鳴っているのか、判断がつかないのである。キャプテン・ビーフハートやモビー・グレープあたりでは随分しっかり低音が出ていることや、楽器の音の分離がいいことはよくわかったが、オーティス・レディングのライヴやダニー・ハザウェイの初期音源など、もう少し生々しい音で鳴って欲しいような気もした。針の聴き比べは非常に面白かったが、そこから得られた情報は、やはりBBCは相当いい音で鳴らしていたのであろうということである。40~50年前は、人々にとって今よりも音楽の持つ意味が、遥かに大きかったのである。今の10代が将来どんな感覚で今の音楽を振り返るのか、ちょっと心配にならなくもないが、我々の世代は本当に素晴らしい音楽を聴きながら育ってこれたことが、あらためて有り難いと思えたものである。いやあ、楽しかった。

 



         
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