0036 カフェが人と人を繋ぐ(2015.12.06.

清澄白河でカフェをやるということがどれだけ面白いことかは、なかなかご理解いただけないだろうが、本当に日々いろいろなことが起きるし、いろいろなお客様がやってきて、いろいろなお話を伺うことになる。それこそ趣味もいろいろあれば、職業もいろいろで、人それぞれカフェの店主に求めるものも違う。もちろんカフェの店主に救いを求めるわけではないし、難くせをつけられるわけでもない。概ねちょっとしたことに共感を得られればという程度の雑談である。それでも関係しそうな動画に心当たりがあれば、YouTubeで検索してプロジェクターで映して差し上げたりして意外に盛り上がったりする。音楽に限らず、最近のYouTubeの充実ぶりに感謝しないわけにはいかない。

 

音楽に関しても、さほど多くレコードを持ち込んでいるわけではないし、HDDプレイヤーのデータ量も、当然ながら限界がある。自分なりに選んだ10万曲程度は直ぐにお聞かせすることはできるが、たまには無いものを求められることもあることはある。そういう場合はYouTubeの音声をブルートゥースで飛ばして…ということになる。映像を映さなくても済む場合が大半だ。やはりYouTube様は有り難い。一方でブルートゥースが受けられるジェネーヴァのスピーカーも本当に有り難い。小さな箱の割には、少々ボリュームを上げても音が割れるでなし、非常にクリアかつ豊かな中低音を聴かせる。むしろ大音量で流した時の方が印象がよい。Boseとは明らかに違う、ヨーロピアンな鳴りが何とも気に入っている。

 

結局のところ、お客様からの要望で一番嬉しいのは、「あのレコード、ありますか?」というやつである。普段ジャズを多く聴かれているのに、ウチにきて久しぶりに古いロックなどが聴きたくなったなどと言う時に発せられる声である。先日も、いらっしゃると必ずジャズに切り替え、ジャズのお話ばかりをしていたお客様から「サンタナなんてありますか?」というお声がかかり、非常に嬉しかった。最低限のものしか持ち込んでいなかったので、ライヴ・イン・ジャパンの「ロータス」と「キャラバンサライ」だけが手許にあったので、「今度持ってきておきます」というお約束をした次第である。

 

もちろん自宅には全て揃っている。とにかく状態のいいアナログ盤で一通りは揃っている。個人コレクションがベースということは、そうならざるを得ない。ゆっくり時間をかけて揃えないと、主だったミュージシャンのコンプリート・コレクションはなかなか完成しない。自分の場合、CDに切り替わった後も「レコードの方が好きな音だ」「ジャケットの魅力は圧倒的にレコードの勝ち」と思っていたので、ヒマなときはデータベースをつくり、ディスコグラフィ本と照らし合わせながら、中古レコード屋を巡っていたのである。もちろんお金をかければ今でもいいコレクションを組みことは可能であろう。それでも、じっくりと状態のいいもので集めていくことは、想像を絶するほど時間と労力を要するものなのである。

 

実は先般もそんなことを痛切に味わうことになった。お店の7インチはお譲りしているが、LPレコードはどうしてもと言う場合のみにしている。先般イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」が人生のアンセムのようなお客様がご来店され、如何に好きかということを語られていた。ご自分のレコードを手放してしまったところ、なかなか手に入らないとおっしゃるので、「国内盤の帯無しですけど、お譲りしますよ」ということになり、えらく喜んでいただけた。ほとんどは1枚しかないが、好きな盤や人気のある盤は2枚3枚と保有しているものもあるのだ。「ホテル・カリフォルニア」も大好きな盤で、自宅にはあと2枚あることが分かっていたからである。1枚は米国盤のオリジナル盤なので門外不出のお宝だが、もう一枚はスレの目立つ米国盤だった。ところがその様子を見ていたスタッフが「私も欲しい」ということになったので、「スレの目立つものでもよければ…」ということになり、店舗から「ホテル・カリフォルニア」が無くなってしまったのである。

 

これは不味いなと思い、行き着けの中古レコード店を何軒か回ったのだが、こういうときに限って手に入らない。7軒ほど回ったところで一旦諦め、慌てるべきでないと判断し、東陽町のダウンタウンレコードの店主に事情を話して、入荷したら譲ってもらえるよう依頼したのである。約2カ月経ってダウンタウンから譲り受けるかたちで入手することができ、ホッとしたというわけである。正直なところ、「ホテル・カリフォルニア」をなめていた。タマ数が豊富なだけに、一時期は中古レコード店であの盤がないということは考えられなかったのだが、意外にピンポイントで探すと無いものは無いのである。また人気盤であることは確かである。ご来店いただいて「手に入らない」とおっしゃっていたお客様の言うことは、実に正しかったというわけである。

 

結局そんなことを話題に、楽しい日々を送っている。これがいつまで続けられるかわかったことではないが、できることならしばらくは続けたいものだ。ようやくご近所の音楽好きの皆さんから認知され、概ねご好評いただいているのだから、「カフェがまちづくりの一端を担う」などと言わずに、「カフェが人と人を繋ぐ」というあたりで、もう少し楽しみながら、地域の皆さんのお役に立てればと考えている。

 



         
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