0041 ７インチ盤専門店、間もなく開業（2016.01.10.）

「清澄白河でカフェをやっている」ということは結構面白いことだと思うが、本来自分の興味は飲食店経営にはなく、カフェというハコを使って何ができるかという部分にある。カフェを一つのメディアに見立て、その情報発信力を利用していろいろやってみたいのである。イベント企画や起業支援なども含め、やりたいことはいろいろあるが、あまり初めから手を広げ過ぎると失敗しそうなので、まずは飲食店の基本、「美味しい」と言ってもらえることからと思い、宣伝も控えている。そもそもが５０代の起業だけに、自分自身が一から十までやるつもりもない。若い人の力を借りるとか活用するということではなく、若い人たちに活動の場を提供したいといった気持ちの方が強い。

最近はコーヒーの町のように言われるが、現代美術館ができてからはアートの町と言われた時期もある。自分のコンセプトもそんな時期に固まってきたものなので、カフェ＝コーヒー屋という捉え方をされると迷惑千万、つい「ウチはコーヒー屋じゃないんで」というようなことを言ってしまう。元々ドリップ・コーヒーはそんなに好きではない。アートの町にハコを持てば、ギャラリーや画廊は敷居が高いという若いアーティストに壁面を貸して、カフェの発信力を利用して…といった発想が根底にあるのである。しかし、いざカフェを作るとなると、差別化できる強みは何でも生かせということで、アナログ・レコードも持ち込んでしまっただけで、そもそも音楽を売りにするつもりは無かったのである。

夜な夜な音楽が好きなお客さんがやってきて、あれ聴かせて、これ聴かせて、というようなことを繰り返していると、こちらも根が嫌いではないので、ついつい音楽環境も充実したくなってしまう。オーディオはあまり詳しくないので、そこそこいい音が聴ければという程度だが、専門家のアドバイスを受けながら鳴らし続けた結果、最近はいい音だと言ってもらえることも多くなってきた。あまりカネはかけていないが、ＪＢＬは気持ちのいい中低音を響かせている。古いロック中心の選曲が、実に似合っている鳴りだと思っている。

当初はＤＪイベントもできればと思っていたが、上の階に住んでいる人たちもおり、あまり夜遅くに大きな音も出せないので、ターンテーブルは１台にしている。ホーム・オーディオのスタイルだ。たまたまお客さんのリクエストが７インチ・シングルしかないものに集中したことがあり、久々に７インチを集中的に聴いたことで見直すことになり、７インチも持ち込むことにした。ＣＤに切り替わった頃に買い集めたものが多く、それでも普段聴くわけではないので、２０年以上も買ってきた店の袋に入ったまま仕舞い込んであったものも多かった。昨今の７インチ・ブームと相俟ってということなのか、７インチ盤はないかという問合せを受けたり譲ってあげたりしながら、次から次へと持ち込み、ようやくＡＢＣ順に並べるところまできた。昨年末のオーディオ・イベントが丁度いいタイミングだったので、そこに向けて整理したのである。

昨年の夏頃から、売ってくれということを言われる機会が増え、せっかくなので古物商の免許も申請し、本格的に売ることにした。ＬＰも何枚か売ってしまったが、数は多くない。むしろ７インチ・シングルの方が人気はあるので、まずは７インチ・シングル専門店とすることにした。枚数は今現在で８００枚程度、それほど多くはない。様子を見て、仕入れのことも考えないといけない。結局のところ、ＣＤに切り替わった８０年代後半から９０年代前半に投げ売りされていたもののうち、状態のいいものやレアなものをお安く買い集めた個人コレクションがベースである。比較的に状態のいいものが多く、また国内盤が多いことも特徴と言えるだろう。９５％以上はスリーヴがちゃんとある国内盤である。懐かしいと騒ぐ方もいれば、こんなジャケットだったとは知らなかったと驚かれる方も多い。単に記憶とリンクした音楽を懐かしむ以上に、いろいろ楽しめる要素があると考えている。

自分は子供の頃からＬＰに拘って買い集めた人間なので、７インチ盤にさほど明るくない。それでも、スリーヴを眺めているだけで楽しくなってしまうものの何と多いことか。ボストンのギター型宇宙船のイラストも、ＬＰのジャケット以外一般的ではないし、他にもＬＰのジャケット・アートの別パターンのようなものも多く、なかなか楽しいのである。また、ビリー・ジョエルはロックン・ローラーとして売りたかったのか、シングル盤のジャケットはＬＰ以上にロックン・ロールしているものが多く、今見ると少々ベタで何とも微笑ましい。意外な曲がシングル・カットされていたり（当然ながら、全然売れていない）、邦題が笑えたり、何とも楽しい世界である。

そんなわけで、カフェ開業から間もなく一年、ショップ・イン・ショップの７インチ盤専門店「４５rpm.tokyo」、間もなく開業である。