0050 高額盤放出(2016.03.13.

清澄白河のカフェ、ジンジャー・ドット・トーキョーの店内に7インチ盤専門店45rpm.tokyoをオープンさせて早や一月、文字通りあっと言う間の一カ月だった。カフェの売上も順調に伸びており、忙しくなっていることは事実だ。ただそれ以上に、イベントを始めたり、年度末が近いからか、やたらとパーティのご予約もいただいており、あっという間に一月が過ぎるということにも理由がある。実際に土日もなく働き、事実として睡眠時間も削っている状況だ。夜や週末に入れるスタッフの募集もかけているのだが、体力的にあまり自信がない昨今、早く体制を強化しないと命取りになりそうでいけない。

 

その45rpm.tokyoでは、現在月水金に8枚ずつ、週24枚の新着盤を放出している。買取りをやっているわけではないので、このペースでは早晩底をついてしまう。たまには買い付けにも行くが、それとて状態のいいものしか買わないようにしているので、なかなか厳しいものがある。ウェブサイトで新着盤の情報などを発信することは、昔からやっている音楽情報サイトの更新と何ら変わることはない作業だが、お客様目線で、購入の根拠となるような情報を伝えていきたいと考えている。

 

すっかりインターネット社会になってしまったことは十分承知しているが、リアル店舗をもつことはやはり面白い。お客様との会話でも、高額の値札が付けられている理由について語ることができないとお話にならないので、ネット通販などとは比較にならないほど売る側も知識を要求される。今現在は1400枚ほどが店頭に並んでいるが、これ以上枚数を増やすと、これまた浅く広くの知識で勝負しなければならなくなる。もともと浅く広くといった好みの人間なので、何とかなりそうな気もしないではないが、増やし過ぎないようにしないといけない。

 

先週は、超高額盤を続けて放出することにしたのでご紹介しておこう。まずはレッド・ツェッペリンのギタリスト、ジミー・ペイジのソロ作品である。「狼よさらば」の続編で「Death Wish」シリーズの2作目となる「ロサンゼルス」のサントラからのシングルカット、「殺ったのは誰だ Who’s To Blame」である。アルバムではコロシアムやアトミック・ルースターでも有名なクリス・ファーロウの渋いヴォーカルをフィーチャーしているが、この7インチ盤シングルではアルバム未収録のインスト・ヴァージョンが使われている。レッド・ツェッペリン解散後、ジミー・ペイジが最初にリリースしたもので、時代的なものか、ギター・シンセを大々的にフィーチャーしている。映画はチャールズ・ブロンソン主演の2流アクションといったところだが、このサントラはジミー・ペイジがプロデュースをはじめ、全面的に手がけている珍しくも素晴らしい出来の一枚なのである。

 

しかもメンツが面白い。ベースはパイロットやアラン・パーソンズ・プロジェクトの活動で有名なデヴィッド・ペイトン、ドラムスはフェアポート・コンヴェンションのデイヴ・マタックスである。どちらも名うてのセッション・ミュージシャンととらえることも可能だが、実に息の合ったプレイを聞かせており、アルバムの統一感も素晴らしい。数曲でフィーチャーされているピアノはゴードン・エドワーズだが、彼が歌っている曲もある。デヴィッド・ペイトンは、「January」や「Magic」などパイロットのヒット曲も書いており、コンポーザーとしても侮れないが、この盤では作曲は全てジミー・ペイジである。レア度に加えて語れることが山積の貴重な一枚なのである。

 

同日、ボストンのセカンド・アルバム「ドント・ルック・バック」からのセカンド・シングル「遙かなる想い A Man I’ll Never Be」も放出している。大ヒットしたタイトル・チューンに続けてリリースされたバラードで地味な存在になってしまったが、自分にとってはこの2枚目の中でも最も好きな曲で、それなりの思い入れがあるものである。世間の相場からするとさほど価値のある盤ではないかもしれないが、自分の考えでは、この辺りのバンドはアルバムで聴くものという価値観が定着しており、シングル盤はそれだけでレアと感じている。実は有名バンドのこういった大ヒット曲ではないシングルが、最も手に入り難いと感じている。

 

先週は、ここらで止めておけばよかったのだが、他に手頃なものが思いつかず、超高額の値札をつけた盤をもう一枚放出した。ツトム・ヤマシタの「虹の風 Crossing The Line」である。1970年代に話題になったプロジェクト「GO」のシングル盤である。こんなものが存在するだけで驚きの一枚である。スペイシーな素晴らしい音が聴けるレコードだが、如何せん、ヴォーカルとキーボードはスティーヴ・ウィンウッドである。ベースもトラフィックのロスコー・ジー、シンセはタンジェリン・ドリームやアシュラ・テンペルのクラウス・シュルツ、ドラムスはサンタナのマイケル・シュリーヴである。ギターは当時リターン・トゥ・フォーエヴァーで人気だったアル・ディ・メオラがアルバムには参加しており、話題をさらっていたが、この曲のギターはエイジアの3代目ギタリスト、グレン・ヒューズと組んだヒューズ/スロールでも有名なパット・スロールである。もうメンツだけでも涎ものだが、曲も素晴らしくメロディアスで、個人的には、スティーヴ・ウィンウッドのヴォーカルものでも最上位にランクするものと考えている。

 

さて、問題はお値段だ。商売をする気があるのかと言われそうだが、「どうだ、手が出ないだろう」という値札が付けてある。半分趣味的な要素も入っている45rpm.tokyo、聴いて、語って、楽しむためにやっているのである。ご理解いただければと思う。

 



         
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