0051 高額盤が生まれる理由(2016.03.20.

高額盤を立て続けに放出していることもあり、先週来、どういった盤が高額になり得るかという話題で、何人かのお客さまと意見を交わした。45rpm.tokyoの値付けは、原則的に店主の思い入れの強さに比例する。好きなものは高いし、そうでないものは安い。元々が個人のコレクションであり、好きな曲の盤しかなかったはずなので、高額傾向にある。加えて、カフェの集客のために始めたという意味合いもあり、あまりレコードを売って商売をしようと考えていないので、売りたくないものには法外に高額の値札をつけている。ただ市場調査はマメに行っているので、相場はある程度知れている。人気はあるが自分はこだわりがないという曲の盤は、思い切り安くなっている。お客様から「この値段で売ってしまいますか?」と何度訊かれたことか。ゼロが一つ足りないような盤も、数枚仕込んであるのである。

 

それでも、レアなものは相場などとは別世界の話になるので、値付けも大胆になる。足繁くレコード屋に通い続けてきたことで養われたレアか否かの感覚は、ヘタな資料よりも信用できる。例えば、イーグルスの「ふたりだけのクリスマス Please Come Home For Christmas」はアルバム未収録とうこともあって高めの価格で売られているが、この盤は意外に玉数が多く、さほどレアとは思えない。リリース当時からアルバム未収録ということが謳われていて、仕方なしに7インチ・シングルを買った方も多いとなれば、十分に納得がいく。ただしこのシングル、2種類存在する。輸入盤仕様と書かれた黒いスリーヴのものと、プールサイドに寝そべっているメンバーの写真が使われた白っぽいものだ。黒いものは原盤が届いて国内でプレスするまでの繋ぎと思われるが、当然ながらこちらはレアである。白いものはいくらでも手に入ると思っていいようだ。

 

イーグルスと言えば大名盤「ホテル・カリフォルニア」が頭に浮かぶのは避けられない。「ホテル・カリフォルニア」のシングル盤も、意外なほど玉数が多いように思う。この盤からの第1弾シングル「ニュー・キッド・イン・タウン」はアルバムと同時リリース(正式にはアルバムの前日に発売されたことになっている)で、全米ナンバー・ワンになっていることもあり、またジョー・ウォルシュの正式加入後初のリリースでもあり、このアルバムは最初から売れていた。それが3月ほど経ってからタイトル・チューンがリリースされ、やはり大ヒットしたことから、ロングラン・ヒットの様相を呈してくる。何曲ものシングルを生み出す大名盤は市場に大量に出回るが、セカンド・シングル、サード・シングルなどのシングル盤は意外に玉数が少ないのが通常で、マイケル・ジャクソンのアルバム「スリラー」からの第5弾シングルであるタイトル・チューンが猛烈にレアなのは、この辺の事情からだろう。それが「ホテル・カリフォルニア」の場合、不思議なことにシングル盤が大量に出回っているのである。これはあくまでも個人的な市場調査の結果得られた感覚である。

 

その一方で、ほとんど目にしないのが「ニュー・キッド・イン・タウン」のシングル盤でる。ホール&オーツがモデルだと後にグレン・フライが語っているそうだが、アルバムと同じ写真が使われたスリーヴは面白味に欠ける。全米ナンバー・ワンの大ヒット曲なのに、ほとんど目にしない。気になるのは曲名にミス・スペルがあることだ。「NEW」が「KEW」になっているので非常に判り易いが、回収されたという記憶はない。どういう事情か正確には分からないが、この盤には高額の値札を付けざるを得ない。

 

面白いのは、日本独自のシングルが結構多く存在することだ。B面曲をA面に持ってくるという荒業は結構見かけるし、「来日記念盤」というものが多く存在するので、この辺は探すこと自体楽しい作業となる。タイミングよくシングルがリリースされている場合は「来日記念盤」の文字が刷り込まれるだけなので珍しくもないが、ロック・ミュージシャンなどの場合は意外に面白い「来日記念盤」があるのだ。例えばシカゴの「俺達のアメリカ State Of The Union」は1972年6月の2度目の来日記念盤であり、日本独自のシングルである。彼らは1970年の初来日のときにも、「ぼくらに微笑みを Make Me Smile」を日本独自のスタイル(カップリング)でリリースしてくれている。こちらは、A面がライブ・レコーディング、B面がスタジオ・レコーディングとなっている珍盤である。また彼らは71年には「クエスチョンズ67/68」の日本語盤もリリースしてくれており、かなりの日本好きであったことがうかがわれる。ちなみにこの日本語盤、不思議なほど玉数が多く、珍盤でも何でもない。

 

とにかく、ロック・ミュージシャンの場合、マメにシングル・カットしてくれればいいが、コンセプト・アルバムを作る連中などは、シングル・カットにさほど熱心ではない。そういったロック・ミュージシャンの、タイアップやら様々な理由で生み出されたシングル盤は、何が何でも貴重なのである。LPでは当たり前に聴ける曲が、シングルでは高額盤に化けるのである。LPとシングルは全く別の価値観が存在するということである。そういえば、ピンク・フロイドの「吹けよ風、呼べよ嵐 One Of These Days」もアブドーラ・ザ・ブッチャーのおかげで、日本ではシングル・カットされているではないか。しかも何種類もスリーヴが存在する。なかなか面白いことをしてくれる。

 












         
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