0052 「羨望1974」準備中(R.I.P.キース・エマーソン)(2016.03.27.

エマーソン・レイク&パーマーの音楽は随分聴いた。最初が「展覧会の絵」だったので、静かな曲の尽くしいメロディをもったグループという印象が植え付けられた。しかし、あそこまでうるさいロックがギターレスでできることが知れるにつれ、その印象はどんどん変わっていった。それでも、「エルサレム」や「ラッキー・マン」など、彼等が演る静かな曲は本当に好きだ。

 

またプログレッシヴ・ロックにありがちな長大曲も、いかにも70年代的で好きなものが多かった。「ELP四部作 Works Volume1」のサイドDの2曲、つまり「庶民のファンファーレ Fanfare For The Common Man」と「海賊 Pirates」の2曲は、マイ・フェイヴァリット100には確実に入る好きな曲だ。壮大なアレンジや、グレッグ・レイクの腰の据わったベースと手数の多いカール・パーマーのドラムスが心地よい。いまだによく聴く曲である。この辺を轟音で鳴らしているカフェは、稀少かもしれない。

 

74年の夏にNHKのヤング・ミュージック・ショーで「展覧会の絵」のライヴ映像を放映したときには、文字通りかじりついて観たものだ。アルバムを購入してから少し時間が経っていたので、曲が完全に頭に入っており、思い切り演奏に集中できたことが妙に印象に残っている。キース・エマーソンの大仰な演出を感じさせるキーボード・プレイは、中学生の自分にとって面白くはあった。一方で、もっと演奏に集中しているのかと想像していただけに、意外であると同時に、余計なことをしない方がいいのになと覚めた印象も持ったものだ。

 

今年は年初からデヴィッド・ボウイやグレン・グライなど、有名ミュージシャンの訃報が続いていただけに、キース・エマーソンの訃報はさほど意外には思わなかった。それでもニュースの伝わり方がこれまでと全く違っていたのは、やはり自殺だということが原因なのだろうか。コンスタンスに活動を続けていた上に、4月にはビルボードライブでの来日公演が決まっていただけに、自殺であるという一事のみは意外だった。自分を音楽好きにしてくれた一人であることは間違いないだけに残念である。R.I.P.

 

自分がカフェでやっている大人のための音楽イベントの次回のテーマは「羨望1974」という。1974年の年表などとともに、当時のヒット曲を聴きながら時代背景などを語るものである。1974年は、クイーンの「キラー・クイーン」やバッド・カンパニーの「キャント・ゲット・イナッフ」、グランド・ファンクの「ロコモーション」などがヒットしたロック色の濃い年である。その一方で「スイート・ホーム・アラバマ」が思わぬヒットとなったレイナード・スキナードに代表されるサザン・ロックの台頭や、エリック・クラプトンの「461オーシャン・ブールバード」の大ヒットに伴い、レゲエ・ミュージックの世界的ブレイクなどもあり、音楽の地域性というものに意識がいった年でもあった。コモドアーズやラベルなど、ブラック・ミュージックの実力派がデビューしてきたことも忘れられない。英米の違いすら理解していなかった中学生の自分にとって、世界の広さを思い知らされた年でもある。

 

1974年という年は、フィリピンのルバング島で小野田少尉が発見され、まだ戦争が終わっていなかった人がいたことに驚愕しつつも、江東区豊洲にはセブン・イレブンの国内第1号店が開店し、人々の生活は大きく変わっていった頃だ。ソルジェニーツィンがソ連から追放され、ウォーターゲート事件が起きて海外のニュースは賑やかだった。一方でスポーツ界では横綱琴桜と北の富士が引退し、北の湖が21歳の若さで横綱になった。野球では巨人の長嶋が引退し、「我が巨人軍は永久に不滅です」と発し、甲子園準優勝の池田高校さわやかイレブンが人気になった。そしてボクシングではガッツ石松が世界王者になった懐かしい年である。

 

さて、イベントで語ることはネタが溢れている状況だ。3時間全部トークでもいける。しかしそれではお客様はつまらないことだろう。お聴かせする曲を30曲ほど選ばなければいけない。エルトン・ジョンの「ベニー&ジェッツ」やエリック・クラプトンの「アイ・ショット・ザ・シェリフ」、ジョン・レノンの「真夜中を突っ走れ」あたりは外せない。またカンフー映画の大ブームをもたらしたブルース・リー主演の「吼えろ!ドラゴン」の主題歌、カール・ダグラスの「カンフー・ファイティング」も忘れてはならない。中学校ではモップの柄を切って、お手製ヌンチャクを振り回し、痛いおもいをした男子が少なからずいたはずだ。またちょっと不良っ気のある連中は、コモドアーズの「マシンガン」で踊ることに夢中になっていた。いろいろなことが変わりつつある、楽しい時代だった。

 

その後の携帯電話やインターネットの登場など、もっともっと大きな変化を通過してきた身にとっては、さほど大きな変化とは思えないと言われるかもしれないが、個人的には戦後という時代が終わり、新しい時代が始まりつつあることに期待感が持てる時期だったと思っている。4月9日(土)、午後1時から3時間、語り過ぎないように気をつけます。ぜひぜひお越しあれ。

 










         
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