0055 レコード・ストア・デイ2016 2016.04.16.

今年もレコード・ストア・デイ(RSD)がやってきた。ここ数年随分楽しませてもらったが、昨年あたりからあまり欲しいと思わせる商品が見当たらなくなり、個人的には盛り上がりに欠ける状況が続いている。それでも、好きなミュージシャンの新製品情報はチェックしているので、アナログ盤がリリースされて購入してみたらRSD関連商品だったということは何度かあった。リリースのタイミングさえ合えば、何でも関連商品と言っておけばいいような気もする。何ら問題はない。

 

また今年に関して言えば、思い切り個人的なことだが、如何せん買う側から売る側になってしまったので、当然ながらアナログ・レコードの情報と接する態度そのものが違ってしまっている。売り物として仕入れるべきかという目線も入ってしまうので、当然ながら価格に関してはシビアにならざるを得ない。昨年のRSDの時点では予測できなかったことでもあるが、アナログ・レコード人気は確かに盛り上がっているし、予想外に売れるのである。いまさら普通のレコ屋をやる気にはならなかったので、7インチ盤専門店にしてしまったこともあり、これまではアナログ全般に目を向けていたが、やはり7インチ盤が気になっていけない。今回のRSD関連商品では、エミ・マイヤーの「ジャマイカ・ソング」と伊藤銀次の「風になれるなら」など、数枚が目に留まった。まさか7インチ盤の新譜がリリースされる時代が戻ってくるとは、本当に思いもしなかった。

 

RSD関連イベントはやらないのかとも言われたが、今回はレコや屋をオープンしてまだ2月なので、一応見送ることにした。だいいち、自分自身が土日は店舗にいないので、お話にならない。もう少し体調がよくて、体力的に余裕があるなら考えなくもないが、トークイベントなどでずっと休みも潰しているため、久々の貴重な休みなのである。申し訳ないが今回はなしである。それでも、7インチ盤専門店「45rpm.tokyo」では300円ボックスを復活させ、この週末はさらにそれらを100円で販売している。また店主のみならずスタッフにお声がけいただければ、価格交渉はできるようにしてある。ぜひご利用ください。

 

一方で面白い話が舞い込んできた。Arbanというジャズを中心としたウェブ・マガジン上で、RSD関連の「レコードで聴きたい3枚」という企画に参加させていただけたのだ。有名DJさんなどに混じって、素人くさいカフェ・レコ屋店主が思い切り浮いているが、宣伝にはなるだろうし、有り難いことこの上ない。如何せん選盤の基準が違うのだろう、また若い人に媚びを売ってもしょうがない。自分の好きな7インチ盤3枚を紹介したが、意図的に思い切りベタな路線で行ってみた。ステッペンウルフ「ワイルドでいこう!」、ジェイムス・テーラー「きみの友だち」、キャット・スティーヴンス「人生はさすらい」である。あくまでも「好きな曲」という目線で選んだ結果である。音響的にオススメしたい3枚を選ぶという選択肢もあったし、LP、10インチ、7インチから1枚ずつ選ぶというのも面白いなとは思ったが、とりあえず7インチ盤専門店の店主でもある現在、これでよかったのだろう。

Arbanの記事はこちら

 

こうやってアナログ・レコードが盛り上がってくれることは本当に有り難い。アナログ関連機器も低価格のものは以前から充実してきたが、1万円前後のものでもUSBポートがあったりする。音質がどれほどのものかというのは分からないが、アナログ入門の敷居は非常に低くなっている。その一方で本当に嬉しくないのは、テクニクスのターンテーブルSL-1200の復活である。元は数万円で買えたものが33万円もするのである。それも完売したらしいが、こういうことをされると、アナログに挑戦することを諦めてしまう若い人が出てくるのではないか。本当にカンベンだ。

 

夜な夜な音楽好きが集まってくる清澄白河のカフェGINGER.TOKYOでは、実にタイムレスな話題が飛び交っている。70年代80年代の音楽が中心ではあるが、古いジャズもあれば、ロバート・グラスパーやノラ・ジョーンズといった最近のブルーノートのミュージシャンのレコードもかなりの頻度で登場する。ジャズ好きであれ、クラシック好きであれ、ロック好きであれ、一様にアナログの音がいいということを口にする。それでも自宅でまたアナログに再挑戦するのは骨が折れるということも共通認識のようだ。レコード再生は確かに面倒だ。本当にいい音で鳴らそうと思えば、それこそお金がいくらあっても足りないかもしれない。数万円でそこそこの音も出せるが、それはそれである程度の技術が必要になる。ジャケット・アートも含め、実に魅力的なアナログ・レコードの世界は奥が深い。単に音楽を聴くという行為は、ウェブで簡単に済ませられることでもある。それをあえてアナログで鳴らすことの意義はいくら語ってもキリがないが、何はともあれ、いい音で鳴ったら楽しいのである。その楽しさをシェアしたいのである。こんなご時世、RSDも楽しむために参加したいものである。

 



         
 Links : GINGER.TOKYO  saramawashi.com  Facebook  
 Mail to :  takayama@saramawashi.com     
 Sorry, it's Japanese Sight & All Rights Reserved.