0052 「知足1975」準備中(2016.05.08.

毎月第2土曜日の午後とその10日後の火曜日夜に自分が話すトーク・イヴェントを開催している。テーマ年を決めて年表をはじめとしたかなり詳細な資料をお配りし、その年のヒット曲やその年にリリースされた曲をかけまくるといった内容である。話し過ぎるとかけられる曲が少なくなるので、トークは最小限に抑える必要がある。簡潔かつ的確にその時代の空気感を蘇らせるような内容を語るのは、それなりに準備が必要だ。資料も10ページを超えるボリュームで、かなり充実している。入力には数日かかる。当時のことを知らなければ理解できないタイトルの曲があったり、妙な言い回しのものもある。正確な内容であることは最低限必要だが、年表などは詰め込み過ぎると見づらくなるので、適当なボリュームというものを見極めないといけない。かなりシンドイ作業ではあるが、元来好きなことなので楽しんでやっている。

 

5月は1975年、昭和50年である。戦後30年の節目の年、サイゴン陥落の年、マイクロソフトが設立された年であり、その一方で最後の蒸気機関車の営業運転が行われた年でもある。音楽的には大ヒットがなく、ナンバー1ヒットが多いという特色を持った時期である。確かに前年あたりからナンバー1が毎週のように入れ替わっていた記憶がある。数字的に行けば、例えば名盤が大量生産された1969年は15曲のナンバー1ヒットがある。同様に1980年から83年にかけても15から16曲で推移する。1年が52週と考えると、これらの年が少な過ぎるような気もするが、1974年と1975年は35曲ずつあるのである。いかに小粒かが知れる。年間チャートでもナンバー1になったキャプテン&テニールの「愛ある限り Love Will Keep Us Together」が4週で最長となる。エルトン・ジョンの「アイランド・ガール」やシルバー・コンベンションの「フライ・ロビン・フライ」など4曲が3週間トップに居座った。実は74年は最長が3週なので、もっと小粒とも言える。面白い傾向である。

 

1975年の年間シングル・チャートでは、1位がキャプテン&テニール、2位がグレン・キャンベルの「ラインストーン・カウボーイ」、3位がエルトン・ジョンの「フィラデルフィア・フリーダム」である。確かによく聴いた曲たちだ。一方でアルバム・チャートは面白くない。1位がエルトン・ジョンの「グレイテスト・ヒッツ」、2位がジョン・デンバーの「グレイテスト・ヒッツ」、3位がアース・ウィンド&ファイアーの「暗黒への挑戦 That’s The Way Of The World」である。よく売れたのでこんなものだろうといった印象ではある。しかし4位がジョン・デンバーの「バック・ホーム・アゲイン」、また8位がジョン・デンバーのライヴ盤なのである。エルトン・ジョンは7位に「キャプテン・ファンタスティック」を送りこんでおり、この2人で年間トップ10のうち5枚を占めてしまうのである。まったくもって、つまらない。その他にはフィービ・スノウの「ブルースの妖精 Phoebe Snow」が5位、6位はリンダ・ロンシュタットの「悪いあなた Heart Like A Wheel」、9位がアヴェレイジ・ホワイト・バンドの同名デビュー盤、10位はイーグルスの「オン・ザ・ボーダー」といった名盤がランク・インしている。

 

小粒なヒット曲が多いこの年に関しては、個人的に面白い経験をしている。自分は2002年5月から下町音楽夜話を書き続け、既に700本を超えるが、この年にヒットしたミュージシャンのうち何人かは、グーグルで検索すると、1面で我が下町音楽夜話が出てきてしまうのである。つまり日本ではマイナーということも言えるのだが、如何せんアメリカの年間チャートで100位までに入っている曲なりアルバムをリリースしているわけで、少々意外でもある。ものは、年間シングル・チャートで38位に入っているハリー・チェイピン、曲は「ゆりかごの猫」が代表例だ。何せ1面のトップに出てくる。その他にも、シングル・チャートで95位の「アイム・オン・ファイアー」のドワイト・トゥイリー・バンド、97位の「サード・レイト・ロマンス」のアメイジング・リズム・エイセズは、現時点でも1面で表示される。

 

この他にも、1975年には、自分は好きなのに日本では人気のないミュージシャンのヒット曲が多く存在する。オザーク・マウンテン・デアデヴィルズの「ジャッキー・ブルー」、シュガーローフの「ドント・コール・アス Don’t Call Us, We’ll Call You」、マイク・ポストの「ロックフォードの事件メモ」、ジェスロ・タルの「バングル・イン・ザ・ジャングル」といったあたりだ。また10ccの「アイム・ノット・イン・ラブ」、エースの「ハウ・ロング」、マイケル・マーフィーの「ワイルドファイヤー」、オーリアンズの「ダンス・ウィズ・ミー」などといった忘れられない静かなヒット曲も多い。ドゥービー・ブラザーズも「ブラック・ウォーター」がヒットした年だけに、ハードロックにハマりかけていた15歳の自分に抑制を促す作用をもった曲が多い年とも言えるのだ。さてさて、好きな曲が多い年のイベントを開催するということは、何をかけるか大いに迷うという、楽しい苦しみ、苦しい楽しみが待っているのである。ぜひお越しあれ。

 







         
 Links : GINGER.TOKYO  saramawashi.com  Facebook  
 Mail to :  takayama@saramawashi.com     
 Sorry, it's Japanese Sight & All Rights Reserved.