0066 音楽と政治と周年行事(2016.07.03.

まもなく参院選ということもあろうが、SNS上ではやたらと政治的な発言ばかりが目について鬱陶しいこと極まりない。特に最近はフジ・ロックの政治性みたいなことで意見が戦わされていたが、何だかどれも共感するほどの意見とも思えず、辟易とするばかりであった。ロックと政治的なメッセージは昔から結びつきは強いだろうし、他の音楽、例えばレゲエだって、フォークだって、結構メッセージ性は強いではないか。ラヴソングばかりではないことは、皆も承知のはずだ。

 

もともと反体制音楽だったロックも、70年代後半にはロック・ミュージックそのものが巨大産業と化し、パンクやニュー・ウェーブから揶揄されるものとなっていた。歴史は繰り返されると言わずとも、音楽をメッセージの発信に使う連中は昔からいたし、それをどう受け止めるかも、昔から様々だったではないか。むしろそういうスタンスすらも笑いのネタにしてしまったパンクの方が熱いという見方もできる。解釈を誤られてヘコンでいたブルース・スプリングスティーンは、誰もが認める強い愛国心を歌にしていた。大統領選挙のたび、彼を含め大勢のミュージシャンが支持する政党の集会などで歌う姿が報道されているではないか。音楽と政治的なメッセージは切り離せないとは言わないが、結びつきはある、ということでいいではないか。まったく、どうでもいい話題だ。

 

1966年6月30日、ザ・ビートルズの最初で最後の日本武道館公演が行われた。その50年後の記念すべき日、やはり聴かない手はないと思い、「ロックン・ロール・ミュージック」など、店で数枚をかけてみた。猛烈な数の警官隊に守られながら開催されたロック・コンサートというものがどれだけ先進的であったか、当時のニュース映像などから感じられる熱気と興奮は凄まじいものがある。旧体制の人々がどれだけ恐れたことなのか、武道館で開催するということに反対した右寄りの方たちの気持ちも分からないではない。しかし、その後の「ライヴ・アット・武道館」という名の名盤が多く生み出されたことを考えれば、ザ・ビートルズに感謝すべきだろう。誰もやらないことを最初にやった人たちを尊敬する。

 

クラシックでもない限り、ミュージシャンの生誕何周年というイベントはあまり目にしない。むしろ命日にちなんで、故人を偲びつつ特集番組で音楽を流すようなケースは多い。自分も早くから命日データベースを作り、命日のミュージシャンの音楽に敬意を表しながら聴くということを続けている。実はかれこれ20年近くやっているのである。それにはもちろん理由があって、20年ほど前にデータ集的な本を手に入れたことが直接的なトリガーにはなっている。またWindows95がリリースされたときに、レコードのデータベースが作りたくて初めてPCを購入したもので、ついでに命日データベースは練習的につくったのであった。

 

後に専用ソフトウェアを使うことは止めて、エクセル等の表計算ソフトで管理するようになってしまったが、命日データベースは今でも毎年更新されている。何度も作り直しているのだが、基本的なデータは上書きを重ねながら、今も使っていることになる。結局年を外して月日順に並べてあるだけとも言うが、その季節になるとしっかり思い出すし、店ではBGMイベントのテーマを決める重要な要素となっている。故人を偲びながら、最低でも年に1回はそのミュージシャンの音源にも触れることになるので、個人的には案外重要なイベントになっているのである。例えば先週の水曜日はローウェル・ジョージの命日だった。1979年6月29日に34歳の若さでドラッグの過剰摂取で亡くなっている。彼がリーダーだったバンド、リトル・フィートのアルバムはどれも好きだが、普段から聴くというものではない。やはり毎年6月末が近づいてくると、引っ張り出してきて聴くのである。毎度ブルース曲に感嘆し、骨太なスライド・ギターに惜しいという思いを強くする。

 

ザ・ビートルズの来日記念50周年の翌日は、ウルフマン・ジャックの命日だった。1995年7月1日、心臓病で亡くなっている。1970年代を通して、FEN(現AFN)で放送された「ウルフマン・ジャック・ショー」は、チャーリー・ツナやメアリー・ターナーの番組とともに、自分にとって貴重な情報源だった。多くのポップ・ミュージックを彼の番組で知り、好きになった。2016年の7月1日は蒸し暑い金曜日だったが、夕方からは懐かしい「アメリカン・グラフィティ」のサントラ盤をかけて気分が少し晴れた。この映画にはウルフマン・ジャックが本人役で出演しており、サントラ盤には彼のしゃべりも収録されているからだ。また、ゲス・フーのベスト盤も聴いてみた。こちらは「クラップ・フォー・ザ・ウルフマン」という曲がヒットしており、ここでもウルフマン・ジャックの声が聴かれる。懐かしい。何はともあれ、懐かしい。我が愛すべき70年代、政治のことなどよく分からず、フェンスの向こうのアメリカ、強くて大きなアメリカに憧れて、毎夜ラジオでFENを聴くことが何よりの楽しみだったのだ。歌詞の意味など全く分からないままでも、素敵なメロディに憧れ、そのリズムに魅了されていた。メッセージなんぞ二の次、自分にとってはメロディこそが音楽なのである。誰かに文句を言われる筋合いでもないだろう。

 



         
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