0072 豪華ゲスト盤(2016.08.13.

猛暑というのか、酷暑というのか、とにかく暑い。事務屋だった3年前までは、真夏の昼間に外を歩くという経験がほとんど無いに近かった。会社を立ち上げ、さらにカフェを始めた昨今、当然のように昼間も外を歩きまわる。走り回る日もあることになる。肉体労働だからと言って笑っていられるうちはよいが、循環器系に不具合を抱えていることを忘れているわけではない。忘れるどころか、無理をすると途端に具合が悪くなる。お盆は1週間ほど短縮営業にして、自分自身を労わることにした。最近、またまた自宅で探しているレコードが見つけられないことが多くなっており、涼しい部屋の中で少し整理をしたいという、しょうもない事情もあるのだ。

 

なにはともあれ、「聴いてないなあ、これ」という盤が次から次へと出てくる。一度聴いただけという盤が多いので、皆状態はいい。しかも、好きなミュージシャンの参加している盤は徹底的に集める性質なので、記憶が曖昧になっている盤のクレジットをチェックし始めると、遅々として作業が進まなくなる。CDだと、いちいちケースを開けて確認するところまでは面倒だが、アナログ・レコードだと、ジャケットをひっくり返すだけで、ほとんどの盤は参加ミュージシャン等の情報が確認できることが、今となっては実に有り難い。豪華ゲストが大勢参加しているような盤は特に楽しい。つい時間が過ぎてしまう。「豪華ゲスト」などと謳っている盤にロクなものはないと思う反面、好きなミュージシャンが参加している場合は、どこでその個性が確認できるかという別の楽しみも出てくるので、あまり疎かにはできない。苦笑いしながらチェックしているような場面を想像していただければと思う。少し紹介してみよう。

 

まずはジ・アール・スクラッグス・レヴューの「アニヴァーサリー・スペシャル・ヴォリューム・ワン」という盤だ。ブルーグラスの大御所、アール・スクラッグスのデビュー25周年を記念して作られた1975年のアルバムである。トップで紹介されているのはジョーン・バエズ、次がボニー・ブラムレットという女性2人だが、ここからが面白い。ジョニー・キャッシュやチャーリー・ダニエルズあたりに混じって、レナード・コーエン、ランブリン・ジャック・エリオットあたりの名前が出てくるのはさすがヴェテランだ。75年の時点で、ビリー・ジョエルが出てくるのも面白いだろう。ピアノマンでブレークした直後だ。また、ダン・フォーゲルバーグ、ケニー・ロギンス、ジム・メッシーナ、ロジャー・マッギン、マイケル・マーフィー、ドン・ニックス!!、アルヴィン・リーなどなど、いかにもな面々に加え、ポインター・シスターズまで登場するから堪らない。

 

ただし言っておくが、特別面白いアルバムではない。自分がズブズブにブルーグラスにハマっているような人間ならまだしも、ロック寄りの耳を持った日本人だ。息子たちと楽し気にやっているあたりは微笑ましいし、ステージを想像しながら楽しむ分には十分以上だが、全体の印象は散漫と言うか、薄い。唯一楽しめるのが、ボニー・ブラムレットやポインター・シスターズが歌い、ビリー・ジョエルがピアノを弾く、アメイジング・リズム・エイセスのカヴァー「サード・レイト・ロマンス」だ。これは貴重な音源と言うべきだろう。

 

もう一枚、ミュージシャンズ・ミュージシャンと言っても過言ではない、テクストーンズのアルバムも、クレジットが気になっていけないアルバムだ。後に元ローリング・ストーンズのミック・テイラーと合流して、なかなか渋いブルース・ロックを聴かせた女性ギタリスト、カーラ・オルソンのグループだ。ドワイト・トゥイリー・バンドを脱退したフィル・セイモアをフィーチャーして作った「ミッドナイト・ミッション」は隠れた名盤だと思っている。ここで気になるゲストは、バリー・ゴールドバーグ、ライ・クーダー、ジーン・クラークの3人である。ちょいと当たり前すぎてつまらんという気がしないでもないが、1985年の時点で、懐かしのヒーローたちが、新進気鋭の女性ギタリストを盛り上げている様は、なかなか楽しいものである。

 

ここでは紹介しきれないが、英国のプログレッシヴ・ロックなどになると、豪華ゲストのニュアンスも少し違ってくるが、やはり面白い盤は多い。デヴィッド・ギルモアあたりの音源は、ゲスト陣もバラエティに富んでおり、実に楽しめる。キリがないのでこの辺にしておくが、音楽の聴き方は人それぞれ、クレジットなどまったく見ない人も多いだろう。しかし、極東の島国で、FENなどのラジオから得られる新しい音と、雑誌などの少ない情報を必死でかき集めて聴いていた身としては、レコードのクレジットは貴重な情報源だったのである。Windows95の時代にレコードのクレジット情報をデータベース化することを始めたわけで、自分の場合は、クレジット・オタクと呼ぶべき人種かもしれないが、あらためてレコード・ジャケットを眺めていることの楽しさを再認識している昨今なのである。

 



         
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