0078 Late60sイベンント準備中(2)(2016.09.25.

10月第2土曜夜のトークイベントは「Late60s 1967-69」がテーマである。リアルタイムで聴けた時代はもう少し後からなので、慎重になって早めに準備を進めている。1960年生まれの自分にとっては、やはり70年代の方が親しみはあるのだが、遡って聴ける余裕が出てからは随分聴きあさったので、決して知らないわけではない。ビートルズ・フリークではないことが、かえって幅広く多種多様な音楽を聴く耳を育ててくれたようで、何でも受け入れられる柔軟性を持っていると感じている。新時代の音として出てくるハードロックの音が最も馴染みはあるが、ラテン・ポップもイージー・リスニングも全く拒絶反応を起こさない。

 

ただ、どうしても、サイケの度が過ぎると、笑ってしまう。時代の空気感を蘇らせるという意味では、サイケな映像を少し観ればもう十分という気がしてしまう。ミニ・スカートの大ブームを巻き起こしたツィギーの来日時の写真や、五月革命の写真なども、重要な素材だが、今回は1967年にカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを獲得したミケランジェロ・アントニオーニ監督の「欲望」あたりを題材に、その辺の考察も加えてみたいと思っている。リアルタイムで聴いてきた時代ではないことが、音だけで時代感覚を呼び戻せないという弱みには繋がるものの、演出と知識で何とか補えそうだ。当然ながら視覚にうったえるほうが、聴覚のみよりも訴求効果は大きい。楽しいことになりそうだ。

 

この時期は、映画も名作が次々と発表された時期である。アカデミー賞、ゴールデングローブ賞やカンヌ国際映画祭の受賞作品等の資料も毎度提供しているが、今回は特に受賞作品と興行収入の不一致が徹底しており、非常に面白い。さらに北米の興行収入と日本国内の配給収入のあまりの違いにも驚かされる。例えば1967年は「夜の大捜査線」が多くの賞を獲得するが、興行収入ではトップ10にすら入っていない。1968年の「オリバー!」や「冬のライオン」も同様、1969年は「真夜中のカーボーイ」や「勇気ある追跡」は両方の資料に顔を出すが、それ以外の受賞作品は、興行収入に結びついていないようだ。音楽的には、超がつくほど貴重なサントラ盤が目白押し、「2001年宇宙の旅」「卒業」「明日に向かって撃て」「イージーライダー」…、いい時代だ。

 

音楽はやはり時代を象徴する。アイアン・バタフライの「In-A-Gadda-Da-Vida」や、ステッペンウルフの各曲などは、この時代でなければヒットしなかったのではという気もする。一方で、ジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョプリン、ドアーズのジム・モリソンといった、27歳で若死にした連中の各曲も時代を色濃く反映しているようではあるが、この連中がもし生きていたらと思うと、その後の時代の方が気になっていけない。この時代こその熱気が染み込んでしまった楽曲の魅力は、やはり他の時代ではあり得ない。また新時代の音として聴く限り、シカゴやブラッド・スエット&ティアーズのブラスロック組やレッド・ツェッペリンのファースト・アルバム、演奏を聴かせるという意味ではやはり新しいクリームの各曲など、魅力が尽きない時代である。

 

一方で、ブラック・パワーの台頭などといった時代背景を考えると、この後変化を余儀なくされたソウル・ミュージックのヴォーカル・グループの魅力も、この時代の音としてしっかり認識しておきたい。アレサ・フランクリン、ダイアナ・ロス&ザ・シュープリームス、サム&デイヴ、テンプテーションズ、いずれも素晴らしい。そしてそこに登場してくるスライ&ザ・ファミリー・ストーンの新しい格好良さといったらない。こういった切り口で見ても、新しい時代の夜明けを感じさせる楽曲の多いこと。いい時代だ。

 

そして、やはり気になるのは、アコースティックなサウンドを前面に出した、サイモン&ガーファンクルの存在だ。映画「卒業」のヒットという後押しもあったろうが、売れて当然といった印象で、チャートを席巻している。それまでのポップスとは一味違った、新鮮な空気が流れ込むような爽やかさが一線を画している。この二人が、ママス&パパスやピーター・ポール&マリーを、一気に過去に押しやってしまったように感じるのは自分だけだろうか。

 

そして、サン・フランシスコあたりのムーヴメントも捨ててはおけない。ジェファーソン・エアプレインの「あなただけを Somebody To Love」は、1967年において明らかに新しさを纏っているし、1969年の夏に開催されたウッドストック・フェスティバルでも素晴らしいライヴを披露したサンタナなどは、やはりワン・アンド・オンリー、かつこの時代でこその魅力を放っていたと思う。サンタナは翌月の「Early70s」の回にたっぷり紹介したいと思うが、彼等の登場は時代を象徴する一大事として触れないわけにはいかない。問題はイギリス勢とのバランスか。スウィンギン・ロンドンの連中も実に魅力的なのだ。ああ、今回も時間がいくらあっても足りないことになりそうだ。

 



         
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