0084 Early70sイベント準備中(2016.11.07.

下町音楽夜話は、20025月に下町探偵団での連載が開始された。第666曲で下町探偵団から独立し、オリジナル・ドメインのウェブサイトで「続・下町音楽夜話」となって継続しているわけだが、通算して今回が750本となる。当初1000本を目指して書いていただけに、ようやく4分の3まできたかといった程度の話だが、毎週それなりに時間をかけて下調べをしたり、古いレコードをラックから探し出してきて、記憶を確認しながら書いたりしているので、自分自身にとってはそれなりに感慨深いものがある。継続は力なりと一言で片づけたくはない。モバイル機器を活用しながらも、空き時間が少しでもあれば文章化を試みる、夜中に書くなど無理をしてでも続ける、そういうことの積み重ねなのだ。その結果、量が質に転化するデータベースと考えれば、いいものができたとは思う。グーグルなどの検索エンジンで、もう少し上位に表示されれば言うことはないのだが。

 

さて月1回のトーク・イベントも8回目となる。今月のテーマは「Early70s 1970-72」だ。ヴェトナム戦争真っ最中、70年安保の騒然とした時期である。アポロ11号で初めて人類が月に降り立った翌年、ハードロック・ブーム、シンガー・ソングライター・ブームと端的にとらえればそれまでだが、時代背景から振り返ると、なるほどと思うことも多い。人生の重要な時期に、不況だの戦争だのといった、自分自身の力では如何ともし難い現実に直面したとき、現実逃避的なハードロックが受けるのも理解できるし、アメリカの真面目な若者たちが、深層心理をさらけ出すような内省的な歌を作り出したのも理解できる。泥沼化するヴェトナム戦争の一方で、アポロがどれだけ人々の希望を繋いだか、今となっては計り知れないが、精神作用に大きな影響を与えたことに間違いはない。

 

一方で日本国内では、大阪万博を横目に、70年安保闘争、ヴェトナム反戦運動、成田空港闘争など騒然とした世情の中、学生運動の内ゲバ化などとともに社会全体を徒労感や疲弊した空気がおおっていた。まだ小学生だった自分ですら、19722月、英語塾のテレビに映し出された、浅間山荘に打ち付けられる鉄球を観ながら、先生とあれこれ話したことが忘れられない。自分自身が社会に目を向け始めた最初でもあり、一方でこういった社会問題から一定の距離を保つべきという考え方を早くから身につけてしまった原因にもなった。そういった時代背景を見事に織り込んだ庄司薫の小説を読み、共感を覚えた若者は多かったはずだ。自分もその一人である。

 

そんな時代、音楽を聴くスタイルとして、シンガー・ソングライターや日本のフォークソングの歌詞に注目する連中は多かった。自分は英語がよく分からないながらに洋楽にハマってしまった小学生だったので、むしろ歌詞はさて置きというスタイルが早くから身についていたので、むしろ歌詞重視の聴き方はしなかった。あくまでも好きなメロディを追いかけることに専念していた。その結果はギルバート・オサリバンの「アローン・アゲイン」「クレア」、アルバート・ハモンドの「カリフォルニアの青い空」、ドン・マクリーンの「アメリカン・パイ」、Tレックスの「テレグラム・サム」に「メタル・グルー」、そしてディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」あたりに夢中になった。入り口はビヨルンとベニーの「木枯らしの少女」やマイケル・ジャクソンの「ベンのテーマ」、そしてニュー・シーカーズの「愛するハーモニー」などだったが、意外に早くロックにもたどり着いていたわけだ。

 

自分の場合、少しでもヴァリエーション豊富に、いろいろなものが聴きたいという気持ちが強かった。親に買ってもらったドーナツ盤は「大脱走のテーマ」などの映画音楽だったが、最初に自分のお小遣いを貯めて買ったLPはT.REXの「ザ・スライダー」である。197212月、小学校6年生の年、親のボーナスだったのだろうか、小遣いをもらい、2,000!!というその金額でLP盤が買えることが分かり、北区の十条駅前にあった新星堂というレコード屋に行って、さんざん迷った挙句に「ザ・スライダー」を購入した時の歓びは今でも記憶している。

 

その後は734月にサイモン&ガーファンクルのベスト盤、738月にグランド・ファンク・レイルロードの「アメリカン・バンド」、744月にディープ・パープルの「マシン・ヘッド」、748月にELPの「展覧会の絵」、7410月にジム・クロウチのベスト盤と続く。すべて十条駅前の新星堂で購入している。そして、753月、バックマン・ターナー・オーバードライブの「ノット・フラジャイル」を池袋の五番街で購入したのが初の輸入盤となる。実はこういうことが何冊かのノートに全て記録してあるのである。子どもの頃からデータベース作りが好きだったらしい。そんなわけで、45年ほど前、70年代初頭をテーマとしたイベントではあるが、意外なほど記憶はしっかりしている。さて何を語ろうか、また、何をかけようか。毎度悩ましいと同時に、楽しくて仕方がない。

 


   

         
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