0095 読書会始めます(2017.01.22.

聴き比べのイベントに続いて、新年から読書会を始めることになった。そもそもがイベント・スペース的なカフェをやっているので、イベントはどんどんやりたいのだ。しかし、そのベースには、ソーシャル・デザイン的な考えもあるので、若い人たちに活動の場を提供することに重心がある。自分のようなジジイが先頭を切って走りまわるのは、ちょいと違うのではないかと思うのである。また、木場公園内に都立現代美術館ができてからは、ミニ・ギャラリーなどができはじめ、アートの町として魅力的なエリアとなった清澄白河だが、最近はコーヒーの町としての注目度が高すぎて、何か勘違いされてしまったような気がしている。ウチの場合、壁面を無料で貸し出しており、画廊やギャラリーはまだ敷居が高いという若手アーティストの方たちに、初の個展開催などに利用していただけたらというコンセプトも持っているのである。

 

音楽、本、アートといった、サブカル・メディアの情報を発信することの楽しさは、一人寂しくやっていてもつまらない。他の人とシェアすることで楽しさは何倍にも膨らむ。アナログ・レコードを鳴らしているカフェとしての認知度は、トーク・イベントを定期開催していることもあり、かなり高くなってきた。また壁面利用も継続しており、何ヶ月もイベントが続いていることが嬉しい。残るは下町文庫である。本の魅力を発信するという意味では、小さなスペースでは発信力がイマイチなのかもしれない。単なるオススメ本を売っているカフェにとどまっている。少なくとも、やっている側としては、そういう印象が拭えないのだ。

 

元はカフェのお客様が、時間潰しに読むための雑誌や軽いものが中心だった。すべて自分が選んだものなので、音楽書籍は充実していたし、好きなクルマの本も多く並んでいた。そして大好きな村上春樹に関しては、主だったものは全て読めるようにしてあったので、随分場所をとっていた。オープンから5カ月でカフェの経営が行き詰まり、店名を変え、スタッフも総入れ替えとなってリセットしたタイミングで、大型の書棚を購入し、少し充実させることにした。随分詰め込んでいたので、暫くはそれだけでも十分だったはずだ。

 

カフェ1周年のタイミングでアナログ・レコード店、しかも7インチ盤専門店「45rpm」をオープンさせたが、そのタイミングで古物商の免許も取得したので、ついでに古本屋もと考えるのは当然の流れだった。同時にスタートしてもよかったのだが、カフェにとっては時期をずらした方が宣伝効果ありと判断し、3カ月ほど遅らせて始めたのが下町文庫である。自分のセレクションのみでは、どうも説教くさいラインナップになりがちではないかと考え、ご近所さんに声をかけ、情報発信する楽しさをシェアしましょうというコンセプトにしたのである。一棚一棚が一軒の本屋さんというスタイルは、売上管理が猛烈に面倒だが、かなり楽しめるものだった。ご自身でスリップまで作る方がいらっしゃるあたりは、楽しんで頂けている証拠だろう。また、早々にテレビや雑誌で取り上げて頂けたのは、非常に有り難かった。

 

さて、その下町文庫の読書会である。「単に本が好き、…それもあり。本から学び、考え、…それをシェアすることも楽しい。さらに、未来を見据えて、新しい何かを創り出していけたら、…もっと楽しいかも。」と謳い、初回のテーマはFirst Sessionが「下町・深川界隈が舞台となっているオススメ本」、Second Sessionが「無人島に持っていく一冊」とした。音楽好きなら無人島レコード、本好きなら無人島本は、考えるだけで楽しくなる企画の定番である。増してや、それを他人様とシェアして語れるとなれば、また格別ではないかというわけだ。

 

自分の場合、そもそもが音楽好きかつ本好きであって、音楽の楽しみ方のひとつとして、音楽エッセイの執筆という行為を長年続けているわけで、様々なサブカル・メディアの情報発信には目がない。しかも他人様とそういった話題で時間をシェアできるとなれば、もう最高に幸せな時間の使い方ということになる。新しい情報を得ることが目的というよりは、人と人を繋げることが新たな価値を生む機会となり、その瞬間に立ち会えることや、そういった時間を共有できることが楽しいのである。

 

「ローリング・ストーン・ギャザーズ・ノー・モス」という言葉が好きだ。またローリング・ストーンズが歌う、ボブ・ディランのカヴァー「ライク・ア・ローリング・ストーン」が妙に沁みるのだ。長年転がり続けることの価値を分かっている連中が、どういう思いを馳せて歌っているのか、そのことに思いを巡らせて、自分自身の人生を考えることが好きなのだ。自分にとって、次の一歩を踏み出す力を与えてくれるこの曲は、最近になってそのよさが分かるようになってきた。迷いだらけの人生ではあるが、ここまできたら、もう転がり続けるしかないのだ。音楽も、本も、多くの実りを与えてくれる、我が人生の素晴らしい道標なのである。下町文庫の読書会、実り多きものとなりますように。

 


   

         
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