0101店舗経営は難しい(2017.03.06.

レコードと本が好きで、今のようなカフェをやっているわけではない。もしそうなら、もっと徹底的にレコードや本の置き場を確保した空間になっているはずだ。レコードは元々持ち込む予定ではなかったし、本は雑誌程度のつもりだった。店舗ブランディングの過程で、やはり強味は一つでも多い方がよいということになって、アナログ・レコードを持ち込もうということになったのである。それでも決まった店舗物件が望んでいたほどの床面積がなく、実に中途半端なものになってしまったのである。実際、自宅にはまだ3倍程度のレコードがあり、十枚ほど持ってきては、十枚ほど持ち帰るというようなことを繰り返している。本は元々読んだらひとにあげてしまうので、自宅にはさほど溜まっていないが、やはりカフェの本棚からは溢れることになってしまった。あまり整理がついてないのは事実であり、少し片づけたい気もしないではないが、店舗づくりのノウハウの中で、あまり片づけすぎてはいけない、人間は少しごちゃごちゃ感のある空間の方が落ち着くと言われることもあり、片づけない口実にしている。実際、自分自身は、実に落ち着く空間となっている。

 

アナログ・レコードに関しては、イベントのたびに必要とする盤を持ち込むことになるが、メインのレコード・ラックに収まる基本部分は時々見直すようにしている。開店当初は自分自身の好きなレコードやカフェの雰囲気に合いそうだというものが中心だったが、だんだんお客様のリクエストが多いものに置き換えられていき、3分の1ほどは入れ替えることになった。しばらくはそれで問題がなかったが、音楽に関するトーク・イベントを開催するようになり、また徐々に内容が変化してきた。客層が変わってきたということか。

 

もう少し具体的にいうと、当初はブライアン・イーノやビル・ブルフォードなどをはじめ、聴きやすいプログレやジャズ・ロック的なものも多かったのだが、音の強弱でお客様がビックリしてしまう盤も多いことから、プログレ等は超有名盤を残して多くを持ち帰ることになったのだ。その一方で、80年代のお茶の間に洋楽が流れ込んだと言われた時期の音源、マイケル・ジャクソンやマドンナ、フィル・コリンズにヒューイ・ルイス&ザ・ニューズ、そしてサントラ盤各種といったあたりが充実してきたのである。カルチャー・クラブやワム!あたりもリクエストが多く、少々めげた。シンディ・ローパーは自分が好きなので問題なかったが、フツーに音楽が好きなお客様の好みというものが知れた時期でもあった。音楽のトーク・イベントを始めてからは、より熱心に音楽を聴いてきた方たちが集まり始め、徐々に元のラインナップに戻りつつあるのである。ただし、エキセントリックなヴォーカルが含まれたものや、爆音などが使われたもの、ヘタなものは自宅に置いたままである。

 

また、周囲から注意されたものに高額盤がある。自分自身にとっては、買ったときの値段がやはりその盤の価値基準であり、その後値が上がったものは、知ったことかという気になってしまう。それでも、店に置いておくと、それなりに傷んでいくので、やはり文化遺産的な価値のある盤は店に置かないほうがいいと思うようになった。それでも、「ロング・ブランチ/ペニー・ホイッスル」の米国オリジナル盤なども店にある状況だから、やはり高額盤に関しての注意は足りないのだろう。こういった盤こそ、お客様と眺めながら一緒に聴いて楽しむべきものではなかろうか?

 

結局のところ、音楽にしろ、諸々のアートにしろ、世間一般の評価とは別に、個人の好き嫌いという評価軸があって然りではないか。どんなに高額盤だと言われても、自分が大して好きでもないミュージシャンの盤を大事にする気にはならないし、いくら高価な絵だと言わても、好きになれなければ飾っておきたくはない。快適さなどといった曖昧な基準も人それぞれで違うということに最近思い至ったが、こればかりは店のオーナーの個性という部分に行きつくのだろう。自分が最も快適だと思う店をつくるしかない。

 

難しいのは料理で、以前にも増して評判は悪くないのだが、辛いと言われたり、味が濃すぎると言われたり、人それぞれのご意見を頂戴する。もちろん、お客様の意見に右往左往して、味が定まらないようなことにはなりたくないので、自分が美味しいというものを提供してはいるが、開店当初からは随分違ったものになってきた。評判がいくらよくても、一定数以上注文が入らないものはメニューから落とすことになる。結果的にレコードも本も、そしてお料理も、自分の好みが思い切り反映したものにはなっている。レコードは、浅く広くという自分の趣味が反映しているため、統一感はまったくない。満席状態の日曜日の夕方に、来店客のリクエストもあって、スティーヴ・ミラー・バンド ⇒ グリム・スパンキー ⇒ ドナルド・フェイゲン ⇒ ホセ・ジェイムスが結構なボリュームで流れている。…本当に店舗経営は難しい。

 

 


   

         
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