0113 Encore The 70s2017.05.29.

先日、ニューミュージック・マガジンの19694月創刊号から2004年頃まで約300冊の寄贈を受けた。段ボール箱で7つ分の分量である。カフェに置いておければそれなりに面白いものではあろうが、如何せん場所がない。自分のレコードすら満足に置くスペースがないのに、ニューミュージック・マガジンが揃っているというのも、本来のあるべき姿とは何か違う気がする。初期のものはミニコミ誌かリトルプレス並みに薄いのでさほど場所をとるというものでもないが、こういったものはバラシてしまうと価値が減じてしまう。揃っていることに意味があるのだろう。

 

仕方なしにSNSでまとめて引き取ってくれる方がいないかと募集をかけてみた。当然ながら相当の反響があり、リツイートが1日で180件を超え、まだまだ伸びて既に300件を超えている。こういう時はSNSが威力を発揮するという見本のような状況になってしまった。引き取ってもいいというオファーが数件戻ってきたので、寄贈者と相談して移転先を決めたいと思うが、こちらの希望としては、あくまでもバラサずにまとめて置いておけることと、できることなら私蔵ではなく、音楽好きが手に取って楽しめるようなスペースに置いてもらえるといいなと思う。こちらは1円も仲介料等をいただくつもりはないが、費用負担が発生するのも困る。受け取りに来られる方か、最悪で着払いによる発送を受諾できる方に引き取っていただくことになるだろう。そもそも48年も前のものからある時期まで揃っているというものだ。急ぐ話でもないが、こちらとしては段ボール箱が積み上がっているカフェもシャレにならない。早めに引き取っていただきたいという気持ちもある。

 

古い雑誌を見て面白いのは、やはり時代を反映する言葉である。死語となった「ニュー・ロック」などというのも、まだロカビリーやロックンロールとは違って、ロックが新しかった時代だからこそ、意味を持ち得た言葉だろう。今さらながらに古臭いブルース・ロックなども新しい音楽だったのだろうから、思いきり時代を感じさせる。創刊号に植草甚一氏が登場するあたり、少々ガッカリする部分でもあるが、ジャンルの細分化も進むどころか、始まる前の段階なのだろうから致し方ない。いろいろなものがアートしているような気もするが、こればかりは個人の感性の問題でもあり、語るべきではないだろう。

 

それでも特定の時代の空気感を知っているのと知らないのでは、音楽の聴き方などに大きく影響するように思う。自分がリアルタイムで洋楽を聴き始めた1970年代当初、学生運動も盛んだったし、ヴェトナム戦争の混迷が深かったこともあって、プログレッシヴ・ロックなどは、受け入れられ易い環境にあったように思う。新時代を求める感覚や、若さゆえの冒険や実験的なものが求められていただろうし、正しいあり方として認める空気もあったと思う。音楽に限らず、映画でもそうだし、小説でも同様だ。庄司薫がロックしていたとは思わないが、新しい感性を感じることはできたし、そういう時代感覚が好きだった。

 

自分がカフェで開催している音楽とトークのイヴェントは、昨年から1970年代を俯瞰し、1967年から1980年までを詳細に追った後、聴き比べ会を3回ほど実施してから映画音楽と1980年代を1回ずつ題材としてきた。今後は「Encore The 70s」と題して、1970年代の各年をさらに詳細に振り返っていくものになる。自分としては、60年代も80年代も、映画音楽も、人並み以上に語ることはできたとしても、得意分野ではない。やはり1970年代に関して語っているときが、ホーム・グラウンドに帰ってきたような安心感がある。結局のところ、究極の自己満足なのだが、一人二人でも、こういったトーク・イベントを楽しんでくれるお客様がいる限り、この環境は維持していきたいと思う。

 

ビルボードの年間チャートの資料などは、もう既に作ってあるので、資料作成に関して時間を割かれる心配はない。選曲に集中できるので、自分としては楽しさも増すというものだ。まずは1971年からスタートするが、ビートルズ解散の翌年、新しい音楽の芽生えの中心にいたのは、ニュー・ロック、アート・ロック、ジャズ・ロック、プログレッシヴ・ロック…といったキーワードで語られる連中と、日本の特質としてのフレンチ・ポップス人気や、日本独自ヒットの洋楽というものが多くあった時代である。時代の特色を語ることはむしろ簡単だ。ビージーズも日本のみでヒットした曲がある。映画で言えば「小さな恋のメロディー」あたりが、日本で異様に人気が高かったものということになる。マシュマカーンも日本で異様に人気があった。エルヴィス・プレスリーの「この胸のときめきを」も、日本でのみやたらと売れたという記録があるし、やたらと聴いた記憶がある。さてさて、その辺を探るだけでも面白いではないか。63日の土曜日からスタートする「Encore The 70s」全10回、通して聴けば300曲以上の70sを聴くことになる。この時代が懐かしいという方も、勉強してみたいという若い方も、それなりに楽しめるように工夫するつもりである。お楽しみに!

 


   

         
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