0114 視覚情報の魅力(2017.06.04.

昨夜は恒例のトーク・イベントの日だった。お題は「1971年」、前回の「80年代」より遙かにお得意の時期である。年齢的にリアルタイムではないだろうと思われがちだが、実は既に洋楽をリアルタイムで聴き始めている。兄や母親の影響もあって、小学校4年生の頃から音楽好きが芽生えてしまったので、1960年生まれの自分にとって、1971年は十分にリアルタイムで楽しんだ年なのである。世相的には、成田の強制代執行が行われ、渋谷暴動事件などが起きた騒々しい年だった。沖縄の返還もこの年だ。子どもにとっては、何が起きているのかよく理解できてはいなかった。マクドナルドの1号店オープンや、アンノン族ブームに繋がる女性誌「nonno」の創刊もこの年だが、興味がなく憶えているものではない。カップ・ヌードルがヒットし、コーヒービートや小枝やスプライトが発売になった年というあたりは、記憶が曖昧だ。配布資料には、この辺の詳細が記されており、皆さん結構楽しんでいただいている。ニュース映像も意外に面白いものが集められ、今回のイベントは、音楽以外の部分が充実していたとも思う。

 

前回の80年代はミュージック・クリップが一般的になった時期であり、音楽の売り方も映像中心に変わってしまった頃だったので、視覚情報が無いわけにはいかなかった。動画編集に時間を割かれ、かなりシンドイおもいをして臨んだものだった。今回はさすがにミュージック・クリップを集めて編集して、といった作業は無用と思っていたが、直前になって、ビルボードの年間Top100YouTubeに載っていることが分かり、結局これを編集して活用することになってしまったのだ。もちろんいくつかの楽曲に関しては映像がないし、あっても非常に粗いものである。しかし、この時代でも多くのミュージシャンが映像素材を作っていたことが意外でもあり、嬉しくもあった。音は褒められたものではない。

 

イベントの構成は、時代の象徴的な曲と、ブリティッシュ・ロック半分、ビルボードのチャートを参照しながら米国ものを半分程度とした。まずは時代の象徴、グランド・ファンク・レイルロードの「ライブ・アルバム」から「アー・ユー・レディ」、そしてCCRの「フール・ストップ・ザ・レイン」を続けて聴いた。活動期間が短かったものや、一定の時期だけ売れていたものは時代の象徴となり易い。ロックが多様化を受け入れ始めた時期、名アルバムを連発したグランド・ファンクや、シングル・ヒット中心のCCRはやたらと売れていたが、この連中をラジオで聴くことはもうめったにない。

 

英国勢に関しては、レコード・コレクターズという雑誌のこの時期のランキングなども参照しながら選曲してみた。当時の空気感を知らない若い世代の意見が反映していると思われるチャートは意外性に満ち満ちている。1971年産の英国ロックで最も上位にランクインしたのが7位T.Rexの「ゲット・イット・オン」なのだから笑ってしまう。大好きな曲だが、他にも大量に名曲が生まれた年次にこれはない。12位のロッド・スチュワート「マギー・メイ」はビルボードでも年間チャートで2位なので文句はない。しかし14位ザ・フーの「ウォント・ゲット・フールド・アゲイン」も上位過ぎるだろう。この辺はグチを言いながらの進行となってしまった。16位デレク&ザ・ドミノス「いとしのレイラ」、21位エルトン・ジョン「僕の歌は君の歌」はもっと上位でもおかしくない。高音質リマスター盤で楽しんでいただいた。

 

ここからビルボードにうつり、年間ランキングの100位から51位までを編集動画で観た後、ブレッド「イフ」、キャット・スティーヴンス「ワイルド・ワールド」、シカゴ「ビギニングス」を続けて聴いた。名曲ばかりに思わず唸らされる。50位から21位までからは、ニッティ・グリッティ・ダート・バンド「ミスター・ボージャングル」、カーペンターズ「雨の日と月曜日は」、そしてマーヴィン・ゲイ「ホワッツ・ゴーイング・オン」、さらには、お客様の反応を見て急遽かけることになった、ハミルトン、ジョー・フランク&レイノルズ「恋のかけひき Don’t Pull Your Love」の4曲だ。捨て難い曲も多く、選曲に苦労したパートである。

 

20位から1位までは全曲のピックアップ映像を観た後、ジャニス・ジョップリン「ミー・アンド・ボビー・マギー」、キャロル・キング「イッツ・トゥ・レイト」、そして年間チャート第1位のスリー・ドッグ・ナイト「喜びの世界」、ジェームス・テイラー「君の友だち」などを続けた。駆け足進行の途中、日本でのみ非常に売れた曲として紹介したのは、ザ・ビー・ジーズ「小さな恋のメロディ」とエルヴィス・プレスリー「この胸のときめきを」の2曲である。このあたり、少しは資料を参照するようにも心がけたが、どうも労力と活用量のバランスの悪さを改善するまでには至らなかった。

 

残りの時間は、時代の象徴的な英国産ロックとアルバムでヒットしたものをピックアップした。ビートルズの残党、ポールは「アナザー・デイ」、ジョージは「マイ・スイート・ロード」、ジョンは季節外れを詫びながら「ハッピー・クリスマス」を選んだ。ストーンズに関しては「ブラウン・シュガー」だが、この曲に関しては、「ウィズ・エリック・クラプトン」のテイクとの聴き比べをしてみた。やはり面白い。アル・クーパーのギターもクレジットされているあたりの小話が意外に受けたことも嬉しかった。

 

その他には、レッド・ツェッペリンの「移民の歌」、ライヴ映えしそうなフェイセズの「ステイ・ウィズ・ミー」、スティーヴン・スティルス「ラヴ・ザ・ワン・ユア・ウィズ」、ジェームス・ギャング「ウォーク・アウェイ」、ジョー・コッカー「ホンキー・トンク・ウィメン」、アルバムチャート年間No.1の「ジーザス・クライスト・スーパースター」ときて、締めはサンタナ「ブラック・マジック・ウーマン」だ。

 

イベント終了後、お客様のご要望で、ビルボードの年間Top100の編集前の動画、つまり100曲全曲を観ることになってしまった。やはり視覚的に示される時代感覚は強烈なようで、できるなら今後も全曲が観たいというご要望だ。こちらは編集の手間が省けるので問題ない。結局70年代の音楽であれ、音だけよりも視覚情報も加わった方が魅力的であることは否めない。結果的に4時間近くの長丁場になってしまい、参加された皆さんも疲れたことだろう。皆さんが楽しんでいられるうちは問題ないが、もう少し進行を練る必要を感じさせられたイベントではあった。何はともあれ、お疲れさまでした。

 


   

         
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