0115 名盤量産1972年(2017.06.11.

1970年代を俯瞰するトーク・イベントをほぼ隔週ペースでやることになり、アタマの中がすっかり70年代になっている。ニュース映像や当時のテレビCM等をかき集め、年表や諸々流行したものの資料などを作っているので、当然の結果ではある。次週が1972年の回、自分が12歳の頃だが意外に記憶はしっかりある。2月のあさま山荘事件や5月末のイスラエル、テルアビブ空港での日本赤軍による銃乱射事件などは、季節的なことも含め、テレビでニュースを観ていたシチュエーションまで憶えている。やはり子どもには理解不能だったが、妙に深く印象に残っている。

 

父親が国鉄職員だったこともあり、鉄道も好きだったので、この年の鉄道開業100年記念の様々なイベントも忘れられない。怪鳥コンコルドの飛来や、ジャイアント・パンダのランランとカンカンの来日、小結・高見山の優勝なども忘れられないし、夏に始まった刑事ドラマ「太陽にほえろ」は家族揃って毎回観ていた。田中角栄の日本列島改造論、ディスカバー・ジャパン、ケンメリのスカイライン、米軍によるクリスマス前の北爆再開…、45年前の出来事の多彩さに圧倒されるが、やはり自分にとってはズブズブに洋楽にハマっていった年なのである。1972年のイベントなど、かけたい曲が多すぎて悩むに決まっている。さて、困った、困った。

 

避けては通れない、時代を象徴する曲が多いということも面白い。ドン・マクリーンの「アメリカン・パイ」や・ギルバート・オサリバンの「アローン・アゲイン」、ニルソンの「ウィザウト・ユー」は、後々も好きで聴き続けた曲だし、ニール・ヤングの「孤独の旅路 Heart Of Gold」やアメリカの「名前のない馬」、バッドフィンガーの「デイ・アフター・デイ」、シカゴの「サタデイ・イン・ザ・パーク」など、名曲が続々出てきた年である。コカ・コーラのテレビCMではニュー・シーカーズの「愛するハーモニー I’d Like To Teach The World To Sing (In Perfect Harmony)」が流れ、映画「スーパーフライ」で使われた「フェレディの死」があまりに格好よくて、テレビ番組の「ソウル・トレイン」に夢中になっていた。

 

世の中の洋楽好きは、アメリカといえば「名前のない馬」だった。しかし、後々3曲目のシングル・ヒット「ヴェンチュラ・ハイウェイ」がジャネット・ジャクソンのサンプリング・ネタになって人気になったこともあり、今では一概にそうとも言えないようだ。自分は2曲目の「アイ・ニード・ユー」も大好きで、エア・チェックしたカセット・テープを繰り返し聴いていた。当時は好きな曲のレコードが全て買えるわけではなかったので、カセット・テープに頼らざるを得なかったわけだが、後々なかなか買えなかった曲ほど思い入れが強くなったように思う。アメリカの1972年の3曲はいずれも大好きな曲だが、結果的に「アイ・ニード・ユー」がいちばん好きという、ひねくれたことになっている。

 

アメリカに関しては、状態のいいアルバムが欲しくて、じっくり時間をかけて探していた。ファースト・アルバム「アメリカ」は今でも時々見かけるが、前述の理由もあってか、「ヴェンチュラ・ハイウェイ」が収録されたアルバム「ホームカミング」はかなり高値となっている。好きなミュージシャンのレコードはほとんど揃っているはずの我が家のラックも、実はアメリカに関しては完全ではない。「ホームカミング」が欠けているのである。もちろんCDでは持っているが、アナログ・レコードはいまだに手にしたことがないのである。

 

またファースト・アルバムは、大ヒット曲「名前のない馬」が収録されている再発盤しか持っていない。1971年にリリースされたデビュー・アルバムにこの曲は含まれておらず、19721月に「名前のない馬」をシングル・リリースしたところ、予想外の全米No.1となり、急遽追加収録して再発したのである。1972年に再発されたファースト・アルバムは、ビルボードで5週連続No.1となる大ヒットとなった。ヒット曲が追加されているのだから、再発盤でいいではないかという話だが、一度だけ中古盤店で「名前のない馬」が入っていない盤を手にしたことがあり、英米での収録曲違いか何かだろうと思って買わなかったのである。後にこの事実を知るに至り、大いに後悔したというわけだ。

 

さて、そんな1972年、決して思い入れが薄い年ではない。アルバム・チャートでは前年に引き続き、キャロル・キングの「つづれおり Tapestry」が2位に居座るが、他にも名盤が量産された年でもある。英国勢では「レッド・ツェッペリンIV」、ディープ・パープル「マシン・ヘッド」、ローリング・ストーンズは「メイン・ストリートのならず者」、ジェスロ・タルは「アクアラング」、グラム系ではデヴィッド・ボウイ「ジギー・スターダスト」やT.Rex「ザ・スライダー」、モット・ザ・フープル「すべての若き野郎ども」といった超のつく名盤がヒットしている。イエスの「こわれもの」から「ラウンドアバウト」もシングル・ヒットしている。いやはや、ここから何を捨てることができるというのだ。選曲の悩ましさでは頂点かもしれない。

 

   

         
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