0116 我が人格形成の原点(2017.05.18.

昨日は恒例のトーク・イベントの日だった。お題は「1972年」、自分が洋楽にどんどんハマっていく時期であり、レコードを買い始めた年である。小遣いを貯めて買ったお初のLPT.Rexの「ザ・スライダー」であり、まさにこの年の象徴的な一枚である。東京の小学校が好きになれないでいた田舎者の6年生は、すっ飛んで帰宅してラジオばかり聴いていた。「ソウル・トゥ・ソウル」で聴いたマイケル・ジャクソンの「ベン」が心に沁みたし、ニール・ヤングの「孤独の旅路 Heart Of Gold」は、直ぐには好きになれなかったが忘れることができず、いつの間にか大好きな曲になっていた。それでもギルバート・オサリバンの親しみやすい曲や、派手なグラムロックに魅了されたのは当然の成行きで、音楽好きの進むべき道は用意されていたようなものだった。ハードロックやプログレも魅力的な盤が多い素晴らしい年である。

 

昨年を通して一度やってきた1970年代のアンコール的内容のため、資料作りに時間はかからないが、前回から映像素材を充実させたこともあり、結構直前までバタバタしていた。それでも音楽に関する諸々の作業をしていることは楽しくてしょうがない。あらためて自分自身の音楽好きを確認しているような日々になっている。それでも残念ながら、イベントとして成立するギリギリの人数しか集まらないので、次回「1973年」までやった後はいったんキャンセルすることとした。毎回参加してくださる常連さんたちと相談して、見直しをかけることとしよう。

 

さて、今回も時代を象徴する曲からスタートだ。まずはグラムロックの代表、スレイドの「グッバイ・トゥ・ジェーン」、ハードロックからはレッド・ツェッペリン「ブラック・ドッグ」とディープ・パープル「スモーク・オン・ザ・ウォーター」だ。あらためて聴く機会も少なくなってしまったこれらの曲も、大音量で聴くと意外に面白い。ビートルズのメンバーの曲が年間Top100に一曲も含まれない珍しい年でもある。ストーンズは名盤「メイン・ストリートのならず者」から「ダイスをこがせ」だ。そして、プログレ代表としてイエスの「ラウンドアバウト」のつもりで用意していたが、気まぐれを起こして年間チャートの50位にランクインしていたアージェント「ホールド・ユア・ヘッド・アップ」を聴くことにした。シンプルな演奏だが、妙に印象的なメロディが大好きだった曲である。

 

続いてやはり時代を象徴するグラムの萌芽ということで、モット・ザ・フープル「すべての若き野郎ども」とデヴィッド・ボウイ「スター・マン」を聴いたところで、今回は少し資料に目を通す時間を設けてみた。アンディ・ウィリアムス「ゴッドファーザー 愛のテーマ」がいかに日本で人気があったかということを、オリコンや文化放送ユア・ヒット・パレードのチャートから説き起こしてみたのである。ついでに洋楽ファンでも聴けるものがフォークには多かったということで、よしだたくろう「旅の宿」も聴いてみた。やはり英国録音などと比べると音質はイマイチだが、懐かしさという点ではピカイチだ。

 

ここまではニュース映像や当時のファッション関連のヴィデオなどを映していたが、ここで音を聴きながら一曲見ることにした。「ケンとメリーのスカイライン」といえばわかるだろうか。BUZZ「愛と風のように」である。16作あるという名作CMは、当時非常に斬新と感じた。映像も美しい。続けてここからは映像素材を活用した。ビルボードの年間Top100のうち100位から71位までの30曲を30秒ずつ観て、フルレングスで聴いたのは、ニュー・シーカーズ「愛するハーモニー」、トッド・ラングレン「アイ・ソー・ザ・ライト」、シカゴ「サタデイ・イン・ザ・パーク」、ショック・ロックと呼ばれたアリス・クーパー「スクールズ・アウト」の4曲である。このスタイル、時間はかかってしまうが、なかなか楽しい。

 

続けて70位から41位の30曲を観て、そこからはスリー・ドッグ・ナイト「ブラック・アンド・ホワイト」、スカのリズムが斬新だったポール・サイモンの「母と子の絆」、キャット・スティーヴンス「雨にぬれた朝」、リック・ネルソン&ストーン・キャニオン・バンド「思い出のガーデン・パーティー」の4曲である。いずれも懐かしいし、名曲が量産された時代であることが知れる。40位から21位からは、ラズベリーズ「ゴー・オール・ザ・ウェイ」、オー・ジェイズ「裏切り者のテーマBack Stabbers」、アメリカ「名前のない馬」の3曲を聴いた。ここでまた自分が気まぐれを起こし、アメリカの「アイ・ニード・ユー」も聴かせていただいた。これはあくまでも個人的なわがままである。

 

20位から1位は有名曲目白押しだ。ニール・ヤング「孤独の旅路」、ドン・マクリーン「アメリカン・パイ」、ニルソン「ウィザウト・ユー」、ギルバート・オサリバン「アローン・アゲイン」と聴いた。残った時間でカーペンターズ「ハーティング・イーチ・アザー」、ジャクソン・ブラウン「ドクター・マイ・アイズ」、カーティス・メイフィールド「フレディの死」、そしてダニー・ハサウェイ「ザ・ゲットー」を名盤ライヴから聴いて終了となった。フルで聴けたのは29曲、100曲を30秒ずつ観ているので致し方ない。

 

思うに、いろいろな面において、新旧交代が進んだ時期なのである。ポスト戦後などという議論があるが、自分はこの時期にいろいろなものが変化していく様を横目で見ながら、自分自身の人格が形成されたと思っている。アメリカのテレビドラマの豊かな暮らしに憧れて育ち、更に音楽で感覚を深化させたところで、ヴェトナム戦争の泥沼化や連合赤軍などに対する嫌悪感が後押しして、自分のようなひねくれた物の見方しかできない人間が形成されたと思っている。同世代には程度の差こそあれ、醒めた考え方をする人間が少なくないような気もしている。そのスタート地点がこの辺りにあると考えているのである。1972年、面白い時代だった。

 


   

         
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