0120 時は移ろいゆく(2017.07.16.

メインで使っているPCが壊れ、とても面倒なおもいをしている。データのバックアップをしていなかったとか、諸々のパスワードが分からないなどという素人くさいことはやらないが、新型を購入するたびにソフトウェアをとりまく環境が大きく変わっているので、面倒なおもいをしないということはあり得ない。ハードウェアやCPUの進化はさすがに落ち着いてきたようで、軽く小さくなったことやモニターの精細度の向上といった部分以外は驚く要素がない。タブレットやスマホで十分というユーザーは多かろうが、自分の場合は文字による発信が中心なので、どうしてもキーボードが必要になる。必然的にPCがないとお話しにならないのである。

 

飲食店経営という側面からみても、料理が美味ければいいというものではないこともご理解いただけるだろう。結局のところ、ローカル・メディアに見立てたカフェをやっているわけで、情報発信という行為がついてまわる度合いが普通以上というか、運営上の大きなカギとなる。フェイスブック、ツイッター、インスタグラムといったSNSも使いまくるし、スタッフとのやりとりはLINEということになる。こればかりは、そういう時代なんだと割り切るしかない。「スマホが一台あれば、飲食店経営のかなりの部分が賄える」というと言いすぎだろうか。しかし、実際の印象はそんなところだ。

 

今回購入したものは、PCとタブレットの機能を兼ね備えた2in1タイプのものである。モビリティが高そうに聞こえるが、妙に重く、モバイル・ツールと言うことすら憚られる。どのみち2年なりの期間で使い倒す消耗品という感覚でPCを扱っているので、値段の高いものは買わない。重い理由はそこにあるといったところだ。しかし壊れたPCと比べると随分進化している気がする。旧型が妙に丈夫で4年ももってしまったことで、余計に浦島太郎感が醸し出されているのかもしれない。

 

飲食店に関しては、レジや決済などがクラウド・サービスになってきているので、通信環境も重要になってくる。データ通信容量制限を超過すると速度制限がくるような環境では仕事にならない。今回、PC購入後の設定をやっていて一発で容量制限を超えてしまい、容量無制限のWiFiルータに機種変更するはめになった。これに関しては、以前からの懸案事項だったので、踏ん切りがついたというだけだが、出費が嵩むときは重なるものだということが思い出され、少々へこんでいる。しばらくレコードを買うことは控えよう。ちなみに、オフィスなどのソフトウェアも法人向けのクラウド・サービスを利用することにした。常に最新版が使えることでセキュリティも維持できるし、複数のPCを活用する場合は非常にお安くなっている。設定は時間がかかって面倒だったが、これはやってよかったと思っている。

 

このPCで音を鳴らすことはあまり想定していない。イヴェントのときなど、映像を使うこともあるが、それは専用のPCを使っている。今回購入したものは、あくまでも日常的に持ち歩いて会計処理をしたり、ウェブ・ページの更新をしたり、下町音楽夜話のような文章を打ち込むためのものである。それでも、「Waves MaxxAudio Pro」などというプラグイン・ソフトの名前を見ると気になっていけない。PCで鳴らす音は、キャラキャラとした、華やかだがどうも長く聴いていられない音という印象が強い。いくつかmp3音源を鳴らしてみたが、このPCでもやはりその印象は変わらない。これで十分な方は十分だろう。アナログ・サウンドと聴き比べようなどとする方が間違っている。

 

最近のレファレンス盤は、随分大人しくなってしまった。昔はジョン・ボーナムのドラムスがいい音で鳴らないと寂しいなどと思ったが、デジタル音源は低音が出過ぎると品のない音になる。引き締まった中低音が好みだが、高音は意外に気にならなくなってきた。高級機で聴いても、ヴォーカルがノイズをかんでいるような鳴り方を示すものもあり、ノラ・ジョーンズあたりのヴォーカルがいい感じで聴ければ十分だと思うようになってしまった。もう一人、ニック・ドレイクの音源は意外にオーディオ機器を選ぶ。元々籠った声なので、音響的にクリアでないと輪郭がボヤケてしまう。アコースティック・サウンドなのに、低音成分がしっかり含まれていることも、機器の鳴りを評価しやすい。

 

今、自分のカフェで鳴っている音が非常に気に入っている。オーディオに詳しい方に言わせると、スピーカーをもう少し高い位置に設置できないかと言われることもあるが、バランス的にこれ以上低音が出ることはどうにも好ましくない。カフェのBGMということを抜きにしても、中音域から低音域が豊かで、高音はボリュームを上げないとノイズがかんだような音で鳴るが、意外に繊細でクリアな鳴りが好ましい。ルーマーとアデルのヴォーカルがノイズをかんでいなければ文句なしだ。

 

PCを買い替えるたびに時代の変化を思い知らされる。PCを取り巻く環境が最もそのことを如実に物語るからだ。しかし、音楽を聴くということに関しては、ここ数年アナログの再評価ばかりが注目されており、デジタル音の進化はハイレゾで止まっているようだ。手軽に持ち運べるデジタルの魅力も否定はしないが、棲み分けていればいいではないか。アナログ好きを「進化を止めた生き物」のように言わないで欲しい。結局、昔から手元にあるアナログ盤がいい音で鳴れば文句はない。所詮デジタルが目指しているのは、アナログ的な鳴りであって、そこからノイズが取り除ければなおよしという程度なのだ。

 


   

         
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