0122 飲みが足らん(2017.08.06.

音楽好きが集まるパーティに誘われ、久々に飲む機会に恵まれた。店を始めてからほとんどそういうチャンスはなくなってしまったが、たまにはよそ様のお店にも行くべきだし、よそのお店の料理も口にすべきだとは思っている。増してや音楽好きがレコードを持ち寄ってということになれば、新しい情報が得られる貴重な機会とも言える。本来ならもっとこういう機会があるべきなのだ。やはり損な性格だなと思う。元々社交的ではないし、飲んで騒ぐということが苦手なので、出かけることに関しては積極的ではない。前職の環境では、自分に目新しい情報をもたらしてくれる人間がいなかったので仕方ないということもあるが、カフェを初めてからは、何人もの音楽に詳しいお客さんと知り合いになれたのだから、もっとこういう機会があってもいいような気もする。

 

もういい年齢なので、新しい音楽を貪欲に開拓していくなどというモチベーションはとうに失われているが、それでもいいものはいいと評価できる柔軟性は持っていたい。オープン・マインドは失いたくないとは常々思っている。昨日の会は非常に楽しかったので問題ないのだが、加齢とともに殻に閉じこもりがちになる人間が多くの映画で描かれていることが、今更ながら自身の問題として考えられるようになってきた。何事も学究的な目で見てしまう性質は今更直しようもないが、真面目過ぎる性格はやはり問題がある。自分の人生を後悔しているのかと言われれば、決してそんなことはないのだが、つくづく損な性格だなあと思う。

 

ワインとレコードを持ち寄れということだったので、少し前から何を持ち込むか悩み始めていた。当日の気分で決めるほうがいいとも思ったが、根が好き者なので、ついあれこれ考えてしまう。ストレートに自分の好きな曲を持ち込むか、ウケ狙いでいくかは大きな違いではないか。そもそもどういった人が集まるかの情報はない。音楽が好きな人間が集まることは確かだろうが、年齢も好みも知れないわけで、ウケ狙いはなかなか難しい。そうなると、少しは語るべき特徴があるものでないとつまらない。オーディオ的な鳴りを試すのも面白そうだが、自分だけが楽しめるのでは意味がない。…やはり、難しい。

 

メンツが面白いプロデューサーズは、楽曲も楽しい雰囲気でパーティに合いそうということで当確、同様の理由でキシバシの「151A」もOKだ。このあたりは聴くたびに気分が高揚し、元気になれる音楽である。アナログ・レコードの鳴りに関しては100%の満足が得られているわけではないが、凡百のアルバムではない。ただこういったポップ・ミュージックは聞き手を選ぶので当たり外れは覚悟しなければいけない。語ることとして、10cc~ゴドレイ&クレームのロル・クレームやトレヴァー・ホーンのポップネスが並大抵のものではないこと、英国人らしからぬ明るさの意外性といったところか。キシバシは気が付くと日本語という面白さや、現代ニュー・ヨークのカオス的な音づくりの面白さあたりだ。ただし、キシバシはYouTubeで映像を観たほうがはるかに面白いかもしれないので、音だけにとどまらないクリエイティヴィティという語りになってしまう。いずれも、酔っ払っているときのネタとしては難しかったかもしれない。

 

オーディオ趣味的には、どういった鳴りかを試したくて、レファレンス的に使えるものを何かしら持ち込みたかった。パット・メセニーは曲が長いし、あまりパーティ向きとは思えない。ゆっくり語り合うようなメンツであればノラ・ジョーンズのファーストと思うが、残念ながら貸し出し中で手元になかった。いずれにせよ、今回の大いに盛り上がったパーティには合わなかったようなので、これでよしとしよう。結果的に選んだのはブルース・ホーンズビー&ザ・レインジの「ザ・ウェイ・イット・イズ」だ。ただし、これは少々難ありなシステムでもいい音で鳴ってしまうようなところがある。結果は残念ながら憶えていない。酔っ払うということは、そういうものである。

 

そしてもう一枚、自分のその日の気分で一番好きな一枚といったときに思い浮かんだ、ジョー・サンプル&デヴィッド・T・ウォーカーの「スウィング・ストリート・カフェ」も持ち込んでいたが、こちらもよく覚えていない。この辺の古い、しかも渋い鳴りのアナログ盤がどう鳴るか聴いてみたかった。残念である。システムはミキサーを通しているので、単純に評価はできないが、テクニクスのターンテーブルにオルトフォンの針、スピーカーはタンノイの現代的なアクティヴ・スタジオ・モニター、Revealシリーズのものだった。エレピの弾き語りを聞かせてくれるシーンもあったので、これは実に的を得た選択だ。さすがである。如何せん、場所がミキシング・エンジニアの早乙女正雄氏がやっているSaotome-keだったのである。結局井上堯之バンドあたりの古い音源で盛り上がってしまったので、音質云々を語ることはなかったが、何はともあれ、非常に楽しいひと時だった。最近の自分は飲みが足らんなと反省しつつ、帰途についたものである。

 


   

         
 Links : GINGER.TOKYO  saramawashi.com  Facebook  
 Mail to :  takayama@saramawashi.com     
 Sorry, it's Japanese Sight & All Rights Reserved.