0123 音楽ビジネスの行く末は(2017.08.13.

アナログ盤のニュー・リリース情報を定期的にチェックすることで、初回ロットを安く入手することができる、…と思っている。見逃した盤はあっという間に高額になり、手がでないということも多く、ちょっと前に比べるとアナログ盤の市場が活気づいていることが知れる。最近ではほとんどの新盤がアナログでもリリースされるし、輸入盤は価格が下がってきているようにも思う。アナログ好きにとっては有難い状況なのだが、なんだか手ばなしに喜べないようなところもある。実際の価値以上に高額の値段で売られているものが増えると、市場全体が縮小してしまう気がするからだ。

 

生産者の側からすると、ある程度の値段で売らないと生産体制が維持できないということなのだろうし、ミュージシャンの生活が成り立たなければ音楽産業が維持できないということも理解はできる。しかし、高額で売られている盤の差益がミュージシャンに渡っているならその理由も納得するが、どうもそうとも思えない。また、高額盤ばかりになると、結果的に若者を市場から締め出してしまい、アナログ・オーディオが金持ち爺さんの趣味の道具になってしまうように思えるからだ。100円から300円程度で売られている中古盤が潤沢にあるうちはそれなりに楽しめるという気もするが、高音質盤などは冗談のような値段で出てくることもあり、とても若者が手を出せる代物ではない。市場の先細りは避けられないような気もする。

 

最近では、ロックという音楽自体がノスタルジックなものになりつつあるようだ。。ヒップホップ的な要素がなければ新しくないという勘違いも勘弁して欲しいし、ラップ的なヴォーカルが新しいというのも違う気がする。トーキング・ブルースまで遡って検証しろと言うつもりもないが、歴史は繰り返されるようだ。エド・シーランのポップなメロディ・センスが好きで、すべてアナログで持っているが、彼の場合は普通に歌うこともすればラップもある程度の割合で聞かれる。彼のようなスタンスが、実のところ現在のスタンダードなのかなとも思う。おそらくラップは一つのヴォーカル・スタイルになってしまったのだろう。

 

アナログ盤のニュー・リリース情報に話を戻すと、どうも今が何年なのかわからなくなってしまいそうなメンツが並んでいる。今日現在では、ニール・ヤング、グレッグ・オールマン、スティーヴ・ウィンウッド、デヴィッド・クロスビー、ランディ・ニューマンなどといった具合だ。デヴィッド・ボウイなどは死後1年半の月日が経過するも、常に2~3作の新盤情報が掲載されている。これでは1975年でも1995年でもあり得るメンツではないか。新しいロック・ミュージシャンはいないのかと訝しく思えるが、そんなことはない。結局、団塊の世代の人間が元気よ過ぎなのだということに帰着しそうでいけない。

 

アルバムを制作して売るというビジネス・モデルが崩れつつある現在、ライヴの意義も変わってきているようだが、音楽の楽しみ方が多様化する一方で、ビジネス・モデルが多様化するかというと、そうでもないところがまた面白い。ある程度以上、アルバムやシングルが売れないことには生計が成り立たないことは明らかだが、インターネットというインフラに振り回されて、根本の部分を見失っているような音楽業界全体の有り様が何とももどかしい。単純にいい曲をいいと感じることが基本だろうが、好きだと思うミュージシャンがいれば、応援する意味でも、ちゃんとお金を支払って楽曲を購入すべきなのだ。安売りし過ぎてもよくないと思う。

 

とりわけ、CDの価格下落は目に余る。価格設定自体、酷過ぎないか。新盤リリースの時点で、アナログ盤の半分程度の値札を付けられると、どちらを買うにしても不満が残るではないか。アナログ盤を買えば、何故こんなに高いんだと思うだろうし、CDを買えば、有り難みの薄さに嫌気がさす。ダウンロード・コード付きのアナログ盤が、ハイブリッドという意味でも、最も手が出し易いのだろうが、自分の場合、最近はダウンロードすら面倒でやっていない。やはりアナログ盤で聴くほうが楽しいし、デジタル・サウンドはどうにも好きになれない。CDが売れないのにはそれなりの理由がある。価格設定などは一切リスナー側に責任はない。結局のところ、自業自得だ。

 

自分のような古い世代のアナログ好きは、昔聴いていたミュージシャンの新盤はやはり興味があるし、聴いてみたいと思うだろう。古いミュージシャンの新盤は、放っておいてもある程度は売れるはずだ。その一方で、若い世代が、納得のいく金額を支払うことで所有欲を満たし、好きなミュージシャンを思う気持ちも満たされることは、今後の音楽ビジネスを持続可能にするための根本ではなかろうか。支払うことをあきらめさせるような価格設定や、リリース前の予約の段階から入手困難になってしまうような生産体制は早急に見直して欲しいものだ。

 


   

         
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