0127 伝説のライヴ(2017.09.10.

世の中には「伝説のライヴ」というものが多く存在する。自分はライヴに足を運ぶことはもうほとんどなくなってしまったが、ライヴは非常に好きだった。とりわけ、何故かライヴ盤が好きで、ブートレグも含め、結構な数のライヴ盤を購入したものだ。昔のロック・ミュージシャンは大抵名盤ライヴを持っている。今では滅多に聴くことはないが、ザ・フー「ライブ・アット・リーズ」、ディープ・パープルの「ライブ・イン・ジャパン(メイド・イン~)」やレッド・ツェッペリンの「狂熱のライブ」、ポール・マッカートニーなら「ウィングス・オーヴァー・アメリカ」といったあたりは例外的に好きな盤だし、「フランプトン・カムズ・アライヴ」やチープ・トリックの「at武道館」もいい。

 

ジェフ・ベックのライヴ盤に関しても、かなり力を入れて集めていた。ブートレグは多く出回るわけではなかったし、公式盤ではヤン・ハマー・グループと共演した、妙にチープな盤しかなかったことが、かえってそういう行動に駆り立てたのだと思う。来日すれば大抵は観に行くので、彼のライヴのクオリティの高さは知っている。また時期によって演奏内容が随分違ってもいるので好みは分かれるようだが、自分の場合はどの時代も好きだし、いろいろな時代の演奏が楽しめることが嬉しい。とりわけ、テリー・ボジオと一緒に演奏したときのライヴは好きだ。

 

そんな中、自分はたまたま都合がつかなくていけなかったジェフ・ベックの伝説のライヴがあるのだ。スタンリー・クラークをフィーチャーして、「スクール・デイズ」や「ロックン・ロール・ジェリー」をやっているときのものである。猛烈に音の悪いブートレグで数曲は耳にしたことがあるのだが、やはり気になっていけない音源として40年近くの時が流れても忘れられないものなのである。それが最近CDで売られていることに気が付いたのである。「FREEWAY JAM」というタイトルがつけられ、スタンリー・クラーク、ジェフ・ベック、サイモン・フィリップスの連名でリリースされている。1978年のFM東京の放送用音源ということになっているのだが…。

 

ただし、これが本当にラジオ・ミックスなのか、実は少々信じ難い。音は悪くないのだが、サウンド・ボード直結のような、全くバランス取りしていないような音質なのである。一曲一曲ブツ切れなのでラジオで流した元ネタのように思えなくもないが、如何せん粗削りな音である。かえってそのせいで迫力があるとも言えるが、ある程度まともな音質で、ジェフ・ベックとスタンリー・クラークの共演ライヴ音源が聴けることは非常に嬉しい。

 

そして、とにもかくにも、選曲が面白いのである。「Star Cycle」で始まり「Freeway Jam」につながるあたりは、いかにもという流れでニヤニヤしてしまう。嬉しかったのは3曲目に「Cat Moves」が出てきたことである。この曲をご存知だろうか。作者はヤン・ハマーである。この当時、一緒にやっていたことは周知のことだが、このライヴでキーボードを弾いているのは、後のギター・ショップ・トリオの一員、トニー・ハイマスである。しかも、この曲、コージー・パウエルのソロ・アルバム「サンダー・ストーム (Tilt)」の冒頭に収録されており、ギターは確かにジェフ・ベックが弾いている。しかし、当然ドラムスはコージー・パウエルだし、ベースはなんとジャック・ブルース!、キーボードはジョン・クックとデヴィッド・サンシャスである。このライヴのメンツとは全く関係ない曲である。

 

トニー・ハイマスはいいとしても、スタンリー・クラークやサイモン・フィリップスが、よくぞこの曲を演ったものだ。しかも妙にロックしていて格好良い演奏なのである。この当時は、スタンリー・クラークも少しはロックっぽい曲をやっていた。しかしリズムがファンキーで、アクティブ回路のアレンビックだったと思うが、ロックに相性のいいベースを弾きまくっていた時期である。従って演奏内容は納得がいく。猛烈なテクニックで速弾きも聞かせるが、ロックのツボをよく分かっているシンプルなベース・ラインでは弾き過ぎない抑制がきいた格好良さなのである。サイモン・フィリップスのドラムスは手数が多すぎて、特別好きなものでもないのだが、やはりテクニックは猛烈だ。聴きどころ満載のライヴなのである。

 

他にも「Goodbye Pork Pie Hat」や「Scatterbrain」など、実に嬉しい選曲なのだが、やはり「Cat Moves」は違和感バリバリ、何故?何故このメンツでこの曲なんだ、と言いたくなる一曲なのである。全体を通して聴くと、「伝説のライヴ」と言われるだけのものであることは十分に知れる。もの凄い演奏クオリティだ。2017年の現在、今更と言われてもおかしくはないが、このリリースは嬉しかった。カフェで流すには遠慮したくなる音質ではあるが、アフター・アワーズにボリュームを上げて聴くと実に気分がよくなる。なかなかいいものを手に入れたが、生で観ておけばよかったなあという後悔が募ることにもなってしまった。

 


   

         
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