0130 「Around1990」準備中(2017.09.30.

自身のトーク・イベントに関して、前回が1975年だったのだが、次回から3回連続で「Around1990」となり、まずは1989年に飛んでしまうので、脳がなかなか切り替わらないで苦労している。そもそも1980年代後半以降は、アナログ・レコードで聴かせるイベントは成り立たないので、根本からやり方を変えなければいけない。以前に1980年代という切り口でやったときは、ミュージック・クリップ中心でやったが、今回もそうならざるを得ない。それでも、アナログ・レコードが手元にあるものは、極力アナログで行きたいと思うので、ビルボードのデータなどを漁って、慎重に準備を進めている。

 

自分は、もともとデータ解析が好きで、統計データからどういったことが読み取れるかをあれこれ考えてしまう性質なのだ。ビルボードの資料を眺めていても、ついつい要らぬことを考えてしまう。とりわけ、シングル・チャートはいろいろ見えてきて面白い。何はともあれ、1989年のナンバー・ワン・ヒットは33曲もある。1980年から83年の4年間は1617曲しかナンバー・ワン・ヒットがなかったことに比べると2倍である。つまり小粒なのである。最も長くナンバー・ワンに居座ったのが、10月の4週間1位を独占したジャネット・ジャクソン「ミス・ユー・マッチ」と、年末から翌年の1月中旬までの4週連続ナンバー・ワン、フィル・コリンズ「アナザー・デイ・イン・パラダイス」である。日本では思い切りバブリーな時期のクリスマス・シーズン、ホームレスの女性の心情を歌詞にしたこの曲が大ヒットしていたことの違和感は今でも忘れられない。

 

極端な比較だが、1981年にはキム・カーンズ「ベティ・デイビスの瞳」とダイアナ・ロス&ライオネル・リッチー「エンドレス・ラブ」が9週連続1位、オリビア・ニュートン・ジョン「フィジカル」が10週連続1位なので、単純化して考えても一年の半分はこの3曲が1位というわけで、他がいかに小粒だったかということにもなりそうだが、ことはそう簡単ではない。フォリナーの「ガール・ライク・ユー」が9週連続2位(1982年の年間Top10019位)という珍記録を持っているように、1位になるということとビッグ・ヒットはイコールではないのである。ロングラン・ヒットはデータを面白くする。そんなわけで、1982年の年間チャートは、最高位が8位のソフト・セル「汚れなき愛 Tainted Love」が年間で11位だったりする。

 

またリリース時期によるクセも出てくる。例えば、クリストファー・クロス「ニューヨーク・シティ・セレナーデ Arthur’s Theme (Best That You Can Do)」はナンバー・ワン・ヒットだが、1981年の年間では64位、1982年の年間では98位という記録しか残せないことになる。1989年に話を戻すと、年間Top1001位はシカゴ「ルック・アウェイ」、3位はポイズン「エヴリ・ローズ・ハズ・イッツ・ソーン」だが、この2曲は前年1988年の12月のヒット曲である。年間33曲のナンバー・ワン・ヒットと言ったとき、シカゴは含まれず、ポイズンは1月第1週まで1位なので含まれるということになる。そして、1988年のナンバー・ワン・ヒットのこの2曲は、1988年の年間Top100には入ってこないのである。         

 

また、主要メディアがアナログ・レコードからCDに切り替わってからは、シングル盤の売上枚数ではなく、オンエア数などの影響がチャートに色濃く反映してくる。個人的にはCDそのものにもあまり魅力を感じなかったが、それ以上にCDシングルは魅力がなかった。その結果、1990年代以降のシングル・チャートはあまり意味がないことになり、アルバム・チャートの方が納得できるものとなる。合わせて1989年をピークに、年間ナンバー・ワン・ヒット曲数は減少傾向に転ずる。1996年の極端な例では、9曲しかないことになる。前年末から16週連続1位のマライア・キャリー&ボーイズIIメン「ワン・スウィート・デイ」、8週連続のボーン・サグスン・ハーモニー「クロスロード」、14週連続のロス・デル・リオ「恋のマカレナ」、12月初旬から翌年2月まで11週連続のトニ・ブラクストン「アンブレイク・マイ・ハート」などのビッグ・ヒットが残した結果ということになるが、違和感バリバリである。

 

1990年前後と言えば、リズム的にはヒット・チャートのメイン・ストリームはR&Bに置き換わっている。バブル期にボディコンの衣装を纏い、羽毛のセンス片手にウォーターフロントで踊っていたレディースや、肩パットが入ったダボダボ・スーツで薄化粧していたメンズの方たちには納得していただけるだろう。しかし、同時に意外なほど多くのヘヴィ・メタル・バンドもランク・インしている。ヘッドフォンでボリュームを上げて聴くのに適した音楽も売れていたというわけだ。自分にとって最も親しみのある1970年代とは、音楽の聴き方そのものがまるで違うものになり、個人的には昔のレコードを買い集める勢いが加速することになった時期なのである。

 


   

         
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