0133 1989年の記憶(2017.10.22.

昨夜は毎月恒例となったトーク・イベントだった。お題は「1989年」である。ここのところ、1970年代を続けて75年まできたところでいったん中断し、今月から3回連続で「Around1990」と銘うって1989年から1991年までの3年間をやることになった。イベント自体の熱量が大き過ぎてお客さんが寄り付かなくなったという状況になってしまい、いったん1970年代から離れてみることにしたのだ。毎回継続的に参加していただいている方々にとっては迷惑な話かもしれないが、集客に繋がらなければ主催者側としては意味がない。あれこれご意見を伺って改善策を繰り出すことになる。アルバイト君1名に手伝ってもらっただけで赤字になるイベントは不味い。実際、1989年にとんだからといって特別効果があったわけではない。たまたま居合わせたお客さまがお一人、面白そうだからと参加していただけたことは嬉しかったが、相変わらず寂しい状況だった。テコ入れをしないと、継続が難しい状況になってきたことを再認識させられた。さて、どうしたものか。

 

1989年という年は、多くの人の脳に深く深く刻み込まれた特徴のある年なのである。如何せん昭和64年が始まって一週間で終わってしまったのだ。自粛ムードに包まれた前年の師走から、そろそろかという気はしていたが、どういった影響があるのかは見えていなかった。容体が悪化してからは、頻繁に臨時ニュースが流れ、小康状態だという文字情報を表示したままテレビ放送が続けられていた。若干のいきなり感を伴って「平成」が始まり、大喪の礼などという聞き慣れない言葉が飛び交う中、経済的な影響の大きさに不安にもなった。爆風スランプの武道館ライヴは3日のうち2日が中止となった。歌舞音曲の自粛という、個人的にはあり得ない状況はそう長く続かなかったが、カレンダーも書き換わり、諸々のシステムに影響が出たことはよく憶えている。

 

毎度YouTubeなどを駆使して懐かしいCMやニュース映像などを流し、時代の空気感を蘇らせる工夫をしているのだが、今回はやはりCM集が面白かった。如何せん女性のヘア・スタイルやメイクが全然違うのである。ここまで派手だったかという面白さもあるが、「いたいた」という声が何度も聞こえていたように、ファッションも特徴的だった。女性のワンレン、ボディコン、男性の肩パットの入ったダブダブのスーツというのも、今見ると新鮮なほど特徴的である。ダンス・シーンが素晴らしいクリップやストーリーの垣間見えるヘヴィメタル系バンドのバラードなどが目立つ洋楽も勿論面白かったが、それ以上に元気な邦楽が印象的だった。

 

やはりプリプリ(プリンセス・プリンセス)の「ダイヤモンド」の大ヒットが時代を象徴してはいるが、自分が今回選んだのは、松任谷由実「Anniversary」、今井美樹「彼女とTip On Duo」、爆風スランプ「リゾ・ラバ」の3曲である。ユーミンは19891990年と続けてオリコンのアルバム・チャートを制覇しているので、ある意味絶頂期とも言える。他の2曲は時代を色濃く反映しているとともに、個人的によく聴いた思い入れのある曲でもある。そして、落選組はパーソンズ、なんとイベントの時に限ってCDが読み取れなかったのである。考えてみれば30年近くも前のものなのだ。初期のディスクはデータ面の白濁も出てきて読み取れないものがある。やはり製品としてのアナログの完成度の高さを思い知らされる。他にも読めないCDが何枚かあることに気づき、数少ないアナログ盤で場繋ぎしながらプレイリストを練り直していくという厳しいことになってしまった。事前チェックが足りないというご指摘もあろうが、古いCDは読めたり読めなかったりするのである。バタバタすることは、このイベントにつきものなのである。

 

イベントはガンズ・アンド・ローゼス「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」で始まり、ヴァン・ヘイレン「ホエン・イッツ・ラヴ」、ピンク・フロイド「ラーニング・トゥ・フライ」、ジェフ・ベック「ギター・ショップ」といった時代の象徴から始まった。そこに続けたのは、様々なスタイルの女性ヴォーカルもので、フェアグラウンド・アトラクション「パーフェクト」、カウボーイ・ジャンキーズ「マイニング・フォー・ゴールド / ミスガイデッド・エンジェル」、後にポール・サイモンの奥方になったエディ・ブリッケルの「ホワット・アイ・アム」、デビュー後いきなり大ブームになったロクセット「ザ・ルック」、ジャジーな曲と素晴らしい声が忘れられないアニタ・ベイカー「ギヴィング・ユー・ザ・ベスト・ザット・アイ・ガット」、マルティカ「トイ・ソルジャー」、ポーラ・アブドゥル「コールド・ハーテッド」、ジャネット・ジャクソン「ミス・ユー・マッチ」といったあたりである。実にヴァラエティに富んでいる。

 

対する白組はバッド・イングリッシュ「ホエン・アイ・シー・ユー・スマイル」、マイク+ザ・メカニクス「リヴィング・イヤーズ」、新人スキッド・ロウ「18・アンド・ライフ」、同じく新人ミスター・ビッグ「エニシング・フォー・ユー」、ポイズン「エブリ・ローズ・ハズ・イッツ・ソーン」、シンプリー・レッド「イフ・ユー・ドント・ノウ・ミー・バイ・ナウ」、リチャード・マークス「ライト・ヒア・ウェイティング」、シカゴ「ルック・アウェイ」、エアロスミス「ラヴ・イン・アン・エレベーター」、ボン・ジョヴィ「アイル・ビー・ゼア・フォー・ユー」、ティアーズ・フォー・フィアーズ「ソウイング・ザ・シーズ・オヴ・ラヴ」、U2「デザイアー」といったあたりで、時代を象徴するというよりは、曲がよかったといった印象である。

 

終わりの3曲は決めてあった。トム・ペティの追悼の意味もあり、覆面バンド、トラヴェリング・ウィルベリーズ「ハンドル・ウィズ・ケア」、個人的にハマりまくっていた小野リサ「カトピリ」、そして締めのエンヤ「オリノコ・フロウ」である。時代の象徴や代表曲というわけではないが、個人的にこの年といえばこの曲だろうというものを持ってきた。アナログで聴くエンヤは、意外にいい音で鳴ってくれた。必要以上のエコーが好みではないが、これはこれで悪くない選択だったと思う。

 

やはり個人的な思い入れという点では、70年代に遠く及ばないのだが、結構聴いていたんだなということも再認識した。自分としては結構落ち込んでいた時期でもあり、忘れたままにしておきたかったことばかり思い出して滅入ったりもしたが、やはりこのイベントは続けるべきなのだろう。皆さん個人的に抱えていた記憶とともに聴いていらっしゃるのだろう、遠い目をして言葉を失っている様子も見られたが、帰途につく際、「有り難う」と言っていただけるのだから、止めるべきではないのだろう。

 


   

         
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