0149 甘い一日(2018.02.11.

バレンタインデーの時期になると、つれあいが自分のためにチョコレートを買うのにお付き合いする機会がある。百貨店の特設会場は今年も猛烈な熱気に包まれているが、昔と違って義理チョコみたいなものは流行らないらしい。以前から、目新しいショコラティエのものが手に入るからと、自分のために買っていたつれあいは時代を先取りしていたのだろうか?昔はそういった場所に同伴することは避け、自分は必ずレコード屋で時間をつぶしてきたものだが、飲食店を経営する身となってからは、少しは勉強になるかと思いディスプレイの様子や包装を見に行く。混んでいる店とそうでもない店の違いはどこにあるのか、単に目新しさだけなのかを見極めるだけでも案外面白い。特設会場の中でそこだけ明らかに空いている場合、少し離れた場所から眺めていると、やはり原因が見えてくる。面白い。

 

昨日はそれでも、久々に一時間ほどすぐ近くにあるレコード屋で時間をつぶしてきた。他店の様子を見に行くことは、やはりレコード店を経営する身でもあり必要なことなのだが、ウチの場合は7インチ盤専門店としてやっているので、他店の動向はさほど参考にならない。ただ某有名店の動向は意外なほど時代を反映しており、たまに様子を見に行くと面白い。とりわけ価格動向はここ数年大きく変化しているので、むしろ見ておかないといけない。LPは明らかに二極化しており、人気のあるミュージシャンの状態のいい盤や帯付きの初回盤などは1万円前後の価格になっている一方で、人気がないものは50円や100円で叩き売りされている。もちろん自分の場合、欲しい盤はおおよそ揃っているので、新着盤などの箱をパラパラと眺めた後に廉価盤の箱をしっかり見るという行動になる。

 

いきなりアトランタ・リズム・セクションの非常に状態がいいベスト盤を100円でゲット、これは嬉しかった。店で流すのに少し前から欲しいなと思っていたブツである。他にも店のBGM用にフュージョンものを数枚買っておいた。悲しいのは12インチ・シングルの値崩れである。DJ用に一時期非常に人気があったが、最近は7インチに移行しているらしく、12インチはやはり安い。珍しい音源も含まれており、好きなミュージシャンのものは欲しい気もするが、如何せん状態のいいものはほとんどない。一時期レア音源を多く収録している「ZZ TOP CLUB」という12インチ盤がン万円の値をつけていたが、最近は普通の値段にまで下がってきている。これは値付けをするスタッフの知識の問題か、盤質の問題か、それとも人気がなくなったか。買っておくべきという気もしないではないが、予備が必要という盤でもないので止めておく。

 

さて問題は7インチ盤のコーナーだ。以前は滅多に見ている人間がいなかったのに、最近は必ず何人かいる。最近の傾向として、女性と外国人のお客さんが非常に増えているのだが、7インチ盤に関してもその傾向は同じである。珍しく30代と思しき日本人女性と、自分と同年代と思われる白人男性と3人で場所を譲り合いながら見ることになってしまった。何を求めているのかお互い横目で眺めているような気もしたが、なかなか面白いものだ。他の2人がスリーヴのない輸入盤もしっかり見ているので時間がかかるのに比べ、自分はスリーヴ付きしかチェックしないので、見て行くスピードがまるで違う。必然的に時々場所を入れ替えながらになる。要は自分が急行電車並みに各駅停車を追い越して行ったような状況だったのだ。申し訳ない。何せ都心の大手店舗は海外買い付け盤が多いので、スリーヴなしがほとんどという品揃えなのだ。有名曲、人気曲のオリジナル盤は、スリーヴがなくても2000円近くするし、レアなものは6000円程度のものもある。…要らない。

 

問題は国内盤の価格高騰の状況だ。随分高くなってしまったことに驚いた。ウチの売り物も値札を付け替えないといけないかと思う程、2~3年前とは大違いの値段になっている。LPほど高騰していないとも思うが、そもそもタマ数自体が少ないので致し方ないという気もする。そんな中からも、嬉しい収穫はあった。まずは「世界最強、レッド・ツェッペリンが繰り出すKOパンチ!君はダウン必至!!」という謳い文句の「フール・イン・ザ・レイン / ホット・ドッグ」の超美品、…これは嬉しい。次に「明日に架ける橋、レット・イット・ビーと共に輝く、ポップス史上の不朽の名作!!」という謳い文句が??のミッシェル・ポルナレフ「愛の伝説 I Love You Because」のこれまた超美品、謳い文句は言い過ぎだろうがこの値段は安すぎだろう。「ニュー・ビート “シスコ・サウンド”のスマッシュ・ヒット!!」というジェファーソン・エアプレイン「あなただけを Somebody To Love」は370円定価のオリジナル・スリーヴだ。黄色い再発盤は数多く出回っているがこれは珍しい。…これも安すぎだろう。おまけにジェファーソン・スターシップの「ジェーン」まである。この辺はお宝ザックザク状態だ。人気がないわけでもなかろうに。

 

人気があるのかないのか分からないものとしては、ビリー・プレストン「ゲット・バック」はビートルズ人脈として常に高値だったが、意外に安く入手できた。状態もよい。映画「サージェント・ペパーズ~」からのシングルだ。「ハッスル・マン・プレストンの真骨頂!」という訳のわからない売りのフレーズが楽しい。そして、80年代初頭のTV-CF、ブリヂストンPOTENZAのビーチ・ボーイズ「ファン・ファン・ファン」や、コダックのジャン&ディーン「サーフ・シティ」などは、再発盤として低価格の値付けなのだろう。しかしサブカル史を語るとき、35年以上も前のオールディーズ・リヴァイヴァル、中でもサーフ・ミュージック人気の物証でもあるこれらの盤は、実は結構価値があるのである。…ふふふ、値付けが甘い、甘い。春めいた2月の連休中日は、実に甘いおもいをした一日だった。

 


   

         
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