0158 日本人の発音もよくなった(2018.04.17.

自分が悪食なまでの何でも屋であることは強く自覚しているし、ここで何度も書いている。58歳という年齢になってもハードロックは聴き続けているし、ジャズやクラシックやブルースも当然のように聴く。古いもの好きであることから、戦前のポピュラー・ミュージックも好きなものがあるし、その一方でテクノのようなものも問題ない。ただし、オペラや演歌など、全く聴かないものはあるし、最近のR&Bもほとんど聴かない。この辺は仕事のやりくりが下手でいつも時間が足りないと走り回っている状況によるものだろうが、時間に余裕があっても、おそらくは好きなものを多めに聴くだけで、大して変わりはないだろう。結局富士の裾野よろしく、音楽の趣味が際限ないまでに広がって行っているだけなのだ。数枚が手元にあるSP盤の素性が知りたくて、いろいろ調べたりもするので、最近は小唄や端唄の類まで、ウェブで情報にあたっていたりする。古いもの好きも、戦前のジャズ程度で留めておけばよかったのだろうが、どうもいけない。

 

面白いのは邦楽に関する好みで、J-POPと呼ばれるものはそれなりに聴いてはいる。日本のロックバンドも気になるものは随分聴いていたが、最近は限られたミュージシャンのものだけになってきた。トーク・イベントのおかげで、井上陽水や松任谷由実などは聴く機会が増えているが、サザンオールスターズは以前ほど聴かなくなってしまった。洋楽好きが好むと言われる大瀧詠一や山下達郎あたりは、お客様のリクエストも多いので相変わらずターンテーブルに載せることは多いが、元々一部の曲のみが好きなだけで、手放しで好きなミュージシャンかと言われるとそうでもない。つれあいの影響で聴くスピッツのほうがまだ好きなのかもしれない。

 

先ほど、Superflyの越智志帆さんとフジファブリックの金澤ダイスケが結婚したというニュースを見て、メデタイと同時に面白いと思ってしまった。どちらも数少ない好きな邦楽ではあるが、とても同じカテゴリーで語るものとは考えていなかった。自分の勝手な思い込みをベースに書くが、Superflyは洋楽好きも普通に聴く。一方で、フジファブリックに関しては洋楽好きはまず聴かないように思う。このお二人、よくぞ接点があったなと感心したのだ。もちろん、どこぞの洋楽好きに確認したわけでもないので、全くの思い込みだと思っていただければいいが、「愛をこめて花束を」の時点ではまだ洋楽好きにアピールするまでには至っていなかったが、「Beautiful」では完全に洋楽好きも飲み込んだと感じているのだ。彼女の発声は実にJ-POP的なのだが、曲はもう和洋の差を感じさせないレベルだと思う。

 

一方のフジファブリックは、「若者のすべて」以外さほど好きな曲がないので申し訳ないが、純粋のJ-POP、洋楽好きでフジファブリックが好きな人間はいないのではなかろうかとすら感じている。繊細な歌世界とメロディは、好きな人は好きだろう。ただ、洋楽好き、とりわけロック好きにとって、あのヴォーカルはなかなか受け入れ難いものではなかろうか。要するに、洋楽と邦楽の壁を築くのはヴォーカルなのではなかろうかと思うとき、真っ先に思い浮かぶバンドでもあるのだ。洋楽好きでも聴く邦楽の代表は、やはりはっぴいえんど周辺だろうか。カルメン・マキ&OZもそうだったが、演奏もヴォーカルも洋楽レベルという言われ方だった。そういうものがなかなかなかったのだ。他にも、大瀧詠一のヴォーカルは大好きだったが、山下達郎のヴォーカルは正直なところ好きになれなかった。

 

邦楽でもR&B系のミュージシャンは歌が上手い。洋楽邦楽などと峻別する必要もない世界だ。しかし最近の自分には、あまり縁のない世界でもある。やはり言語の違いは如何ともし難いものがあるのだろうか。日本語と英語の発音はまるで違う。リズムに上手く乗せられるだけでも凄いとは思うが、それ以上に発声法がまるで違う。もう25年も前になるが、Ladoという英会話スクールで発声法を学んだことがある。これはとてもいい経験だった。どうして日本の中学高校でこのメソッドを取り入れてないのだろうかと不思議に思ったほど、劇的に発音が改善した。結局英会話のスキルは日常的に使わないとどんどん抜けていくものらしく、最近は随分いい加減なものになってしまったが、当時はビジネスクラスの上のレベルまでいけたし、北米大陸でのビジネスシーンで十分通用した。そのころは、口から顎周りの筋肉が随分しっかりしていたのではないかと思う。最近の日本人ミュージシャンも、昔と比べれば、きっと口から顎の筋肉がよく動くのではなかろうか。ラップなども一般的になってきた昨今、昔とは状況は違うのだろう。

 

すべてにおいて例外はある。テクノポップの世界では、YMOの先進性が英米のミュージシャンをはるかに凌駕していたので、むしろ日本人的なヘタな英語が、新しさと捉えられたことは否めない。迎合せず、日本的な発音で開き直って歌ったことは正解だったようだ。そういえば坂本龍一の声もあまり好きではない。むしろ高橋幸宏のヴォーカルのほうが、リズム感がいいからか、聴きやすかったように思う。最近は放っておいても、素晴らしい発音の若手が多いのでこういう話題は無用かも知れないが、1980年前後の時代ではまだまだ大きな問題だったのだ。トーク・イベント「Encore The 70s – 1979」は今週末開催である。イベントの準備をしている中、意外なもので時の流れを感じることになってしまった。

 


   

         
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