0163 70年代であり80年代でもある(2018.05.20.

毎月恒例のトーク・イベントだが、今回は「1980年」がテーマとなる。70年から79年までが70年代なのか、71年から80年までが70年代なのか、ケース・バイ・ケースで括り方が異なる。そのため、1980年という年が70年代なのか80年代なのかと明確に答えることはできないが、自分の中ではまだ70年代という感覚がある。実に面白いことに、音楽的にも70s80sが混在するのである。70年代を代表するヴェテランも頑張っていたし、明らかにそれまではなかった新しい音のヒット曲も出てくる。それこそ玉石混交の新顔が年間Top100に結構な割合で入り込んでいる。自分は浅く広く、オール・ジャンルに聴ける人間なので、それまではすべての音楽に価値を見出していた。しかし、この時期からは、ゴミとしか思えないようなものもラジオから流れてくるようになったのだ。自分は体調が悪く、大学受験も失敗して引き籠っていたので、思い出したくもない思い出が溢れている時期でもあり、この状況は悲しくもあった。

 

何はともあれ、年明けにポール・マッカートニーが逮捕されて来日公演がポシャり、年末にジョン・レノンが射殺されて悲しい思いで明け暮れた年、5月にポートランド郊外のセント・ヘレンズ山が爆発的な噴火により吹っ飛んでしまったことにビックリし、モスクワ・オリンピック不参加やオクトーバーフェストでの悲劇的なテロ事件など気分が滅入る事件ばかりだった。ずっと後から知った韓国の光州事件に関しては、全く情報が入ってこなかったように記憶している。ジョン・レノンの悲劇を伝えるFENのニュースが大騒ぎになっていたことは、今でも忘れられない。

 

さて、イベント当日はバタバタがつきものだが、今回は早め早めに動いて慎重に準備して臨んだ。何せ予約で満席である。キチンと準備しないわけにはいかないではないか。スタッフも多めに入ってもらい、資料や、データもしっかり準備したし、プレイリストも随分吟味したものになった。これで万全という気持ちで臨んだが、落し穴はしっかりあった。疲れが溜まっている自覚はあったが、店に向かう途中で具合が悪くなってしまったのだ。それでも早めに動いていたことに加え、通常営業の時間帯が比較的空いていたこともあって、少し体を休ませることができ、イベントの最中は軽い頭痛程度で済んだ。まったくもって、万全ということはあり得ないのか。

 

お客様の入りも普段よりはかなり早めだったが、ともあれ定刻スタートだ。泣く泣く選から漏れた曲などをかけながら徐々にボリュームを上げていき、18時ピッタリのオープニングはジャーニーの「お気に召すまま Any Way You Want It」だ。邦題に噴き出している方若干名、…致し方ない。続けて時代の象徴として、年間No.1、ブロンディー「コール・ミー」、No.2、ピンク・フロイド「ザ・ウォール Another Brick In The Wall (PartII)」だ。この年ピンク・フロイドは人気が再燃し、1973年にリリースされた「狂気 The Dark Side Of The Moon」も年間アルバム・チャートの第80位にランク・インしている。さらには、スティクス「ベイブ」、ルパート・ホルムズ「エスケイプ」、フリートウッド・マック「セーラ」と続けた。

 

ここから新興勢力の紹介だ。プリテンダーズ「キッド」、リップス(Lipps,Inc.)「ファンキータウン」、M「ポップ・ミュージック」、ゲイリー・ニューマン「カーズ」だ。楽器の音云々の時代ではなくなったことを嘆き、それでもゲーム・ミュージックの源流とも言える先取り感、意外なほどポップで親しみやすいメロディの名曲群である。ここで、前回からお願いしている戸叶さんのコーナーを挟むことにして、オルタード・イメージ「ハッピー・バースデイ」を紹介していただいた。正直言って、「聴いたことある」といった程度の知らないに等しい曲だ。これだから楽しい。人の好みは千差万別、80sは特に多様性の時代でもある。

 

新興勢力コーナーの後半は、パット・ベネター「ハートブレイカー」、エアプレイ「スイート・ボディ」を紹介した。ここからAORブームに展開し、TOTO99」、ラーセン・フェイトン・バンド「アズテック・レジェンド」、ロビー・デュプリー「ふたりだけの夜 Steal Away」、アンブロージア「ビゲスト・パート・オブ・ミー」、クリストファー・クロス「風立ちぬ Ride Like The Wind」などを紹介した。ジャジーな一曲は苦渋の選択となったが、高中正義を諦め、渡辺香津美「ユニコーン」とした。スペクトラムも忘れ難い存在だったが、「イン・ザ・スペース」を開始直前にかけてしまった。

 

邦楽は1曲のつもりだったが、直前まで悩み、結局、久保田早紀「異邦人」と山下達郎「RIDE ON TIME」の2曲をかけた。やはり時代を象徴する曲である。今回、山下達郎に関しては、ユーミンやサザンオールスターズなどとともに、代表的な邦楽のシングルとアルバムのリリース年月日の資料も用意した。この時代の邦楽の密度の濃さが見てとれ、なかなか面白いものになったと自負している。

 

ブラック・ミュージックに関しては、大ディスコ・ブームのピーク直後、もう有名どころでお茶を濁すしかない。マイケル・ジャクソン「ロック・ウィズ・ユー」、スティーヴィー・ワンダー「マスター・ブラスター」、ダイアナ・ロス「アップサイド・ダウン」の3曲を選んだ。そして映画関連は、面白いものがないと言いつつ、ブルース・ブラザースは選曲が難しいということで、年間Hot100No.3、オリビア・ニュートン・ジョン「マジック」を選んだ。実はこの年、年間123はすべて映画関連なのである。

 

思い切り時間が押してしまったので、ここらで語ることは止めにして、残る時間はまずはブリティッシュ・ロックの代表曲、そして時間が残ればアメリカン・ロックもということにした。まずは英国勢、ジェフ・ベック「エル・ベッコ」、クイーン「愛という名の欲望 Crazy Little Thing Called Love」、ポール・マッカートニー&ウィングス「カミング・アップ」、ピート・タウンゼント「ハートの扉 Let My Love Open The Door」、ジェネシス「ミスアンダースタンディング」、ウルトラヴォックス「ニュー・ヨーロピアンズ」を選んだ。米国勢は、イーグルス「ハートエイク・トゥナイト」、映画「アーバン・カウボーイ」からのシングル・カットでジョー・ウォルシュ「オール・ナイト・ロング」、昨年10月に亡くなったトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ「危険な噂 Don’t Do Me Like That」ときたところで時間切れとなった。

 

トリはどうしてもジョン・レノンでなければということはご理解いただけるだろう。ジョン・レノン&オノ・ヨーコ「スターティング・オーバー」で締めることとなった。皆さんそれなりに満足はしていただけたようだった。それでも、やはり時間切れの曲もということで、ビリー・ジョエル「ユー・メイ・ビー・ライト」、リンダ・ロンシュタット「ハート・ソー・バッド」、ボブ・シーガー「アゲインスト・ザ・ウィンド」、J・ガイルズ・バンド「ラヴ・スティンクス」などをアフター・アワーズに楽しんだ。

 

今回は、セント・ヘレンズ山の噴火の映像を紹介したところで、ハワイのキラウエア山の噴火活動による被災者支援のためのカンパを行っていることも紹介し、多くのご寄付を頂戴することになった。皆様のご厚意にあらためて感謝することとしたい。本当に有り難うございました。

 

 


   

         
 Links : GINGER.TOKYO  saramawashi.com  Facebook  
 Mail to :  takayama@saramawashi.com     
 Sorry, it's Japanese Sight & All Rights Reserved.