0167 1981年もトリは…(2018.06.17.

毎月恒例のトーク・イベントは1980年代突入である。1980年が70s的な音楽と80s的な新奇色の濃いものがないまぜになっていたのに対し、1981年はすっかり80s色に染まっている。面白いのが、古くから活動しているミュージシャンでも、しっかり80sっぽい音になったことだ。反論はあるかもしれないが、ポップで元気でゴージャスな80sというイメージが好きでもあるし、こればかりだと疲れるなとも思う。正直なところ80sっぽい音質はあまり好みではないが、メロディアスで好きな曲が多い時期でもある。自分は年齢的に21歳、大学生ともなれば好きな曲のレコードを購入する場合はLPである。さすがにこの時期に購入した7インチ盤シングルはほとんどない。レコ屋でも7インチを売っている店は限られていた。CDに切り替わった頃に、50円程度で売られていたものを救出するような感覚で購入したものが多くなる。イベントの方針として、できるだけアナログ盤、しかも極力7インチ盤でお聴かせするようにしているのだが、この辺から難しくなってくる。また映像で観たくなるものが増えるので、メディアの選択に悩むということにもなる。

 

先月のイベントの直前に買い換えたレーザー・プリンタが新品にもかかわらず不調で、資料を早めに作ることになってしまった。80年代の社会事象はバブル崩壊に向けての10年を俯瞰できなければ語れない。資料は以前に80sをやったときと同様、81年から89年までの9年間となる。年表も3年を1ページに突っ込んだ簡略版だが、全体的に情報量が多すぎるので、この程度で十分とも言える。初めて参加される方は、カフェで音楽を聴かせるイベントで40ページ超の資料が配られ、現代史やサブカル人類学的な講義を聴かされるとは思っていないだろうから、当然驚くことになる。常連さんはその様子を見て笑っているといった有り様だ。

 

イベントは定刻にスタートした。まずはいつも通り、時代を象徴する曲を7曲続けて紹介したわけだが、スタートはやはりこれだろう。ローリング・ストーンズ「スタート・ミー・アップ」のイントロが心地よい。次にリック・スプリングフィールド「ジェシーズ・ガール」、ビルボードの年間チャートでアルバムが1位となったREOスピードワゴン「テイク・イット・オン・ザ・ラン」、シングルが1位となったキム・カーンズ「ベティ・デイヴィス・アイズ」というこの3者は遅咲きという共通点がある。下積みが長く、ようやく出たヒット曲というわけだ。続けてホール&オーツ「キッス・オン・マイ・リスト」、ブルース・スプリングスティーン「ハングリー・ハート」、そしてスティクス「ザ・ベスト・オブ・タイムス」の3曲は、さすがに皆さんよく知ったもので、いろいろな声が聞こえてくる。

 

ここからは新興勢力もいろいろなタイプが出てきたということで、まずはホンダ・シティのCMを観ながらマッドネス「イン・ザ・シティ」をアタマだけ紹介する。不況に喘ぐ英国では、アメリカと全く違ったものが流行するようになっていた時期でもあり、しかもアメリカでその音楽が認知されるまではもう少し時間がかかる2トーンのスカ・ビートや、コックニー訛りのよく聞き取れない英語が特徴ともいえる労働者階級から支持された音楽について語ることになった。ボブ・マーレーが亡くなった年でもあり、ジャマイカを起源とするスカに加え、ブロンディーがいかにも当時のスタイルのレゲエでカヴァーしたパラゴンズの「夢見るNo.1 The Tide Is High」も違って感じられるというものだ。同じ英国でも、プログレ・バンドのドラマーがピコピコ音に乗せて歌うフィル・コリンズ「イン・ジ・エアー・トゥナイト」は素晴らしい音質だ。独特の新しさを提示する音楽ではあった。一方でオールド・ウェーヴとやっていることはさほど違わないのに、全く新しく感じられたラヴァーボーイ「それ行け!ウィークエンド Working For The Weekend」(我が人生のアンセムだ)も実にいい音で鳴る。いやはや気持ちがよい轟音だ。

 

ここで恒例となった某戸叶氏のコーナーでは、今回も自分では絶対に選ばないであろうバウ・ワウ・ワウ「ジャングル・ボーイ」をご紹介いただいた。面白い。やはり英米の状況の違いが浮き彫りになる一曲ではある。さらにここからは、相変わらずのAOR/フュージョン・ブームということで、スティーリー・ダン「ヘイ・ナインティーン」、デヴィッド・サンボーン「ラン・フォー・カヴァー」、リー・リトナー「ミスター・ブリーフケース」と続けた。完全に自分の好みの押し付けである。グローバー・ワシントン・ジュニア「ジャスト・ザ・トゥ・オブ・アス」は長すぎるということを理由にイベント終了後におかけするということにした。また日本人は、大瀧詠一「君は天然色」一曲だが、日本人の進化という話題ついでに、ネット上で話題になっている8歳の天才ドラマー少女が叩く動画なども紹介してみたりした。「ルビーの指環」もイベント終了後でというところが落としどころだろう。

 

ブラック・ミュージックは、まずクール&ザ・ギャング「セレブレーション」のヴィデオを観てから、大定番スティーヴィー・ワンダーの「疑惑 I Ain’t Gonna Stand For It」とダイアナ・ロス&ライオネル・リッチー「エンドレス・ラブ」と続け、そのままサントラに突入だ。ここではAORの代表とも言えるクリストファー・クロス「ニュー・ヨーク・シティ・セレナーデ Best That You Can Do」をお聴かせした。そしてもう一曲は完全に個人的な趣味、クラウス・ドルディンガーによる「Uボート Das Boot」の重苦しい曲をお聴かせした。本来ならジョン・レノンに続いてレーガン大統領まで銃撃された、ヴェトナム後遺症に悩むアメリカと戦争映画の歴史なども語りたかったが、いくら時間があっても足りないので、多くは語らずクラウス・ドルディンガーのもう一つの代表作「ネヴァー・エンディング・ストーリー」について少々語って終わりにしてしまった。個人的には少々残念だったところである。

 

ここまでは予定より5分程度の遅れでこぎつけた。ここからはランダムにヒット曲をかけまくるわけだが、今回はもう少ししゃべりを増やして欲しいというご要望をいただいたりもしたので、一応解説を加えながらにした。予定よりかけられる曲数は2曲ほど減ったがそれでも34曲、なかなか楽しい3時間ではあった。終盤のラインナップは、ジャーニー「クライング・ナウ Who’s Crying Now」、ビリー・スクワイア「ザ・ストローク」(合わせて「イン・ザ・ダーク」もちょっとだけかけた)、ムーディ・ブルース「ジェミニ・ドリーム」、クイーン「地獄へ道づれ Another One Bites The Dust」、スティーヴ・ウィンウッド「ホワイル・ユー・シー・ア・チャンス」、シーナ・イーストン「モーニング・トレイン(9to5)」、AC/DC「バック・イン・ブラック」、マンハッタン・トランスファー「ボーイ・フロム・ニュー・ヨーク・シティ」、スティーヴィー・ニックス・ウィズ・トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ「ストップ・ドラッギン・マイ・ハート・アラウンド」といったところである。

 

今回もトリ、トリ前はジョン・レノン関連とならざるを得ないだろう。トリ前にジョン・レノン&ヨーコ・オノ「ウーマン」、そしてトリがジョージ・ハリスン「過ぎ去りし日々 All Those Years Ago」とした。本来ならリンゴ・スターに提供されるはずだった曲を急遽レノン追悼曲としたものである。ポール・マッカートニーやリンゴ・スターも参加しており、この場に最も相応しい曲ではあろう。ただしお客様の反応はイマイチだったように感じた。少々肩透かしとなってしまったか?

 

イベントは一旦終了とし、その後はグローバー・ワシントン・ジュニアなどかけられなかった曲を30分ほどかけている間に三々五々お客様が帰って行かれるところを見送ったわけだが、一応皆さん満足はしていただけたようだ。それでも、今回も前回に引き続きギュウギュウ満席となってしまった。次回以降運営方法をもう少し綿密に検討しないといけなくなってしまったようだ。さて、どうしたものか…。次回は714日(土)、3連休の初日だ。いよいよ選曲が難しい時期に突入する。これまでの好きな曲が多すぎて困るというのではなく、時代を象徴するようなヒット曲だけで30曲をゆうに超えてしまうから、好きな曲がかけられないという悩みなのである。さて、困った、困った。

 


   

         
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