0170 "The 1969"2018.07.22.

文字通り酷暑の夏、やりたいこともいろいろあって、妙に精力的に動いている。あまりの暑さに集中力を欠きそうだが、それ以上に時間がないという切迫感が上回っており、何とか目の前の課題をこなすことで毎日が過ぎていく。カフェの経営というものの難しさに呆れつつも、何故こういった場を作りたかったかという原点に立ちかえれば、やらないといけないことが見えてくる。結局のところ、「たった一回しかない人生、やりたいことはやってから死にたい」という基本スタンスで優先順位をつけていくしかない。他人に任せられるものは任せる勇気も必要だし、自分の人生と向き合い、折り合いがついているのかというところまで考えれば、今やるべきことが見えてくる。

 

昨夏7月に義母やイベントの常連だった方、また自分の当面の目標としていた方などが次々亡くなり、非常に寂しいおもいをした。先週義母の一周忌法要を終えて、自分に残されている時間も少ないと実感し、一層自分のやりたいことだけをやるというメリハリのついた行動に突き動かされることとなった。何だかんだ言ったところで、音楽に生かされているような人間なのだ。音楽とともに時代を振り返るイベントをやっていることは、自分自身にとっては実に理に適っているのだ。音楽好きな方々と楽しんでいる時間とも言えるが、結局は自分自身のためにやっているわけで、選曲で悩むことが既に意味のある行為となっている。我が人生を彩った曲を振り返り、「この曲、好きだったなあ」とついつい針を落とし、思索する時間のなんと充実していることか。…やり残したことはないはずだが。

 

以前からもう少し古い時代のものをもう一度やって欲しいというご要望があった。既に2巡して1980年代に突入しているイベント本体とは別に、平日の夜、少し趣を変えてやってみたいという気持ちは自分にもあった。これまでは1回に30曲程度かける曲を選び出し、その曲の背景を語ることに重点を置いてきたのだが、もう少し時代背景から説き起こし、自分がどういう立ち位置で、何を考えながらこの曲を聴いていたかという視点から語ることに軸足を置いてやってみたいのだ。傍から見ている限りは大して差がない内容に映るだろうが、自分自身にとってはかなり大きく違うことになる。これまでは、「大人が参加して楽しめる音楽イベントがない」という声をうけ、DJイベント的なものではなく、もう少し知的に時代を語りながら音楽を楽しむオーディオイベント的なものというスタンスだった。勿論それは自分であれば環境も整っており、難なくできるからという理由でご要望をいただいたわけで、基本的に他人様に向けたサービスなのである。

 

そんなわけで、水曜夜に古い曲をかけるイベントをやろうということになった。1970年代の音楽に関しては語り尽くせない思い入れもあるが、せっかくなのでロックが最も熱かった1969年から再スタートすることにした。自分は1960年生まれなので、9歳すなわち小学校3年生から振り返るということになる。さすがにリアルタイムで聴いた記憶があるのは邦楽だけである。洋楽を聴き始めたのは、小学校4年生のときからだ。自分は1年生が山口県下関市、2年、3年が広島市、4年、5年、6年生が東京都板橋区の小学校に通っていた。つまるところ、田舎者の山猿には東京の小学校の水が合わず、現実逃避的にラジオから流れてくる洋楽にハマって行ったという訳だ。

 

後々遡って古い洋楽曲聴くようになってからは、1969年がいかに素晴らしい年であるか思い知ることになるのだが、リアルタイムでは聴いていない。むしろ日曜日の夜に放送されていた音楽番組でヒット曲が流されるわけで、月曜日が大嫌いだった小僧がヒット中の歌謡曲を聴いてお腹が痛くなりそうな憂鬱な気分になった記憶のみが蘇ってくる。具体的には、いしだあゆみ「ブルー・ライト・ヨコハマ」とピンキーとキラーズ「恋の季節」の2曲は前年リリースだが、ロングラン・ヒット(昔はヒット曲の寿命が長かった)だったので1969年の曲として刷り込まれている。 もっと言えば、東京に引っ越すために泊まっていた宿で聞こえた、遠くを列車が走る音と重なる「ブルー・ライト・ヨコハマ」は、今でも時々夢に見て嫌な気分になる最悪の思い出なのである。

 

1969年には、ステッペンウルフ「ワイルドでいこう! Born To Be Wild」、シカゴ「長い夜 25 or 6 to 4」、クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル「プラウド・メアリー」、ローリング・ストーンズ「ホンキ・トンク・ウィメン」などがヒットしており、そしてレッド・ツェッペリンやキング・クリムゾンのファースト・アルバムなどがリリースされた。ウッドストック・フェスティヴァルでジミヘンやサンタナの名演が繰り広げられ、映画では「2001年宇宙の旅」「ロミオとジュリエット」「明日に向かって撃て」「真夜中のカウボーイ」などといった、重要なサントラ盤がリリースされた、まさにロック史上の重要曲だらけの年である。日本国内ではカンツォーネ・ブームもあり、ジリオラ・チンクェッティ「雨」もヒットしていた。「恋の季節」や「ブルー・ライト・ヨコハマ」と共に、必聴曲満載のイベントとなることだろう。

 

 

 


   

         
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