0175 1969年の記憶(2018.08.12.

毎月恒例のトークイベントは1980年代に突入し、参加される方々も妙に盛り上がっている。やはり洋楽がお茶の間に流れ込んできた時期とでも言うべき時代、しかもバブル経済華やかなりし頃、実に楽しかったわけで、この時代が好きな方が多いことは十分に納得できる。その一方で、音楽好きで一定年齢以上の方や、度を超えた音楽好きは、どうしても60年代70年代の方に行ってしまう。再度70年代をやって欲しいというご要望は何人もの方から頂いており、自分も好きな時代なので、何とかしたいと思っていた。そして、水曜夜に少人数でやることにしたのだが、果たしてどんな時間を共有することになるのだろうか。誰もが当時の記憶を蘇らせやすいようにする工夫というものがどういうものか、これまで以上に試行錯誤している次第である。

 

ロックが最も熱かった年として語られる1969年も、語り始めたらキリがないが、如何せん自分もようやく音楽を聴き始めた頃で、リアルタイムではない。やはり当時リアルタイムでレコードを買って聴いていた人間が羨ましい。とはいえ、各人の記憶はそれぞれの地域や当時の年齢次第で異なったものとして形成されているので、自分のような人間が語り過ぎてもいけない。淡々とヒット曲を紹介し、当時の世相を象徴する映像を映し、可能な限り幅広い資料を作成するだけだ。70年代をもう一度というご要望に応えて1969年から再スタートするのはいろいろな理由があるが、やはり67年ごろからの年表に目を通した上で、その延長線上にある1970年代を俯瞰したいということが最大の理由である。当然ながら、その頃の曲にいいものが多いという理由も大きい。

 

さて、先日再スタートを切ったトークイベントは、シンプルに「MUSIC & TALK」と題して、これまでのものよりも少し曲数を減らして語る時間を増やすことにした。何はともあれ、時代を象徴する曲として、まず北米はステッペンウルフ「ワイルドで行こう!Born To Be Wild」、ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ「スピニング・ホイール」、クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル「プラウド・メアリー」、シカゴ「アイム・ア・マン」、スリー・ドッグ・ナイト「ワン」、アイアン・バタフライ「イン・ア・ガダ・ダ・ヴィダ」、ジャニス・ジョプリン「サマータイム」といったところだ。当時のヒット曲という選曲眼ではなく、そのアーティストの本質を見誤らない曲を選んだつもりだ。

 

英国勢は、キング・クリムゾン「21世紀の精神異常者」、レッド・ツェッペリン「グッド・タイムス、バッド・タイムス」、ローリング・ストーンズ「ホンキー・トンク・ウィメン」、ザ・フー「ピンボールの魔術師」、ジェフ・ベック・グループ「監獄ロック Jailhouse Rock」、ビートルズ「ゲット・バック」といったあたりである。ブラインド・フェイスは時間が押してきたのでカットし、終了後に流すことにした。ベタな選曲かもしれないが、この辺は言い始めたらキリがない。アーティストはほぼ固まってしまうので、曲は少々ベタと思われる方向性にした。

 

日本独自のヒット曲もある。サンレモ音楽祭の説明と共にジリオラ・チンクエッティ「雨」を聴きつつ、68年から始まったオリコンの年間ランキングを眺め、数曲ちょい聴きするということもしてみた。準備には時間がかかるが、当時の記憶を蘇らせる手段としては、なかなか効果はありそうだ。邦楽はピンキーとキラーズ「恋の季節」が前年から引き続きロングラン・ヒットになっていたことや、自分のトラウマ的記憶に関係する曲として、いしだあゆみ「ブルー・ライト・ヨコハマ」などを聴いてみた。他にもタイガースや由紀さおりなどドーナツ盤の現物がある曲は多く、結構懐かしい時間帯となった。

 

テレビ・映画は、如何せんビルボードのシングル年間1位がアーチーズ「シュガー・シュガー」である。アニメとともに紹介し、映画は「2001年宇宙の旅」、「ロミオ&ジュリエット」、「明日に向かって撃て」、「真夜中のカーボーイ」と、人気サントラ曲中心だ。ブラック・ミュージックは、マーヴィン・ゲイ「悲しいうわさ I Heard It Through The Grapevine」、貴重なヴィデオでスティーヴィー・ワンダー「マイ・シェリー・アモール」、そしてフィフス・ディメンション「輝く星座 Aquarius」といったあたりである。他にもかけたい曲は多いが、そうも言ってはいられない。時間はかなり押してしまった。

 

その他のヒット曲では、ウッドストックの映像から、ジミ・ヘンドリックスの「Star Spangled Banner」、ドアーズ「タッチ・ミー」、ジョー・コッカー「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」、ゾンビーズ「ふたりのシーズン Time Of The Season」、クロスビー・スティルス&ナッシュ「組曲:青い瞳のジュディ」、ビー・ジーズ「若葉のころ First Of May」、そしてトリはサイモン&ガーファンクル「ボクサー」とした。

 

196812月にアポロ8号から撮影された「地球の出 Earthrise」という一枚の写真のおかげで、第一次エコロジー・ブームが起こり、70年代初頭まで多くのアーティストにもその影響が見受けられる。そういったことも含め、後追いで知った世代である自分たちは、当然ながら東大紛争など学生運動も醒めた目で見ていた。実に嬉しくない影響も引きずりながら、三無主義やらシラケ世代などと言われつつ、ヴェトナムのニュースなどをどうすることもできない遠い国の出来事として見ていた。我々の世代には我々なりの1969年があり、1970年代がある。当時の記憶を蘇らせ、また記憶を整理しながら、各人が自分自身の人生と向き合い、語り合う。この時間はその場の空気をシェアした人間でなければ理解できないだろうが、なかなかに意義深いものなのである。次回は829日(水)1830分から、お題は「1970年」、お待ちしております。

 


   

         
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