0184 ネタが多すぎるagain2018.10.13.

1986年に日本で公開された映画の一覧をA4一枚にまとめてみたら、とんでもないことになってしまった。この年に公開された映画は300本以上あり、とても読めた文字サイズではない。それでもおもしろいので、このままイベントではお配りしてみようかと考えている。こういう時代だったのだということが一目で分かってよいではないか。好景気真っ只中、アクションものを中心として派手な映画が多かった。地味で内省的な映画も好きなので笑えるラインナップだが、今更ながらに時代の空気感というものかと再認識している。シルベスター・スタローンは「ロッキー4」と「コブラ」、アーノルド・シュワルツェネッガーが「コマンドー」と「ゴリラ」、さらには「パンピン・アイアン」もあるのだから、筋肉ムキムキな時代でもある。あまり筋肉を強調してはいないが、ルトガー・ハウアーの「ヒッチャー」も忘れられない一本ではある。

 

「アイアン・イーグル」と「トップガン」というキャラがかぶった2本は、サントラ盤も結構派手で面白かったのだが、軍配はトップガンに上がってしまうのだろう。「アイアン・イーグル」はカーマイン・アピスが率いるキング・コブラが楽曲提供しており、それだけでもオススメである。音楽と関係ない部分では「エイリアン2」という、忘れようにも忘れられない強烈な一本もこの年だ。少々地味だったかもしれないが、ストーリー的にはとても面白かった「レモ/第1の挑戦」も大好きな映画だった。カラテやカンフーなどといったアジアの武道が注目を集めていた時期でもあったわけだ。

 

この年はジム・ジャームッシュの作品が注目を集めた年でもある。「ストレンジャー・ザン・パラダイス」は1984年制作の映画だが、日本では1986年の4月に公開された。11月には「ダウン・バイ・ロー」も公開され、モノクロ映画の魅力にハマった人間もいた。またミュージシャンが出演していることでも話題になり、ジョン・ルーリーやソニック・ユース、そしてトム・ウェイツといったミュージシャンを知るに至った。とりわけトム・ウェイツはこの後すべての音源を聴き漁り、その後リリースされた作品はすべて発売日に買うほど好きになったわけで、ジャームッシュ・ブームには感謝している。観る映画の幅も広がったし、聴く音楽も劇的に多様化してしまった。結果的にはジャズやブルースをディグする日々に突入するわけだが、そのキッカケの一つはここにあった。

 

そして、ジャームッシュ好きには意外がられることになるが、自分は一連のジョン・ヒューズ作品も何気で好きだった。19865月に日本公開されたブラッド・パックの代表作「ブレックファスト・クラブ」ではそれほど惹かれたわけではなかったが、8611月公開の「プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角」と、87年公開の「恋しくて Some Kind Of Wonderful」は大好きだった。何気に音楽好きが気になる要素が散りばめられていたり、「プリティ・イン・ピンク」にはドゥイージル・ザッパが出演していたり、まあいろいろだ。「恋しくて」にはリー・トンプソンも出演していた。彼女は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ばかりが注目されるが、86年には「ハワード・ザ・ダック」という侮れない映画にも出演している。リー・トンプソン&ザ・チェリー・ボム・フィーチャリング・トーマス・ドルビーの「ハワード・ザ・ダック」は86年の隠れた名曲である。

 

さてさて、そんなわけで、1986年のイベントが近づいてきた。ダブルヘッダー開催で参加者の予約数記録更新となっている中、当然ながらいい加減なことはできない。もちろんする気もない。資料もこれまでよりもかなり枚数が増えている。曲はある程度選び出してあるものの、これから最後の詰めで地獄の取捨選択が待っている。当日の気まぐれで変更できる余裕は残しておくつもりだが、定番曲だけでも30曲はゆうに超える。どうしたものか。ちなみに資料の枚数が増えていることの原因は音楽でも映画でもない。最低限の情報しか載せていない年表の補足資料が凄いことになっているのだ。チェルノブイリ原発事故のその後の状況や、大規模都市再開発のさきがけ、アークヒルズの20年近くに及ぶ開発の経緯の資料などである。

 

結局のところ、「DJイベントではない」大人のための音楽イベントなのだという部分が、支持されている要因だとすると、やはり時代の空気感を蘇らせるべく配布している年表や流行などの資料も大事な部分だということになる。「トークを増やすべきか減らすべきか」ということに関しては、以前は両方のご意見を頂戴したが、最近は「トークを増やせ」というご意見が大半なのである。皆さん「1曲減らしてもいいからトークを充実させるべき」ということをおっしゃっていただけるので、以前よりはかなり多めにしゃべるようにしている。結局のところ、イベント終了後に30分ほどは落選曲をかけたりしているし、開始前も関連曲をかけたり映画のトレーラーを流したりしているので、正味3時間半のイベントになっているだけなのである。要はネタが多すぎるのであって、地獄の取捨選択にも限界があるということをご理解いただきたい。毎度遅くまで引っぱってゴメンナサイ。

 


   

         
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