0188 時間感覚(2018.11.11.

過日、トークイベント「Music & Talk “The 1973”」を開催した。1973年の曲を30曲ほどお聞かせしながらしゃべくりまくったわけだが、どうも水曜夜に開催しているせいか、参加者は非常に少ない。土曜夜のイベントは毎度満席になっているので、PR方法が悪いとかいうことでもなさそうだ。やはり皆さん平日はお忙しいのだろうか。それでも参加された方は非常に楽しめたようなので今後も続けようとは思う。参加者が少ないからといって手を抜くわけではない。準備にかかる時間は同じだし、資料もキッチリ作り込んでいる。将来的にはそれなりの資産になりそうな情報が集積していくので、アレンジしながらいくらでも面白そうなイベントができそうだ。結局のところ、時間をかけないとできないレベルのものを集積しているということは、一朝一夕では到達できない価値を生むことになるので、悪いことではない。

 

結局のところ、我がGINGER.TOKYOはオタクの熱量を放出しているスポットになってきた。GINGER.TOKYOでは、現在、別役ちひろさんの教会建築の写真展を開催しているが、これも相当のオタク度で全国の教会建築をカメラに収めて回っているわけで、トークショーなどをやっても中身の濃さに驚かされる。宗教色は薄いが、美しいものを追及することに対する拘りは相当のもので、やはりトークを聞かされる側は圧倒される。昔のオタクは内に籠る傾向にあったが、最近はそうでもないらしい。SNSやブログなどでだれもが発信する側になれる昨今、好き者同士で繋がれることもあり、お互い情報を補填しあうこともできる。モチベーションも上がるわけで、レベルアップにも貢献するというわけだ。

 

昨夜開催したトークショーも、よくよく見ると、参加者がみな何かしらのメディアで情報を発信しているような人間だったように思う。ふざけてお互いにカメラを向け合っている姿などは笑えるが、かなり真剣に活動されている方々でもあり、一定の熱量を放出している人間が集うと場の空気が凄いことになる。それなりに専門性が高い分野で活躍している方もいらっしゃるので、意外な目線の意見も飛んできたりする。自分の場合は、歴史の中である一瞬を切り取る目線でものを見る傾向にあることを紹介してみたところ、フリートークになったところで、次から次へとつかまって意見交換することになった。皆さん普段からメディアで活動されていることに加え、個人的に考えていることもあるようで、そういったことを発するいい機会になったようだ。ジャンルの違うオタクが、お互いにリスペクトし合いながら意見交換をしているようなその場の空気感は、なかなかに面白いものではあった。

 

さて、そうこうしているうちにも季節は移ろいゆく。年末進行などといった言葉がちらほら聞こえるようになり、慌ただしさは加速していく。今年ものんびり文化芸術の秋を楽しむという余裕はなさそうだ。自分で自分の首を絞めるように、今月はあと2度イベントを開催することになっている。相変わらず人気の1980年代ものはすでに87年まできており、前回ほどではないが、早々に満席となってしまった。一方で1970年代のほうは開催できるのか心配になるほどだが、1974年は自分が14歳の年、勿論大好きな時代だ。イベントの準備自体が楽しくてしょうがないということになる。やらないという選択肢はない。

 

1987年は既にデジタル優勢の時代になり、あえてアナログ盤で聴きたいと意識しない限り、CDで買うのが一般的になってしまった時代である。ただし過渡期的な時期でもあり、「カセットテープにダビングして、ウォークマンで聴く」というスタイルが定着しているので、中古盤市場に出回っているアナログ盤の状態は非常によいものが多い。一回しか針を落としてないような美品が多く、嬉しい時期でもある。盤そのものはペラペラに薄いものが多く、取扱注意となる。昨今発売されるものがほとんど重量盤であることをあざ笑うかのように、薄い盤であっても驚かされるほどいい音で鳴る。やはり、50年近くの時間をかけて培われてきたアナログ・オーディオの技術は、もうこれ以上はないという高みに達しており、透明度も空間的の広がりも素晴らしいものがある。何度も書いていることだが、ブルース・ホーンズビーのレコードなどは、極め付きに高音質で鳴る。オーディオに拘らない自分のような人間にとって、非常に有り難い盤なのである。

 

最近のことのように思うが、1987年はもう30年も前のことなのである。昭和の末期であり、まだパソコンも一部のオタクのものであって、Windows95がリリースされるまでにはまだ数年ある。携帯電話もなければインターネットもなかった時代なのだ。それなりに昔の話をしているのに、自分にとっては至極最近のことに感じられてしまう。実際、自分の手元にとても30年の月日を過ごしてきたとは思えない、新品のような盤が何枚もあるからだ。どうやら自分の時間感覚を司る脳は、アナログ・レコードによってかなり歪められているらしい。勘違いをしてしまうことは恐ろしいが、それはそれで面白いとは思う。明らかにボケ爺の戯言である。

 


   

         
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