0189 バブル期の空気感(2018.11.19.

トークイベント「Encore The 80s - 1987」が無事終了した。一旦満席になってご予約を打ち止めにしたものの、5席ものキャンセルが出てどうなるかと思いきや、結局ほぼ満席に近い状態で開催することができた。いやはや、有り難いことこの上ない。当日のドタキャンもあったが、店側としてはちょうどよい具合だったと思う。パツパツ状態となると、ドリンク等のオーダーが捌ききれずにバタバタするので、ほぼ満席というのが理想的なのである。あまりにお客様が多いと、回覧したレコードを回収するにしても厳しいことになるのだ。如何せんバックヤードがない状態で無理やり運営しているカフェなので、本当にスペースの余裕が無く、普段からいろいろ苦労しているのである。

 

さて「1987年」、前年にアナログ・レコードがCDにオーバーテイクされ、もうアナログで聴きたいということを意識してないとアナログでは購入しない時期になってしまった。準備しなければいけないレコードの枚数がこれまでに比べると激減するが、当然その分、CDが増えてくる。実際のところ、ミュージック・クリップを観ながらの方が記憶も蘇り易いので、PCをポチッ、ポチッっとやっているだけの部分が多く、体力的にもラクをさせてもらうことになる。ミュージック・クリップでお聞かせする場合は、音質的な満足度は低いものの、やはり成熟してきた動画作成の技術が見てとれる時期でもある。大好きなクリップでもあるクラウデッド・ハウス「ドント・ドリーム、イッツ・オーヴァー」でスタートしたのも、続けて個人的にアナログ・サウンド最高の一枚と認識するブルース・ホーンズビィ&ザ・レインジ「ザ・ウェイ・イット・イズ」を早い段階でご紹介したのも、こういった部分をご紹介したかったからである。

 

時代を象徴する曲として続けたのは、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース「ジェイコブズ・ラダー」、これはやはりブルース・ホーンズビィの作曲である。そして、U2「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」、スティング「ウィル・ビー・トゥゲザー」、年間Hot100No.1バングルス「ウォーク・ライク・エジプシャン」、No.2ハート「アローン」、No.5スターシップ「ナッシングズ・ゴンナ・ストップ・アス・ナウ」といったところである。31年前のヒット曲だが、まるでちょっと前のように感じてしまう。確かに古さを感じないかと言われると感じるし、いかにもバブリーな印象もある。1970年代の曲群との違いがそう感じさせるのだろうか?

 

戸叶さんのコーナーではパティ・スマイス「ダウンタウン・トレイン」をご紹介いただいた。英米のサウンドの違いを意識しない時期にもなってきたが、意外にアメリカンな曲できたところが面白い。この時代特有の新しさを感じる音が印象的だ。同様にスイング・アウト・シスター「ブレイクアウト」、カッティング・クルー「ダイ・イン・ユア・アームス」あたりも新しいサウンドといった印象だった。その一方で安定の旧来型、ブライアン・アダムスは「ヒート・オブ・ザ・ナイト」、そしてグラミー賞レコード・オブ・ザ・イヤーはポール・サイモン「グレイスランド」である。ジャンルが細分化していった時代でもあることを象徴する曲でもある。

 

相変わらずHR/HMブームは続いている。デフ・レパード「ポア・サム・シュガー・オン・ミー」、ボン・ジョヴィ「リヴィン・オン・ア・プレイヤー」、ホワイトスネイク「ヒア・アイ・ゴー・アゲイン」、シンデレラ「ノーバディズ・フール」などを、いろいろ工夫を凝らしながらご紹介してみた。「ヒア・アイ・ゴー・アゲイン」の聴き比べなどはやはり面白い。一方でAORやジャジーな曲としてご紹介したのはビリー・ヴェラ&ザ・ビーターズ「アット・ディス・モーメント」、そして忘れてはいけない名曲パット・メセニー・グループ「ラスト・トレイン・ホーム」で涙した。

 

邦楽では、映画「私をスキーに連れてって」で使われたユーミンの「ブリザード」をフィーチャーしたが、ほかにも久保田利伸「タイムシャワーに射たれて」や、ねるとん紅鯨団のオープニング曲、鉄腕ミラクル・ベイビーズ「トーク・ショウ」もご紹介し、併せて上海紅鯨団のオープニングなども観てみた。ソウル/R&B系はマイケル・ジャクソン「バッド」とジャネット・ジャクソン「コントロール」の長尺ヴィデオを代表とした。凝ったヴィデオ制作も時代の象徴ではないか。

 

映画では「アメリカ物語」からリンダ・ロンシュタット&ジェイムス・イングラム「サムホエア・アウト・ゼア」、ロス・ロボス「ラ・バンバ」を聴いたが、如何せん400本以上公開された年である。「スタンド・バイ・ミー」や「摩天楼はバラ色に」など代表的なもののトレイラーをちょい見してみた。「ラ・バンバ」に続けて、マドンナ「ラ・イスラ・ボニータ」をお聞かせしたのはヒスパニック・カルチャーの台頭をご紹介したかったからである。ブラック・マンデーなどいろいろあったが、年表はさほど面白い年ではないということと併せてのご紹介となった。

 

終盤はジェネシス「トゥナイト、トゥナイト、トゥナイト」、フリートウッド・マック「リトル・ライズ」、ブルース・スプリングスティーン「ブリリアント・ディスガイズ」、リチャード・マークス「ドント・ミーン・ナッシング」などと続け、トリはスザンヌ・ヴェガ「トムズ・ダイナー」とした。映像もさることながら、名曲も多い年である。

 

いろいろなものが多様化して行った時代、現代とは大きく違った社会情勢の中、東西の融和が進む一方で、ひたすらバブルの絶頂に突き進んだ極東の島国では、コカ・コーラのCMが象徴するような笑顔の絶えない日々が続いていたのである。ついつい懐かしさのあまり、はしゃぎ過ぎたような内容のイベントになってしまったが、内心今の時代だからこそこの時代の空気感に学ぶべきものがあるということも感じていた。旧態然とした欧米のナショナリズムと、台頭著しい中国経済に翻弄されるかのような好景気が、バブル期のものとは全く別物であることを知る世代は、あの溢れんばかりの笑顔をどう見ただろうか。

 

 

 


   

         
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