0191 ボヘミアン・ラプソディ(2018.12.02.

クイーンの伝記的なストーリーの映画「ボヘミアン・ラプソディ」がヒットしているようだ。つれあいと「近いうち観に行こう」と話しているが、先週来体調が思わしくなく、しばらくはおあずけである。ドルビー・シネマやアイマックスの臨場感溢れる音が素晴らしいということも伝わってくるので、ある程度のタイミングで観に行こうとは思う。如何せん、ここ数日、毎日のようにお客様から「ボヘミアン・ラプソディを観てきた帰りなんだ」と言われ、何かしらクイーンの音源をかけることになる。日平均2時間ほどは聴いているだろうか。一応初期のアルバム10枚は店に置いてあるし、7インチ盤シングルもかなりの枚数がある。初期の映像などもあり、クイーン好きはそれなりに楽しめる環境にはなっている。

 

今となっては特別思い入れがある訳ではないが、クイーンは割と初期から注目していたバンドである。2枚目のアルバムがリリースされた1974年の春ごろ、「輝ける七つの海」がヒットしてラジオでかかるようになり、このバンドを知るに至った。初めて耳にしたとき、一発で気に入ったことをよく憶えている。この曲はデビュー・アルバムに110秒のインスト版が収録されていたが、セカンド・アルバムにはヴォーカル入りの250秒ものが収録されていた。セカンド・アルバムが出たものの、このアルバムはブラック・クイーンがどうの、ホワイト・クイーンがどうしたのという曲名からも察しが付くようにコンセプト・アルバムの要素が濃かった。ラジオではかけづらかったのだろうか、この時期でもファーストからのシングル・カット曲「キープ・ユアセルフ・アライヴ」と「ライアー」がよくかかっていたことが懐かしい。

 

ただし、レコードは入手困難な状況が続いていた。当時は板橋区の国鉄アパートに住んでいた中2の小僧はレコード屋に買いに走ったが、2枚のアルバムも7インチ盤シングルも一切手に入らなかった。レコードが手に入るようになったのは、同年の11月に3枚目のアルバム「シアー・ハート・アタック」がリリースされてしばらく経ってからである。10月には先行リリースの「キラー・クイーン」がリリースされ、これが爆発的に人気になり、ラジオでもやたらとかかっていたのである。自分は「キラー・クイーン」がさほど好きではなく、それでも忘れられない「輝ける七つの海」が聴きたくて、1枚目、2枚目と買っていったのである。正直なところ、2枚目のアルバムもさほど好きになれなかったが、1枚目は大好きだった。特に両面の1曲目を飾るシングル曲は大好きで、周囲のギター・キッズが自宅に集まって一緒に「どうやって弾いているんだろう?」と繰り返し聴いたことが非常に懐かしい思いででもある。

 

「シアー・ハート・アタック」の冒頭を飾る名曲「ブライトン・ロック」の速弾きは「津軽三味線みたいだな」と思いつつも、猛烈なハードロックとして認識した。少々色物的な要素もあり、ステージではかなり派手な格好をしていたこともあって、ラジオではルックス云々の話題も多かったし、ライヴでの再現性が低いなどと言われていたが、明らかにハードロックのかなりテクニックがあるギタリストがいるバンドとしてインプットされたのである。ちなみにロジャー・テイラーのドラムスはやたらと低音成分が豊富で、他のドラマーにない重心の低さがあった。「ギターとドラムスがやたらと上手く、かなり個性的なヴォーカルがいるバンド」というのが初期のクイーンの偽らざる印象だった。

 

昨日(121日土曜)の日経新聞夕刊に「品田英雄のためになるエンタメ」という文章が掲載されていた。この方、日経BP総研マーケティング戦略ラボ上席研究員ということだが、あまりに浅薄な内容で呆れてしまった。ここでは他人の論評を悪く書くことはあまり好まない。この16年間で1度だけ、あまりに当時の空気感を知らない若い人間が書いたであろうレコード・コレクターズの内容について批判したことがあるが、それ以外は記憶にない。それでも、この文章はちょっと許し難い内容で呆れてしまった。自分は日経新聞が好きで20年以上購読しているのであえて苦言を呈するが、これはひどい。『1970年代のロックといえば、英国ではレッド・ツェッペリンやエリック・クラプトン、米国ならイーグルスやドゥービー・ブラザーズなど。薄汚れた衣装に長髪、反社会性を漂わせたものが本物のロックだった。』という部分や、『「ロックの価値を理解していない」日本の女の子たちがクイーンに飛びついたのだ。』という部分は、読み間違えていないか、繰り返し目を通したほどだった。そんなわけないだろう…。

 

我が日本のロック好き女子は、クイーンをはじめ、チープ・トリックやボン・ジョヴィなど名だたるバンドの人気に火をつけた目利きである。「ロックの価値を理解していない」などということはあり得ない。薄汚れた衣装に長髪、反社会性云々はイーグルスのイメージが誇張されたものか、同時代的にロックを愛してきた人間にとっては、全く同調する余地のない誤解でしかない。この文章の締めは『クイーンを正しく評価できなかった中年ロック好きこそ、見なくてはならない映画だ。』と結んでいる。…あり得ないだろう、そんなこと。日本でもの凄く人気があったバンドだというのに、この映画の評をこんな奴に書かせるなよ。まったく、失礼千万だ。

 


   

         
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