0192 2018年の一曲(2018.12.09.

ジョン・レノンの命日前後の土曜日に開催しているパーティが、今年は命日当時だった。そのため、「ジョン・レノン推しでくる参加者の方がいらっしゃるだろうな」などと頭の片隅で考えてはいたが、そういう安易な考えは全く通用しないディープな人たちの集まりだったことを序盤から思い知らされた。まったくもって皆さん予想を裏切ることを楽しんでいらっしゃるような、素人目にはあり得ない選曲が続く。正直なところ、個人的にはこの一年で最も楽しかった一晩だった。老若男女の音楽好きが集い、思い入れのある好きな曲をかけるという、実にシンプルな内容のパーティでこれほど盛り上がれるということが何とも有り難い。終了後も皆さん一様に「楽しかった~」「よいお年を~」と笑顔で挨拶を交わす、何とも居心地のいい年末の風物詩ができ上ったようだ。

 

「ボヘミアン・ラプソディ」が、文字通り大ヒット上映中のクイーンは当然ながら何曲かくるだろうとは思ったが、実はこれに関しては意地悪な仕掛けをしてしまった。パーティの開始直前は雰囲気を盛り上げるために元気のよい曲を並べていたのだが、開始5分前に「ボヘミアン・ラプソディ」をかけてしまったのである。今年の流行を物語る一曲でもあるが、「安易な選曲は許さないぞ」というメッセージにもなっていることはお互い分かっている。ほとんどの方が笑いながら「轟音で聴くとやっぱりいいねえ」などと盛り上がっている。音楽好きは共通の話題を持っているわけで、知らない者同士でもすぐに打ち解けて会話ができることが嬉しい。オーダーをとるためバタバタ走り回っているスタッフっだけが、「えー、これかけちゃうの?」という顔をしていたのが印象的だった。

 

毎年元気な曲からスタートするが、主催者高山によるオープニング、今年の一発目はメタリカ「エンター・サンドマン」のライヴ・イン・メキシコ音源である。当然ながら曲も好きだが、「ハードロック/ヘヴィメタルは中南米を目指す」ということを語り、猛烈に熱い観客が超満員のサッカー・スタジアムを埋めている様を伝える、興奮度満点の映像がYouTubeに多く載っていることも併せてご紹介した。正直なところ、結構危険な賭けかなという思いはあった。自分がここで、シャーデーでもかければもう少し落ち着いたパーティになったかもしれない。昨年、一昨年の記憶を辿れば、もっとジャジーな選曲も多かったように思う。しかしこの参加者は、場の空気を読んで返してきているのかと思うほど、今年はハードな曲が多かった。途中「おい、おい」という雰囲気になった瞬間もあったが、最も若い1999年生まれのスタッフがかけた曲が妙に大人で、むしろ笑いを誘ってくれた。

 

GINGER.TOKYOという店が極力ジャズではなく、古いロックを流すようにしているということは皆さんご存知だし、毎月恒例のイベントもロック中心であることは承知の上ということか。何とも有り難い。これを子供じみた内容と見るか、パーティだから楽しめるものをと見ていただけるかで、その場の空気も違っていたとは思う。本当に有り難いことに、皆さん大人なのである。ここであえてどういった曲がということは触れないが、皆さんそれぞれに思い入れのある曲がある。そのことに対するリスペクトが感じられることも嬉しい。このパーティについて触れるとき、「皆さん好きな曲をかけるだけ、他人様のかけた曲なんて聞いちゃいない」などと話していたのだが、今年はその点でも少々変化が見られた。過去2回は他の人の曲に対して興味を示すことはあっても、会話が弾み過ぎている傾向が見られたが、今回はしっかりコメントも聞きつつ、曲が終われば拍手すらしており、意外は意外だった。コメント中、ことある毎に「聞いちゃいねぇ」とつぶやいていた昨年が懐かしい。

 

ここ数日、パーティで何をかけるかということが話題に上ることが多かった。連日クイーンばかりかけさせられ、少々飽きていた自分は「クイーンをかける人は多いでしょうけどね、自分はかけませんよ」などと言っていた。そんなクイーン騒動のさなかに開催された今年のパーティの記念品は、もちろん「ボヘミアン・ラプソディ」の7インチ盤シングルである。中身を隠しておいて最後にご紹介したとき、「やっぱり!」といった声が複数聞こえてきた(…読まれていたか)。贈呈された方が喜んでいただけたので、よしとするか。

 

併せてここ数日、「2018年の一曲は何?」という話題も増えている。パーティでかける曲と切り離して考えざるを得ないことが面白くもあるのだが、音楽好きというものはこういうことを話しているのが楽しいのである。2018年は「安室奈美恵引退の年」ということも何人かのお客様から言われたし、「ザ・グレーテスト・ショーマン」だという方もいらっしゃった。さて、自分にとっての2018年この一曲は、きのこ帝国「金木犀の夜」、佐藤千亜妃「Summer Gate」、あいみょん「マリーゴールド」といったところである。洋楽推しの主催者として、パーティでかけるわけにはいかない曲なのである。2018年、音楽的にはなかなかにいい年だったのではなかろうか。

 


   

         
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