0194 音楽と正対して聴く(2018.12.23.

今年はクリスマス・ソングを全くと言っていいほど聴いていない。これまではクリスマス・アルバムも年に一枚程度は買っていたが、今年はゼロだ。エリック・クラプトンの「Happy Xmas」が少々気になったが、アナログ盤のリリースに気がついた時点で結構なお値段になっており諦めた。来年以降のために、少し経って安くなっていれば購入するかという程度で見て見ぬふりをしているところだ。毎年毎年、この季節になるといろいろなミュージシャンがクリスマス・アルバムをリリースしてくれるので、少しは溜まっているが、やはり好きなのはカーペンターズとシカゴのものだ。アナログ盤でなければ、マイケル・マクドナルドも高評価である。正直なところ、この辺のアルバムを引っ張り出してきて、年に一二度聴ければ、自分にとってのクリスマス・ソングは十分とも言える。マイケル・マクドナルドの「トゥ・メイク・ア・ミラクル」という一曲に関しては、あまりに格好良い演奏で、季節に関わりなく聴いており、例外中の例外である。

 

結局のところ、忙しすぎる自分がいけないのだが、落ち着いて音楽と向き合う時間が減っているのだ。カフェでお客様と一緒に楽しむ時間はあるが、自分の好みの曲ばかり聴くわけでもない。好みの曲でなくとも、スピーカーから一定以上の音量で鳴らしている音楽と、しっかり向き合って聴く機会が持てることはまだ幸せなのかもしれない。昼間はHDDプレイヤーの音源を流しっ放しにしているし、換気扇が回っているキッチンでは聴こえているという程度でしかない。そもそもウォークマンで音楽を持ち歩くようなことを始めてからこの35年ほどは、音楽と正面きって対峙することが無くなってしまったも同然だ。世間的にも最近は、スマホで聴くというスタイルに移行してしまったではないか。

 

原則的にながら聴きになっているのは、自分に限らず、皆さん大差ないことと思う。GINGER.TOKYOで久々にスピーカーからしっかり音を出して聴き、やはり違って聞こえると驚かれる方は多い。再生芸術の楽しみ方もライフスタイルとともに変化してしまうのか。クレジット情報に関しても、ジャケットを見ながらあれこれ語ることが楽しい時間でもあり、やはり自分にはアナログ盤をホーム・オーディオ的にスピーカーから鳴らして聴くというスタイルが合っているようだ。忙しいと言ってないで、もっと「音楽と正対して聴く」ことをしようとは思う。今年も残すところあと一週間ほどになってしまったのだから、来年の抱負として掲げておこう。

 

実際のところ、今現在使っているスマホには一曲もストックしてない。一つ前の機種には、本当に好きな曲を100曲程度入れておいて、いつでも聴けるようにしていたのだが、その音源を鳴らしたことはない。ウォークマンを使っていた頃は移動中に音楽を聴いていたのだが、スマホを使い始めてからは、止めてしまったのだ。そもそも年を取ってきて注意力が低下しているのか、耳からの情報がないままに歩くことが怖くなってきたのだ。ましてや視覚情報までないままに歩くなどということは、恐ろしくてできない。スマホを見ながら歩いている方は多いが、自分には絶対にできない。たまにスマホを操作しながら自転車に乗っている方も見かけるが、自殺行為にしか見えない。

 

やはり自分にとっては、音楽と正対し、ジャケットに掲載されている情報などから録音された状況やバンドの歴史的な背景など、いろいろ考えながら聴くということが無上の喜びなのである。できることなら、快適な気温で、ドリンクなどを傍らに置き、時間的にも余裕がある状態でリラックスして聴きたい。とりわけカフェのような居心地のよい空間で、音楽に集中できることが理想なのである。聴くものもある程度は選んでしまう。ハードロックやヘヴィメタルは、集中していなくとも勝手に入り込んでくるのでさほど注意は必要ない。ジャズやテクニックを聴かせるタイプのロックなどは、意識的に集中力を増して聴きたいものだ。マイルス・デイヴィス、パット・メセニー、ジェフ・ベックといったあたりを聴きながら、こんなことを考えていたのである。

 

ここにきて、メタリカやAC/DCやニッケルバックなどといったウルサイあたりを聴く機会が多かった。カフェには似合わないかもしれないが、リクエストがあれば対応はするし、こういったものはオーディオの鳴りを評価するのに向いている。その一方でパット・メセニーのアコースティック・ギターやテイラー・アイグスティのピアノ、カレン・カーペンターのヴォーカルなどが艶やかに鳴らないと満足できないと言うのだから、オーディオ機器も贅沢言うなと言いたいところだろう。エリック・クラプトンの贅を尽くして録音されている盤は、特に工夫しなくともいい音で鳴ってくれる。その一方で、オリジナル盤かどうかもよく分からないが、ペラペラに薄い盤にプレスされた1980年前後のフュージョンなどが、意外なほどいい音で鳴ると嬉しいのである。リアルタイムで購入してきた盤などは、当時のことをあれこれ思い出しながら聴くのも楽しい。やはりスピーカーから飛び出してくる音を浴びながら、ミュージシャンの意向を受け止めるように音楽は聴くべきであろう。

 


   

         
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