0197 京都の収穫20182019.01.12.

毎度年末は京都で過ごす。一年の大半を深川エリアで過ごし、大島の自宅には寝るために帰るような日々だが、ここ10年ほど年末の3日間は必ず京都にいるのである。10年前にお気に入りだった京都のレコード店はもうないが、ここ数年は市役所に面したビルの2階にある100000tアローントコというレコード店が気に入り、毎度覗いている。7インチ盤が豊富にあり、しかも多くが100円という、30年前に神保町あたりで見られたスタイルで販売している。古いものに強い町だけに、掘り出し物が多い。LP200円盤が多く床に並べられているが、こちらは見ないことにする。旅先から多くを持ち帰ることはできないので、毎度厳選して7インチ盤や10インチ盤を数枚購入することになる。今回も300円が5枚、100円が5枚、合計で2,000円の買い物だったが、結構楽しめた。

 

とりわけ手にした瞬間に「絶対買い!!」と決めた1枚、シカゴの「長い夜 25 or 6 to 4」の7インチ盤は、輸入盤だがジャケットがちゃんとある、しかも経年を考えるとかなり美品と思われる一枚だった。瞬時に面白いと思ったのが、セカンド・アルバム以降延々と様々なアレンジでジャケットを飾るChicagoのロゴが微妙に違っていることだ。「g」のしっぽが「o」に回り込んで繋がっている馴染みのあるデザインではなく、少し細身で「g」と「o」が独立しているものなのである。デザイン的には非常に近いもので、パッと見には見過ごすかもしれない程度の差異だが、こちとら長年見つめてきたデザインだけに、まず違和感を持ち、そして歴史的な価値を示す匂いを嗅ぎ取ったわけである。

 

要はセカンド・アルバム収録曲だが先行リリースされたものなので、ファーストにあたる「Chicago Transit Authority」のロゴから「Chicago」の文字を抜き出したのではなかろうかと思ったわけだ。「長い夜」の国内盤はメンバーの写真が使われたスリーブで、ロゴはない。あくまでも推察だが、シカゴ市交通局のクレームでバンド名がシカゴになったという情報だけで制作に踏み切ったデザインなのではなかろうかと考えたのである。宿に戻ってじっくり見ると、「C」の大きさも違う。下に出っ張ってないのでかなり小さいのである。よくよく見ると「France」の文字が2つあり、フランス盤だということが知れる。面白いことに、折れて隠れていたのだが、スリーブに持ち出しフォルダーのようなタブがついており、バンド名と曲名そして「CBS 5076」というレコード番号と「serie GEMINI」という文字が印刷してある。これまで一度も見たことのないタイプのスリーブなのである。

 

自分は7インチ盤専門店を運営していることもあり、それなりに7インチ盤シングル、ドーナツ盤を目にしているほうだと思われるが、これにはエクスキューズがあって、自分の場合は国内盤にしか興味がないのである。輸入盤はよほどの有名曲で、状態がよくて、しかも自分が好きな曲だと買うこともあるが、そもそもスリーブが面白くて7インチ盤が好きなわけで、多くが紙袋だけの輸入盤には興味がないのである。それでもピクチャー・スリーブ付きや、ジャケットがあるものは少々話が別ということになる。つまるところ、タブ付きジャケットが珍しいものか否かは、専門外なので詳しいことは分からないのである。

 

また、252秒という長さが気になってしまった。アルバム収録テイクは4分以上あったはずだ。シングル・エディットにしても短い。ひょっとして別テイクかなどという思いが、瞬時に頭の中を巡っていたのである。恐らくその瞬間の表情は他人様には見せられないものだったとは思うが、これまでのお宝盤に遭遇したときは、大抵同じ顔をしていたことだろう。この盤に関してはまだまだ調べてみないとわからないことだらけなのだが、まあ300円でしばらくは楽しめそうなので、それだけでも超お買い得だったものと思われる。

 

今回の収穫物は他にもあるが少々小粒である。まずはスイング・アウト・シスターの「サレンダー」、時期的なことを考えるとアナログ盤市場に出回っている枚数が非常に少ないアーティストである。スイング・アウト・シスターやフェアグラウンド・アトラクションなどといったこの時期のものはすべて「買い!」である。スザンヌ・ヴェガの「孤独 Solitude Standing」は超美品、これも同様の理由から、絶対に買いである。東京ではこんな値段で売ってないどころか、まず手に入らない。

 

そして個人的に「こういうのが面白いんだよな」と思うのが、CMで使用された際にスリーブを変更したり、そういった情報を追加している盤なのである。今回入手したのは映画「炎のランナー」のサントラからのシングル、ヴァンゲリスの「チャリオッツ・オブ・ファイヤー」である。発売当初のものは持っているが、今回見つけた盤には「全米N..1 ブリヂストンタイヤ “レグノ”TVCF使用曲!!」という文言が付け加えられているのである。「82年度アカデミー賞4部門受賞」という文言は自分が持っている盤にも入っているが、この時点では「全米大ヒット中!!」という文言がある。ヒットし、タイヤの宣伝に使われ、まだ売れると見込まれて作られたものというわけだ。

 

その他は、世良公則率いるツイストの「SET ME FREE」。他のヒット曲と違って売れていないのでレアだが超美品で100円、ミッシェル・ポルナレフ「渚の想い出」は「来日期待盤」という文言が笑える一枚、パティ・スマイス率いるスキャンダルのデビュー・シングル「グッバイ・トゥ・ユー」もレアな上に超美品である。

 

今現在、京都市中には20数店舗のアナログ・レコードを扱っている店が存在する。文字通りアナログ・レコードの聖地なのである。いやはや、京都にはもっと頻繁に行きたくなってしまうが、年に一度だからこれだけ楽しめるのかもしれない。ともあれ、あまり荒らされないことを願うのみである。

 


   

         
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