0207 バイ・バイ・ラブ(2019.03.23.

自分は1960年の323日生まれなので、今日はバースデーなのである。キリのいい年に生まれたおかげで年齢は数えやすい。2019年には59歳になるというわけだ。何とも中途半端な年齢という気もする。数え易いせいもあって、ついつい正月以降は1歳さばよんでしまう。やっと59歳になったのかというのが正直なところだ。和暦でも1960年は昭和35年、昭和の間はまだ数えやすかったが、平成になってからは「えっと~」となってしまう。算数は苦手だ。

 

まもなく平成が終わろうとしているが、新天皇は自分の丁度一月前、昭和35223日のお生まれなので、皇室の資料が意外に分かり易く重宝したことがある。老けていく同い年の皇太子を見て、自分も年を取っていることを実感し、メリットともデメリットとも言えない妙な共感を覚えることもある。来年は還暦、この年まで生きられると思っていなかったので、何とも複雑な心境だが、ともあれ、また一つ年を取ってしまった。喜ぶべきことなのだろうが、「オメデトウ」と言われても素直に喜べるものでもない。当然祝い事など何も予定はない。土曜日に当たり、多めに寝て過ごせることが最も嬉しい。

 

さて、そんな自分は全然肌に合わない東京の小学校が嫌で嫌で、小学4年生の頃から現実逃避の手段として音楽を聴き始めたわけだが、まさかそのまま今まで49年間も同じものを聴き続けているとは想像もしていなかった。いろいろとインパクトが強い音楽が溢れていた時代だったので当然と思うこともあるのだが、周囲を見渡してもそういう人間はそうそういないので、やはり粘着質なのか自分の性格のあらわれなのだろう。最初にハマったのは映画音楽で「大脱走のマーチ」はやはり忘れられない一曲だ。母親が音楽好きだったこともあって、音楽を聴く環境が自宅の中にあったことに救われたわけだが、一つの趣味を極めているという実感はある。

 

7インチ盤を数枚購入したところで、最初に買ったLPT.REXの「ザ・スライダー」だった。もうそれこそ毎日毎日繰り返し聴いたものだ。今でも好きなアルバムである。次に買ったLPはサイモンとガーファンクルのベスト盤「Pack20」である。米盤のベストが両面7曲ずつなのに、このシリーズときたら10曲ずつ突っ込んである。短い曲が多いから可能だったとも言えるが、「ボクサー」は5分以上あるし、「明日に架ける橋」も453秒と、アルバムと同じ長さで収録されている。ある意味凄い企画力である。さすがCBSソニーといったところだ。

 

音楽好きが集まるカフェをやるようになって、音楽好きのお客さんと話す機会が増えたが、サイモンとガーファンクルがベースにあるという方は時々いらっしゃる。かなり若い方でもそういうことをおっしゃるので驚くこともあるが、自分は音楽を聴き始めた年が「明日に架ける橋」や「コンドルは飛んで行く」の大ヒット曲がラジオから流れまくっていた年だ。影響されないわけがない。美しいコーラスワークやアコギとのアンサンブルはやはり絶品である。音楽に品格というものがあるとすれば、極上のものである。そういった部分では、明らかに他のミュージシャンとは一線を画するものがあった。

 

さて、7インチ盤専門店を始めて、妙に懐かしかった一枚にサイモンとガーファンクルが70年の終りにリリースした「バイ・バイ・ラブ」がある。アルバム「明日に架ける橋」に収録されていたエヴァリー・ブラザーズのカヴァーである。この曲は英米ではシングル・カットされず、日本独自のシングルということになる。ちなみに続けてリリースされた68年のアルバム「ブックエンド」収録曲だった「アメリカ」も日本独自のシングル・カットである。米国では72年に発売された「グレイテスト・ヒッツ」のリリースに合わせてシングル・カットされたので、日本の方がかなり早い。しかし、「バイ・バイ・ラブ」は「コンドル~」のインパクトが強すぎたか、さほど売れず、「Pack20」のようなベスト盤にも収録されていない。

 

「バイ・バイ・ラブ」は、フォークをやっていた友人が取り上げていた曲で、ライヴの時に一緒に歌ったことも懐かしいが、こんな偉大なコンポーザーでもカヴァー曲をリリースするんだということが新鮮だった。一方で「アメリカ」はプログレッシブ・ロックの雄、イエスがカヴァーしたことがまた新鮮だった。「バイ・バイ・ラブ」は職業作家ブライアント夫妻の手によるもので、彼等はエヴァリー・ブラザーズの曲を多く手掛けている。「起きろよスージー」はオールディーズの定番曲だし、ナザレスやグラム・パーソンズ&エミルー・ハリスがカヴァーした「ラヴ・ハーツ」もこのお二人の作品である。また「バイ・バイ・ラブ」のSideBに収録されている「君の可愛い嘘」は、67年のシングル「Fakin' It」のSideBに取り上げられたオリジナル・アルバム未収録曲であり、原題は「You Don't Know Where Your Interest Lies」、つまり「君は自分が何に興味があるのか分かっていないんだね」という意味であり、CBSソニーの担当者さんが思い切りやらかしてしまった大誤訳である。ともあれ、意外なほどのレア盤であり、7インチ盤の専門店では知る人ぞ知る高額盤となるのである。

 

 


   

         
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