0208 店のポリシー（2019.03.31.）

今年も桜の季節がやってきた。見頃と言われる週末は大抵雨か寒いかという皮肉なことが多いが、今年は最高の条件で花見を満喫できたのではなかろうか。年度の変わり目は、出会いと別れの季節でもある。「サクッと送別会的なランチを」という需要が多い我がGINGER.TOKYOは猛烈に混む季節でもある。昨年はお別れの挨拶に来られた常連さんが何人もいらしたので寂しくなってしまい、嬉しいような悲しいような複雑な気分で過ごしたが、それが今年はお別れの挨拶が一件もなかった。当然ながら猛烈な忙しさではあるが、上々の気分で３月を終えることができた。深夜にタクシーで帰宅することが続き、年を取ったか体力の限界を感じてしまうことも多かったが、経営者というものは現金なもので、売上が好調であれば疲れなど吹っ飛んでしまう。自分のような公務員からライフシフトして好きなことをやっている身で、しかも売上まで伸びてきたら言うことなしだ。ただし、疲れることは疲れる。

３月の後半は、記録的な売上となった。というのも、前職の同僚で音楽好きがレコード持ち込みで遊びに来てくれたり、半分元同僚とも言える財団の方が退職のお祝いにディナーでご来店されたり、来月以降、店舗を使って英語教室を開催される方が下見を兼ねてご来店されたりと、夜も結構混んでしまったのだ。加えて最後の土曜日は貸し切りイベントのダブルヘッダーというこれまで経験のないこともお受けしたので、それはそれはシンドイ日々だったのである。貸し切りイベントは何とも微妙な気分になる。自分の料理を出すパーティであれば、働いて得た売上げということで嬉しくもあり納得もするが、場所貸しのみの場合は、居るだけに近い。むしろお邪魔してはいけないと気を遣う。カフェの運営もいろいろタイヘンなのである。

このダブルヘッダーのイベント、いろいろ考えてしまうものだった。昼は児童虐待予防のイベントで、江東区の課長さんやお医者さんなんかも登壇してお話しを聞くといったものだった。自分も休憩時間の10分で古写真をお見せして町の歴史を語れというご要望をいただいており、9分59秒で語ったのだが、呆れるほど誰も自分の話は聞いていなかった。あまりに無礼な状況に気を遣ったか、お一人の方がわざわざ傍にきて「懐かしい」などという声を上げてくれてはいたが、はっきり言って最低の気分ではあった。頼まれたことはしっかりやった上で、あとはお代をいただくだけ、「こういう連中にはお店を貸したくないなあ」という気分を顔に書いて残りの時間を過ごすことになった。

さらに驚いたことに、次のイベントが直後に入っていることを知っている主催者の方々が、参加者を帰した後に居座って、「ドリンクをオーダーできるか？」などと言っている。夜のイベントはキッチンを含めた場所貸しなので、売上げを伸ばせることは有り難いが、さすがにお断りした。子育て中の親が孤立しないようにとか児童虐待予防などといった、素晴らしい内容のイベントにも関わらず、非常識なことを繰り返すこの親たちの子どもの将来が心配になってしまった。夜のイベントの主催者はこの一部始終を見ていたわけではないが、片付け等に徹している我々に気を遣わせてしまったようで、かえって申し訳ない気持ちにはなってしまった。とにかく、この子育て支援の団体とは今後一切関わりたくない。他所でもできる内容でもあるし、店のポリシーにも合わない。今後はすべてお断りしようと思う。

夜は山形県鶴岡市の関連イベントという程度しか理解していなかったが、キッチンも併せてお貸しするもので、湯田川温泉のつかさや旅館の若旦那が腕を振るい、孟宗汁や地元の食材を使ったお料理を楽しみつつ地元のお酒を飲み比べるという、実に楽しそうなものだった。お邪魔にならないかとキッチンの隅で待機している我々にもお裾分けをいただいてしまい恐縮したが、ふきのとうの味噌など普段口にしたことがない美味しいものをいただけて感謝至極だ。しかもこの方々は窓辺のスペースを活用して学生ボランティアによる託児スペースを用意し、大人がゆっくり楽しめるようにという工夫をしっかり練っており、至れり尽くせりという印象だった。片付けも完璧、意外なほど早く帰ることができ感謝した次第である。

３月も最後の最後に何とも複雑な気分になる一日を過ごしたわけだが、今後の店のポリシーやあり方を考えるいい機会にもなったようだ。ランチタイムはサクッと美味しいカフェめしが食べられる店に徹することはこれまで通り、夜は音楽を聴かせる店であることをもう少し前面に出すこととしよう。読書スペースは安定的に人気なので、少々音楽がうるさいことはご勘弁いただくとして、蔵書管理にもう少し時間を割こうと思う。レコードも見つけられないことが多くなっているので、もう少し管理を徹底しようかと思う。おっと書き忘れたが、夜のイベントはBGMを任されたので、大人な雰囲気のグラント・グリーンを選んだ。ギターとオルガンの掛け合いが、邪魔にならない程度のボリュームで鳴っているのは最高だ。ちなみに、お昼はBGM無し、やはりああいったイベントをやるスペースではないな。