0211 全力投球It’s Only Music ... But2019.04.21.

昨日は、トークイベントの新シリーズ「It’s Only Music ... But」のVol.1を開催した。予測通り参加者数はグッと減ったが、どうも統一地方選前日ということも起因しているようで、人数が減ったことの理由を考えてもしょうがないようだ。スタッフが風邪気味で早く帰ってしまうような状況でもあったので、不幸中の幸いとしておこう。自分自身が体調不良だったこともあって、準備万端だったかと言えばそうも言いきれないが、珍しく見つけられない盤がゼロで、ご紹介したいレコードはすべて揃っていたし、そもそも自分の好きな曲を何の縛りもなくかけるわけで、これはもう気合が入るではないか。いずれにせよ、常に全力投球の性格ではあるが、今回はとりわけ気合を入れてやってみた。結果として、ご参加頂いた皆さんからは「楽しめた」「聴きごたえがあった」というお言葉もいただけたし、非常に満足度の高いものとなった。

 

そもそも何の制約もないということは、自分自身を曝け出すことになるわけで、とりわけここ数日は自分自身と向き合うことになった。自分は何故音楽が好きなのか、本当に好きな曲は何なのか、ということは常日頃から繰り返し考えていることだ。以前にウェブ・マガジンでオススメの3枚を紹介するよう求められたときも、いろいろ考えながら自分自身と向き合った。お客様との会話の中でも、よく出てくる話題なので、考えないでいられるわけがない。17年間も毎週アップし続けている「下町音楽夜話」も、本音で書くわけで、結局自分自身と向き合うことの連続なのだ。好きではない音楽を蔑むようなことは書く必要がないわけで、常にどういったものがいいか、好きかを書いているわけで、ものの捉え方はかなりポジティヴである。

 

さて、イベントは定刻を5分過ぎたところでスタートした。自分の人生において最初に自分のカネで買ったLPT.REXの「ザ・スライダー」だったので、自分自身の原点としてスタートはT.REXからと決めていた。曲は「20センチュリー・ボーイ」、7インチ盤がなかなか気持ちよく鳴る。いきなり聴き比べをしてみようということで、続けてデフ・レパートのカヴァーとブリット・アワードの受賞式でデヴィッド・ボウイがプラシーボとともに披露したテイクも紹介した。テクニカルでもないセンス一発の曲だが、メタル的解釈もできればグラム的なままでも格好良い。名曲は名曲だ。日本で録音されたなどといった小ネタもあるオープニングに最適な一発である。

 

続けて、バンド活動を持続していくなかで、病気の子どもを励ます活動を続けている連中や、早くに子どもを亡くしたために基金を立ち上げているミュージシャンなどを紹介した。悪ガキ・キャラで売っているモトリー・クルーもそうだし、ジャーニーはスキャンダルに違約金を支払ってでも「オンリ・ザ・ヤング」をシングル・リリースした。この背景には病気の男の子を見舞ったことがあるわけで、背景を知ることによって曲の魅力も深まる例として紹介した。またドゥービー・ブラザーズのように、病院巡りツアーをやっている連中も多いことを紹介した。

 

フー・ファイターズのデイヴ・グロールはライヴ中に有望な若手(こども)のミュージシャンを紹介する活動を続けている。そこでも紹介された日本人の女子ドラマーの最近の演奏などを聴きながら、「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」をアナログで鳴らしてみたり、ロバート・グラスパーのチルアウトしたカヴァーも紹介した。この辺の聴き比べは、アナログ盤で揃っていなくてはできないし、大音量で鳴らしてみていずれも素晴らしい録音であることが知れる。なかなか面白い経験である。

 

次に我が人生のアンセムとして、キャット・スティーヴンスの「人生はさすらい Sitting」をご紹介し、その繋がりで「ワイルド・ワールド」のキャット・スティーヴンスによる作者ヴァージョンとMr.BIGヴァージョンを聴き比べてみた。名曲のアレンジは大きく崩さないことが基本か。ウェブ・マガジンArban繋がりで、やはり最も好きな曲として挙げることの多いキャロル・キング「イッツ・トゥ・レイト」をオリジナル盤で紹介し、ここでは五輪真弓の73年ライヴ・ヴァージョンと聴き比べた。さらには五輪真弓のデビュー曲「少女」をご紹介し、キャロル・キングのバックアップという特大ネタを持ってデビューしてきたことなどに触れた。デビュー・アルバムのメンツを見て、ひと騒ぎである。

 

同じく鳴り物入りで登場した新人としてチャーリー・セクストンをご紹介した。ここではローリング・ストーンズ、とりわけロン・ウッドのバックアップをご紹介し、当時のロン・ウッドがブルース・リヴァイヴァルに多大な貢献をしていることなどに触れた。またチャーリー・セクストンがドイル・ブラムホールIIと結成したアーク・エンジェルズも紹介し、スティーヴィー・レイ・ヴォーン亡き後の人間関係や自分の人生との関わりなども交え、徹底的に紹介してみた。さらには、山川健一「ブルースマンの恋」というCD付き書籍をご紹介し、80年代終盤から90年代前半にかけて、ブルースにハマっていた自分自身の動向に触れておいた。ここからは、大ブルース・イベントだ。

 

まずは最も愛するブルース・ナンバー、サン・ハウスの「ジョン・ザ・レヴェレイター」を聴き、その真面目なブルースとは対極にある、酒場でこそ映えるハウンドドッグ・テイラーの「シェイク・ユア・マネーメイカー」と繋げた。そして元祖とも言うべき、ロバート・ジョンソンである。「トラヴェリング・リヴァーサイド・ブルース」をレッド・ツェッペリン版やエリック・クラプトン版などで聴き比べた。ここで戸叶氏のコーナーを挟み、ブルース・ロックの結実フリー「オール・ライト・ナウ」をご紹介いただいた。

 

さらにロバート・ジョンソン・ナンバー「テラプレイン・ブルース」をジョン・リー・フッカーやエリック・クラプトンなどのテイクで紹介し、フォガットの大ハードロック・リメイクを丸一曲聴くかたちにしてみた。70年代、大好きだったフォガットのアルバムをすべて持ち込み、ご紹介したわけだが、おそらく日本国中探してもウチほど揃っていることはないのではないかという話題でまたひと騒ぎしてしまった。

 

終盤はレッド・ツェッペリン「コミュニケーション・ブレイクダウン」やクリーム「バッヂ」の7インチ盤がいかによく鳴るかということや、ローリング・ストーンズ「ブラウン・シュガー」の聴き比べなども楽しんだ後、いつの時代にも面白い奴が出てくるということで、ジャック・ホワイトの紹介などもしてみた。そしてトリはやはり大好きな曲「キャッツ・イン・ザ・クレイドル」を、ガンズ・アンド・ローゼスと作者ハリー・チェイピンとで聴き比べて無事終了となった。

 

今回は各曲の歌詞もお配りしたが、蛇足だっただろうか。また自分自身を見つめ直すなかで、忘れられない文章としてある資料をお配りした。自分が人生を変えられたと思うことも多い文章である。果たして参加者の皆さんに響いてくれただろうか。今回は過去を振り返って、ブルースを大々的に取り上げたが、次回は未来志向の曲をいくつか取り上げてみようかと考えている。たかが音楽、されど音楽、深掘りするとまた違った魅力が響いてくる。なかなか楽しい経験ができる3時間なのではなかろうか。次回も全力投球でいきますよ。ぜひぜひ!!

 

 

 


   

         
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